表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白昼の花火  作者: 椿原菜湖
6/10

「この辺でもいいか?」

「大丈夫です」

2人は人気が少ない脇道を進んだ。そしてその先にあった広い高原に出た。ひとつポツンと、小さな長椅子に座った。

「随分と見晴らしがいいな」

「こんなんところ初めて見た」

小夜は物珍しさに高原を見渡した。

先ほどあった賑やかな町と人は消え去り、ただの草と空だけが無造作に広がっていた。

そしてそこに流されてきたかのように小夜と龍之介が立っていた。

「よいしょっと」

「なんでこんなところ知ってたんですか?」

ひと足先に長椅子に腰掛けた龍之介に、小夜は尋ねた。龍之介は小夜は見てから、視線の先を変えて空に向けた。そして一言。


「父親と来てた」


小夜の胸に重い鉛がのしかかった気がした。物理的にも、心情的にも、彼女の中で察した。

小夜はかける言葉がなかった。視線は下を向き、せっかくの晴天も曇天のようだった。

「そんなに暗くなるな。別にまだ死んだとは限らないからなー」

小夜は不思議に思った。

きっと、龍之介の父親は、出征したはずなのに、こんなにも元気に振舞っていられることが。

小夜は、前を見た。

果てしない草木が水平線に続き、描いて足したような太陽があった。

もう昨日の夜で何人の人が星になったのだろう。

いつ自分の番になるのか、いつ自分があの水平線の一部になるのか。近所の人から聞く隣町の様子には、耳を塞ぎたくなる。聞きたくない聞きたくない。

小夜はまた怖くなった。

「私の父親も、前にいなくなりました。その時までは元気に、働いてたのに———もういません」

まだ出会って間もない若い男女2人。それはまだ初心らしさを隠せていなかったけど、それに比例するように一つ一つの言葉は重かった。

この当時でしか感じられない感情とは、それは儚く果てしなく遠かった。

「龍之介さんは、私の前からいなくならないですよね」

「え?」



ブォォォォォォォォォォンンンン!!!!!



その時だった。2人の耳に、轟音が届いた。

「えっ?」

「あれは...小夜!ここから離れろ!」

龍之介は小夜の手を握りしめて高原を駆け走った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ