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「あれって......」
小夜の目の中には空を飛ぶ緑色の飛行船が映った。
「逃げろ!」
龍之介は小夜の手首を掴み屋根のある方に向かって走り出した。
ブォォォォォォォォンンンンン!!!!
「はぁはぁはぁ!」
『くるぞー!!!』
『逃げろ!火が来るぞ!』
「はぁはぁはぁ」
「待って!」
『火が来るぞ!逃げろー!!!!!』
『ままぁぁぁぁ!あーー!!!!』
「龍っっ!」
「走れ!」
『どいてどいて!』
『防空壕はどこ!?!?』
『きゃぁぁぁぁぁ!!』
『お姉ちゃん!お姉ちゃん!どこ?』
『怖い...怖いよ』
「龍!待って!」
「なにっ!?」
小夜は足を止めた。建物と建物間に小さな子供が座り込んでいた。
お姉ちゃん、お姉ちゃん、と、叫んでいた。
「おねえちゃーん!!!」
「僕早く逃げないと!」
「おねえちゃんがいない!こわいよー!!」
「小夜!」
小夜は反対の手で男の子の手を握りしめた。
そしてまた走り始めた。
『おい!隣町は全壊だぞ!』
町が一瞬、静かになった。
ドォォン!!ドォォン!ドォォン!
「うそ.....」
「伏せろ!」
ドォン!ドォン!ドォン!
「きゃぁぁぁぁああ!!!!!」
視線のすぐ上に低空飛行の飛行機が飛んでいた。
下の小さな穴から何発も何発も先の尖った矢が町に飛び交った。
『ぐわっ!』
『隠れろ———!』
『撃たれただれか.....』
バンバンバンバンバン!!!!
「小夜ちゃん?」
「大丈夫」
龍之介は小夜の頭を手のひらで押さえた。生臭い土の匂いがした。
鳴り止まない銃声。遠くなったと思ったらまた近づいてくる。
「.....」
「もう大丈夫だ。ほら、立って」
龍之介は小夜の肩を持ち彼女を立たせた。小夜は重くなった体を起こした。
「ありがとう。僕大丈夫?」
「あぁ...うぅ.....」
「ぼく?」
「小夜、行こう」
「———うん」
小夜と龍之介は瓦礫の道を歩いた。
「なに、これ」
小夜の目には、信じ難い光景が広がった。
今まで以上の被害を受けた。至る所で火事が起きていた。
グシャ、グシャッと、地面を踏む音が土じゃなかった。いたい、いたいと泣く子供は皆ひとりぼっち。お母さんやお父さんはいなかった。
町は刹那にして、消えた。
「こんなの初めて」
「今回のはひどいな」
「うぅ...おぇ」
小夜は四つん這いになり地面に嘔吐した。
2人の周りには割れた遺体が転がっていた。
「小夜、行かないと」
龍之介は小夜の手を優しく握った。
そして2人は家に向かって歩き始めた。家族のもとに帰るために、龍之介は小夜を連れて食堂に戻った。そうすればきっと弥生さんもいる。
「小夜ちゃん、具合悪い?」
「むり.....めまいがする」
「ほら、乗って」
「いいの?」
「うん」
小夜は龍之介の背中に体を預けた。ホワっと、暖かい熱が伝わった。これが火なのか、体温なのかは分からない。
「小夜?」
「なに?」
「辛くない?」
「大丈夫。ごめんね」
これから、火を消すのにも時間がいるのに、また夜には米国がやってくる。
再生しても破壊される。
「龍之介さんは苦しくないの?」
「大丈夫だよ。地面を歩く方が危ないから」
しかしまだこれは序の口。これが今は当たり前で慣れてしまう。
弥生の10日の日の夜、小夜たちはまだ何も知らなかった———




