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凱旋式前夜と、教会の黒い思惑

人間の大陸、聖教皇国が統括する大聖堂の最深部。

ステンドグラスから差し込む厳かな光のなかで、教会の老害――大司教をはじめとする幹部たちが、不気味な笑みを浮かべて密談を交わしていた。


「勇者アレンが魔王軍の大罪を討伐した。この熱狂を利用せぬ手はない。すぐにでも彼を『人類の救世主』として祭り上げ、民の信仰を我が教会へ一極集中させるのだ」


「大司教様、例の・ ・はどういたしますか? アヴァロン学園に現れたという、魔力測定器を破壊した全属性の美少女――『ルシア』の件です」


大司教は、濁った瞳をギラリと光らせて醜く口元を歪めた。


「ふん、魔王軍の幹部マモンを退けたほどの器だ。泳がせておけば、いずれ教会の権威を脅かすバケモノになりかねん。勇者アレンの『妻』として教会に囲い込み、一生、我が聖教皇国のための便利な魔力供給源(家畜)として搾り尽くしてやるわ。アヴァロンの学園長には、すでに『聖女徴命の強制令状』を送ってある」


老害どもは、自分たちがどれほど恐ろしい怪物の尾を踏んだかも知らず、下卑た笑い声を大聖堂に響かせていた。


一方、その頃。

人間の大陸の上空を、雲海に身を隠しながら静かに進む【神話級空中要塞・アルカディア】。


最高級の調度品で飾られた主制御室のソファで、俺――女装美少女「ルシア」は、学園長から届いたという『聖女徴命(勇者の嫁入り)令状』を優雅に指先で弄んでいた。


「――というわけだ。教会のジジイども、俺をアレンの嫁にして、裏から一生こき使うつもりらしいぞ」


俺が本来の14歳の男のルクスで鼻で笑うと、部屋の温度が一瞬で絶対零度まで急降下した。


「……万死。万死に値しますわ、教会のゴミ虫ども」

エレノアの周囲の空間が、彼女の激しい怒りの魔力でバリバリと凍りついていく。


「ルシア様を、あのアレンとかいう脳筋男の嫁に……!? 許せませんわ! そんなことをするくらいなら、私が今すぐローゼンバーグの私兵団を動かし、聖教皇国を兵糧攻めにして滅ぼします!」

フランチェスカが扇子をへし折らんばかりの力で握りしめ、目を血走らせている。


「ウフフ……あはははは! 面白い冗談ですね、大司教。ルクス様を縛っていいのは、私の愛の鎖(呪い)だけですのに……♥」

聖女セレティナは、完全に目が据わったヤンデレの笑みを浮かべ、指先からドロドロとした黒い神聖呪詛を溢れさせていた。


魔眼による【狂信】と、度重なる共同作業(強奪バカンス)を経て、彼女たちのルクスへの愛欲と忠誠は、もはや国家の法や世界の倫理を遥かに超越していた。主である俺が「やれ」と言えば、明日にでも世界を滅ぼしかねない狂犬の集まりだ。


「まあまあ、みんな落ち着いてちょうだい」


俺が一瞬で「ルシア」の可憐な甘い声に戻り、微笑みかけると、狂犬たちは一瞬で「はひっ……!」と顔を真っ赤にして静まり返った。このギャップコントロールこそが、彼女たちを支配する最高の調教術だ。


「アレンは俺の幼馴染で、表のいい引き立てピエロですわ。あいつが命がけで大罪を倒してくれたお陰で、教会の防衛力は今、スカスカのはず。……ティノ、要塞の『神滅カウンター砲』の照準は、大聖堂の真上にセットしてあるかしら?」


「ばっちりよ、ルシア!」

操縦席のティノが、レンチを振り回しながら生意気な笑みを浮かべる。

「ジジイどもの頭上から、いつでも神の雷を落としてあげられるわ。ついでに大聖堂の地下に眠ってる古代のレア金属、全部この要塞に回収(強奪)しちゃいましょうね!」


「ええ、それがいいわね」


俺は立ち上がり、バルコニーから夜の雲海を見下ろした。

遥か下方では、明日の「勇者アレンの凱旋式」に向けて、何も知らない愚かな民たちが松明を掲げてお祭り騒ぎをしている。


(アレン、お前が大罪を倒して英雄として称賛されるその瞬間――お前の背後にいる教会の権力も、財産も、世界からの信仰も、すべてこの俺が裏からハッキングして奪い取ってやる)


「さあ、みなさん。明日は最高に華やかな『お嫁さん(ルシア)の凱旋』にいたしましょう」


女装の皇帝ルクスは、怪しく光る左目の【神威・支配の魔眼】を夜闇に晒しながら、世界を完全にチェックメイトするための邪悪な笑みを浮かべるのだった。

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