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完璧すぎる『美少女』と、想定外の魔力測定

翌朝、大講堂は純白の検査着に身を包んだ新入生たちで埋め尽くされていた。


「次、魔獣使い科のルシアさん、中へどうぞ」


医官の声に呼ばれ、俺――一時的に肉体ごと完璧な美少女へと変貌したルクスは、堂々と検査室の幕をくぐった。


結果は、完全なる大勝利。

ベテランの女性医官による厳重な触診も、教会の高位神官が目を光らせる魔導スキャンも、レルエの作った【変転の秘薬】の前にはただのザルだった。


「まあ、なんて素晴らしいプロポーションかしら。骨格も筋肉の付き方も、まるでお人形さんのようにしなやかで美しいわ。健康状態も文句なしの太鼓判よ」

医官が感嘆の声を漏らし、検査票に『極上(SSS)』のスタンプを押す。


(ククク……見たか。これが大貴族、聖女、名門、魔族の魔力を結集させた、究極の美少女の肉体だ!)


一歩間違えれば即処刑の最大イベントを完全無傷で切り抜け、俺は内心でガッツポーズを決めていた。

これでもう、女子校生活における「露出イベント」への恐怖は未来永劫ゼロだ。


しかし、本当の波乱は身体検査の直後、大講堂の中央に設置された『国家級魔力適性測定水晶』の前で起きた。


この測定器は、受験者が手を触れることで、体内の「魔力量」と「属性の適性」を視覚化し、その数値を空間に巨大な文字で浮かび上がらせるという代物だ。


「次はエレノア・フォン・アクアリア」


呼ばれたエレノアが自信満々に水晶に手を触れる。

直後、大講堂に眩い青い光が満ち、空間に文字が踊った。


【測定結果】 水属性:極大 / 魔力量:45,000


「おおおっ……! 流石はアクアリア家の天才娘だ!」

教官たちがどよめく。新入生としては破格の数値だ。エレノアはふんすと胸を張りつつ、俺の方を見て「ルシア様、見ていてくれましたか?」と言わんばかりに嬉しそうに目を細めた。


続いて、聖女セレティナが触れると、神々しい金色の光が炸裂する。


【測定結果】 光属性:聖導 / 魔力量:82,000


「な、何という魔力量だ……! やはり本物の聖女様は格が違う!」

講堂が割れんばかりの拍手に包まれる。セレティナは外面用の慈愛の微笑みを浮かべながら、俺との精神リンクで『(ルクス様、早く褒めてください。今夜ベッドでめちゃくちゃに褒めてくれないと暴れます)』と熱い念話を送ってきた。


そして、ついに俺の順番が回ってきた。


「次、魔獣使い科のルシア」


ざわざわと、生徒たちの視線が俺に集まる。地下迷宮で災厄級を退けたと噂の「ルシアお姉様」の測定だ。誰もが期待の目を向けている。


(まあ、適当に魔力を偽装して、平均的な『魔獣使い』の数値に調整して終わらせるか……)


俺はそう気楽に考え、水晶にそっと手を触れた。

――が、その瞬間、俺の計算を狂わせる致命的なエラーが発生した。


ピキ、ピキピキピキッ……!!


(……あ、あれ? 魔力の偽装が……効かない!?)


焦る俺の脳裏に、レルエの言葉がフラッシュバックする。

『変転の秘薬は肉体を完璧に作り変えますが、その副反応として、数時間は体内の魔力制御が極度に敏感(バグ状態)になります』


(それ、今言うことかよレルエ――!!)


俺の制御を離れた、底なしの「皇帝の魔力」が水晶へと一気に流れ込んでいく。

さらに、これまでに俺が【クラスメイト召喚契約】で従属させてきたヒロインたち(フランチェスカ、セレティナ、エレノア、レルエ)、そして契約魔獣たち(スライム、グリフォン、リッチ、フェニックス)の全属性の魔力が、パスを通じて水晶へと逆流・大暴走を始めたのだ。


ドゴォォォォォン!!!


凄まじい爆音と共に、国家級の測定水晶が真っ二つに割れ、大講堂の天井を突き破るほどの【五色の魔力柱】が立ち昇った。

光、闇、火、水、風――すべての属性が完璧に融合した、神話の時代のような圧倒的なエネルギーの奔流。


全生徒が恐怖で悲鳴を上げて床にひれ伏し、教官たちは腰を抜かして絶句している。


やがて、大破した水晶の破片から、空間にあり得ない文字列がギチギチと浮かび上がった。


【測定結果】

属性:全属性適性(神王級)

魔力量:【エラー:測定不能(計測限界突破)】


静まり返る大講堂。

誰もが、信じられないものを見る目で、中央に立つ検査着姿の「ルシア」を見つめていた。


「ぜ、全属性……しかも計測限界突破って……。あの子、一体何者なの……!?」

「勇者アレン様ですら、光属性一つで五万点だったのよ……?」


恐怖と、それ以上の圧倒的な「崇拝」の眼差し。

当の俺は、割れた水晶を前に、可憐に頬に手を当てて「あら、壊してしまいましたわ……うふふ♥」と、ルシアの声でごまかすしかなかった。


だが、洗脳済みのヒロインたちの目は違った。

フランチェスカも、エレノアも、セレティナも、レルエも。全員が、己の選んだ主の「本物の規格外の器」を目の当たりにし、顔を紅潮させ、身体を小刻みに震わせていた。


【ヒロイン一同の洗脳・好感度】

全員一斉に限界突破。もはや信仰を通り越して『狂おしいほどの愛欲と崇拝』へ。


(偽装は失敗した。だけど……結果オーライか?)


俺の圧倒的な力を全校生徒に見せつけたこの日。

人間の大陸を救う「表の勇者アレン」の噂を完全に掻き消すほどの、アヴァロン学園の「裏の怪物・ルシアお姉様」の伝説が、ここに決定的なものとなった。


そしてこの魔力の暴走が、遠く離れた亜人の大陸の、ある「天才ドワーフの少女」のレーダーに検知されることになるのだが――世界征服の第2部への歯車は、すでに狂おしいほどの速度で回り始めていた。

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