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第二部始動! 亜人大陸への黒い外遊(バカンス)

アヴァロン学園に束の間の平穏をもたらし、裏では魔王軍第三軍団すらコレクションに加えた俺――女装美少女「ルシア」ことルクスは、学園の長期休暇を利用して、予定通り次なるチェス盤へと移動していた。


目的地は、人間の法も教会の権威も届かない、混沌と技術の地「亜人大陸」。

表向きの理由は『世界各地の魔獣の生態を調査し、学園の防衛力を強化するための私的遠征バカンス』。だが裏の目的は、俺の精神通信に電波を飛ばしてきた天才ドワーフ少女ティノの確保、および彼女が提唱する【神話級空中要塞・アルカディア】の強奪である。


「――ルシア様、まもなく亜人大陸最大の港湾都市『ギルガザル』へ入港いたしますわ」


豪華客船の特等客室のバルコニー。

海風にプラチナブロンドの髪を揺らす俺の隣で、フランチェスカが恭しく一礼した。

彼女が実家(ローゼンバーグ公爵家)の財力と権力をフル活用して手配したこの私有船には、護衛という名目で、俺に調教され尽くした最精鋭のヒロインたち――エレノア、アリア、セレティナ、そしてレルエが当然のように同乗している。


さらに、影の空間ストレージのなかには、あの【強欲の盟主】マモンが率いる魔導戦艦と5万の魔族兵が、俺の命令一つでいつでも人間の大陸を焼き尽くせる状態で待機していた。バカンスにしては、いささか戦力が過剰すぎる。


「まあ、フランチェスカ様。とても活気のある港ですこと」


俺は「ルシア」の可憐な仕草で、眼下に広がる異国情緒あふれる街並みを見下ろした。

獣人、エルフ、そしてドワーフ。多種多様な亜人たちがひしめき合うその光景は、人間の大陸とは全く異なる熱気に満ちている。だが、俺の【鑑定】レーダーは、港のいたるところに配置された「不穏な視線」を捉えていた。


【索敵結果】

監視員:ドワーフ元老院直属『鋼鉄の番兵』×42

警戒レベル:最大(全属性の魔力波形を追跡中)


(なるほど。ティノのやつ、元老院のジジイどもに完全に軟禁されてるな。俺との通信を逆探知されて、そのバケモノ魔力の持ち主(俺)が上陸してこないかビキビキしながら見張ってるわけだ。……可愛いティノをそんな風に扱うなんて、ドワーフの老害どももいい度胸をしてるじゃないか)


「ルシア様、あの物陰からこちらを覗く不埒な者たち……今すぐ私の氷結魔法で、船ごと海の底へ沈めて差し上げましょうか?」

エレノアが、冷徹な令嬢の笑みを浮かべながら、周囲の海水をピキピキと凍らせ始める。


「ふふ、いけませんわエレノア様。私たちはあくまで、大人しく魔獣の調査に来ただけの『無力な女子生徒』なのですから」

俺がクスリと微笑むと、エレノアは「はぅっ……!」と顔を真っ赤にして「ル、ルシア様がそうおっしゃるなら……」と大人しく引き下がった。


その夜。

街の一等地にある、フランチェスカが買い取った高級ホテルの一室。

結界を張り、本来の14歳の男の姿ルクスに戻った俺は、ソファに深く腰掛け、脳内の通信回線を開いた。


『――おい、ティノ。聞こえるか。お前の指定した大陸に着いたぞ』


数秒の沈黙の後、耳の奥で、泣き出しそうな、それでいて強がった少女の声が響いた。


『――ッ! あんた、本当に来たの!? バカじゃないの!? 今、元老院のジジイたちが街中に魔力検知器をばら撒いて、あんたを捕まえようと必死なんだからね!』


『お前を俺の【技術長官(お嫁さん)】にするという約束だからな。で、お前の状況は?』


『……最悪よ。私が設計した【アルカディア】の設計図と起動キー(心臓部)、元老院の金庫室に没収されちゃった。おまけに私は、明日、隣国のゴーレム大国への『技術引渡しのための政略結婚』として、強制的に護送船に乗せられることになってるわ。……もう、おしまいよ。あんたの魔力、使ってみたかったなぁ……』


通信の向こうで、ティノが悔しそうに唇を噛む気配が伝わってくる。


(政略結婚? 技術の引渡し? ククク……面白い。ドワーフの元老院ども、俺の所有物パーツになる予定の天才ロリ職人を、勝手に他国へ売り飛ばそうってわけか。だったら、その結婚式(護送作戦)、俺が最高のエンターテインメントに書き換えてやる)


『ティノ、安心しろ。明日の護送船、俺が乗っ取ってやる。お前の設計図も、起動キーも、お前の身柄も、すべて俺が合法的に(力づくで)いただく。お前はただ、お婿様が迎えに来るのを特等席で見ていろ』


『え……? ちょっと、あんた何する気――』


通信を切り、俺は不敵に笑う。

隣で控えていたレルエとセレティナが、我が主の「邪悪な愉悦」を察して、ゾクゾクと身体を震わせた。


「レルエ、明日の護送ルートを調べ上げろ。セレティナ、ドワーフ元老院の金庫室の場所を特定しろ。夜間のうちに中身をすべて『強奪コレクション』する」


「御意に」

「ウフフ……了解いたしました、ルクス様。あなたのための泥棒猫なら、喜んで演じてみせましょう……♥」


翌朝。

ギルガザル港には、重武装したドワーフの軍艦が停泊していた。

その中心に立つのは、魔力封じの枷をはめられ、不機嫌そうに俯くドワーフの少女、ティノ・アイアンハート。


「よし、時間だ。ティノを船へ運べ! これで我が元老院の利益は安泰じゃ!」

老いたドワーフの役人が下卑た笑い声を上げる。


だがその時、港全体の空気が、一瞬で凍りついた。

コツン、コツンと、静かな足音が響く。


「あら、みなさん。そんなに可愛い女の子を無理矢理連れて行くなんて、あまり感心しませんわね?」


軍勢の前に現れたのは、日傘を差し、眩いばかりの白いワンピースに身を包んだ、この世の物とは思えないほど美しい一人の少女――「ルシア」だった。その後ろには、殺気を隠そうともしない学園の令嬢たちが従っている。


「な、何者だお前は!? 控えよ、ここはドワーフ元老院の――」


「お黙りなさい」


俺がルシアの声のまま、冷酷に左目の【神威・支配の魔眼ゼウス・アイ】をカッと見開いた。

瞬間、港にいた数百人のドワーフの兵士たちが、一斉に泡を吹いてその場にひれ伏し、ガタガタと恐怖に身を震わせた。


枷をはめられたティノが、驚愕で目を見開く。

「あ、あんた……まさか、あの時の……!?」


「うふふ、はじめまして、ティノちゃん。お迎えに上がりましたわ。――さあ、私たちの『空中要塞』を動かしに行きましょう?」


美少女の微笑みを浮かべながら、俺の亜人大陸完全ハッキング計画が、今、華々しく幕を開けた。

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