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白昼の花火  作者: 椿原菜湖
7/11

「あれって......」

小夜の目の中には空を飛ぶ緑色の飛行船が映った。

「逃げろ!」

龍之介は小夜の手首を掴み屋根のある方に向かって走り出した。


ブォォォォォォォォンンンンン!!!!


「はぁはぁはぁ!」


『くるぞー!!!』

『逃げろ!火が来るぞ!』


「はぁはぁはぁ」

「待って!」


『火が来るぞ!逃げろー!!!!!』

『ままぁぁぁぁ!あーー!!!!』


「龍っっ!」

「走れ!」


『どいてどいて!』

『防空壕はどこ!?!?』

『きゃぁぁぁぁぁ!!』

『お姉ちゃん!お姉ちゃん!どこ?』

『怖い...怖いよ』

「龍!待って!」

「なにっ!?」

小夜は足を止めた。建物と建物間に小さな子供が座り込んでいた。

お姉ちゃん、お姉ちゃん、と、叫んでいた。

「おねえちゃーん!!!」

「僕早く逃げないと!」

「おねえちゃんがいない!こわいよー!!」

「小夜!」

小夜は反対の手で男の子の手を握りしめた。

そしてまた走り始めた。


『おい!隣町は全壊だぞ!』


町が一瞬、静かになった。




























































ドォォン!!ドォォン!ドォォン!


「うそ.....」

「伏せろ!」


ドォン!ドォン!ドォン!


「きゃぁぁぁぁああ!!!!!」


視線のすぐ上に低空飛行の飛行機が飛んでいた。

下の小さな穴から何発も何発も先の尖った矢が町に飛び交った。

『ぐわっ!』

『隠れろ———!』

『撃たれただれか.....』



バンバンバンバンバン!!!!



「小夜ちゃん?」

「大丈夫」

龍之介は小夜の頭を手のひらで押さえた。生臭い土の匂いがした。

鳴り止まない銃声。遠くなったと思ったらまた近づいてくる。

「.....」

「もう大丈夫だ。ほら、立って」

龍之介は小夜の肩を持ち彼女を立たせた。小夜は重くなった体を起こした。

「ありがとう。僕大丈夫?」

「あぁ...うぅ.....」

「ぼく?」

「小夜、行こう」

「———うん」

小夜と龍之介は瓦礫の道を歩いた。

「なに、これ」

小夜の目には、信じ難い光景が広がった。

今まで以上の被害を受けた。至る所で火事が起きていた。

グシャ、グシャッと、地面を踏む音が土じゃなかった。いたい、いたいと泣く子供は皆ひとりぼっち。お母さんやお父さんはいなかった。

町は刹那にして、消えた。

「こんなの初めて」

「今回のはひどいな」

「うぅ...おぇ」

小夜は四つん這いになり地面に嘔吐した。

2人の周りには割れた遺体が転がっていた。

「小夜、行かないと」

龍之介は小夜の手を優しく握った。

そして2人は家に向かって歩き始めた。家族のもとに帰るために、龍之介は小夜を連れて食堂に戻った。そうすればきっと弥生さんもいる。

「小夜ちゃん、具合悪い?」

「むり.....めまいがする」

「ほら、乗って」

「いいの?」

「うん」

小夜は龍之介の背中に体を預けた。ホワっと、暖かい熱が伝わった。これが火なのか、体温なのかは分からない。

「小夜?」

「なに?」

「辛くない?」

「大丈夫。ごめんね」

これから、火を消すのにも時間がいるのに、また夜には米国がやってくる。

再生しても破壊される。

「龍之介さんは苦しくないの?」

「大丈夫だよ。地面を歩く方が危ないから」

しかしまだこれは序の口。これが今は当たり前で慣れてしまう。

弥生の10日の日の夜、小夜たちはまだ何も知らなかった———


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