↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚され少女と密室二人きり、俺が死ぬまでの七日間。そこから始まるアタシの物語  作者: うさぎさう
4章 【そこから始まったアタシの物語】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

85/86

4章25話:初喧嘩



 ログライフたちを殺した後、どうやらフミーは気を失ってしまったらしい。そのまま一週間目覚めなかったようだ。

 フミー自身、そうなった原因に心当たりがなくはない。




「槍、勝手に使ってごめんね」


「聞いたよ。アイリスのためでしょ? ならいいよ」


 白い長椅子に並んで座るリクとフミー。リクはフミーが起きた時、寝ていたようで、しばらくしてから姿を現した。


「槍……ってもう言っていいのかわからないけど、チョジュラスの槍はどうなったの?」


 フミーは頬を硬くし、少し緊張しながら問いかける。


「形を崩して灰になったけど、中身は何も変わってないよ。元の槍の形に復元は難しいだろうけど」


「じゃあ、あの灰の中にはちゃんと……」


「調べてみたんだけど、スコアは6.6だった。端数の0.6はアイリスさんの媒介にした寿命と両腕の分だと思う」


 リーゼから聞いた話だが、リクが提案するより先に、アイリスが自分で自分の両腕を槍へ捧げることを提案したのだそう。

 その後、フミーが寝ている間にリクとネオンが彼女の義手を作ってあげもしたんだとか。


「スコア6……って、悪魔とログライフとドットルーパとクロシェットの分だよね」


「うん。そうなる」


 おずおずとリクへ確認するれば、リクは頷いた。

 天使は、7スコア必要だと言った。なら、


「残りは……0.4」


 もう少しで、望みが手に届く。だというのに、フミーの心境は複雑だった。

 ——果たして、フミーはそれを叶えてしまってもいいのだろうか。

 もちろん、灰に吸収された魂を、みんなの頑張りを無駄にするようなことはしない。これは、ただの疑問なのだ。

 フミーが目標を成し遂げるに値する人間なのか。身を焦がれるような望みを、長い時間かけても成し遂げられなかった人たちがいる。

 それなのに——。


「ねぇ、残りの0.4スコアなんだけど、アタシの寿命を削って手に入れられないかな」


「えっ」


 どれくらい、生きる時間が減るのかわからない。

 とある本曰く、フミーは500年生きるらしいが、四割削れるとしても300歳まで生きられる。それなら、充分ではないだろうか。

 それでも、反対されるだろうか。


「……僕は反対しないよ。でも、少し待って欲しい。ちょっとした心当たりがあるから確認したいんだ」


「心当たり?」


「うん。だから、もう少し考えてみて。それでもそうしたいんだったら、やろう」


 フミーの肩にポンと手を置き、力強くリクは笑みを浮べた。

 やろうと言ってくれるリクの言葉がフミーには嬉しかった。



——



 リクとの会話を後にし、2階へと繋がる階段の踊り場で、フミーは胎児のように体を丸めて寝そべっていた。冷たく白い床に、フミーの白い髪が広がる。

 定期的に父様が掃除しているし、思い切って体を預けてみたのだけれど、存外落ち着くものだった。

 こうして一人でいると、幽閉されていた時を思い出す。部屋を出たての頃は一人になるのが好きではなかった。誰かといられるなら、なるべく誰かといたかった。

 けれど、いつしか一人の時間も悪くないと思えるようになっていた。

 みんなを、失うことはないと知っているからかもしれない。誰かといるということは、脆く、曖昧なものではないことを。


「わ! 何やってるんですか……っ」


 閉じていた瞳を開けて、階段の先に首を動かすと、ネオンがいた。


「…………幽閉されてた部屋から出て、まだ一年と少ししか経ってないんだなぁと思って」


 ネオンとの付き合いも、まだそれくらいだ。それなのに、ずっと前から知り合いだったような気がしてくるから不思議だ。


「一年しかーっと言っても、段々時間が経つのが早く感じると思いますよ。私もそうでした。なので、どんどん、やりたいことを叶えていくといいです」


「ネオンはどう? 叶えられてる?」


「ん〜、ずっと着てみたかった服をどんどん着ているので、結構叶えられますね。前はネオ・ハクターの模倣をして着てこなかったわけですけど」


「毎日可愛い服着てるなーっていつも思ってるよ」


「どうもです」


 照れたようにはにかんで、頬に手を当てるネオン。

 初めて会った時よりも、本当に表情豊かになった。


「あなたの方も、叶えてくださいね。最後までやり遂げて」


「……うん。でも、でもさ」


 床から上半身を起こして、ネオンから目を逸らしながら自分の気持ちを切り出す。


「世界に誰かを生き返らせたい人はいっぱいいて、ログライフだってそうで、そのために長い間それを求めていたのは本物で、それを葬って、たった一年と少しで叶えて、そんなの、許されるのかな?」


 たまらなく欲しいものに手が届きそうなのに、躊躇う理由は罪悪感だった。その罪悪感を跳ね除けるほどのものを持てなくて——いや、失ってしまったのかもしれない。


『俺が生き返れる方法を探してくれ』


 カザミショーヤが信じてくれた自分を、自分も信じたはずなのに、実際目の前なのに、フミーがそれほどのことを成し遂げていい人間なのかわからなくなる。フミーだけの力じゃなくて、むしろフミーの力なんて些細なもので。それなのに、そんな都合の良さに身を任せて——


「何言ってるんですか。今さら、そんなこと言うんですか」


 階段を降りて、フミーが座る踊り場へ足つけるネオン。その声は微かに震えていた。

 膝を折って、目を逸らしたままのフミーの肩を勢いよく掴む。


「私たちは……ずっとあなたのために頑張ってきたんですよ! そんな泣き言許しません!!」


「——っ」


「カザミショーヤって人間を直接知ってるのはあなただけです。そりゃあ私は彼を召喚してしまった身ですし、生き返らせたい理由はありますけど! でも、一番の理由はあなたです! 私以外の人も、あなたが理由です! リクが無理して力を使い続けたのもあなたのためです! あなたに協力したいから一緒にいるんです!」


「そっ……」


 ネオンの勢いに、思わず固まる。ネオンは、フミーに怒っていた。感情を全開にして、紺色の瞳にフミーを映している。

 当てられたその感情にたじろぎそうになるも、奥歯を噛んで抑えて、ネオンをじっと見る。

 ——そして、吠えるように叫ぶ。


「そんな風に怒らないでよ!! わかってるよそんなの!! でも不安なの! 怖いの!! だって、幽閉されて死んだように生きて、救ってくれた人も死んじゃって、でもなんとか前を向いて頑張って、それでも辛いことも、悲しいこともあって、押し込んだり、受け入れたりしてさ……アタシは、ずっと弱いのに」


 自分でも、何を言っているのかよくわからなかった。それでも、隠していた、自分しか知らないものが吐き出てくる。鬱憤を晴らすように。


「強くなろうとしたけど、全然足りなくて、うまくできなくて、それなのにみんなの力を借りて、支えてもらって、何とか歩けてるのに、なのに……こんな恵まれてていいのかわからないの……っ!!」


 言葉にすればするほど、思うよりも強く感情になる。

 きっと、自分の価値に自信がなかった。

 シャベルで突かれたらすぐ崩れてしまうくらい、繊細で、脆くて、未熟。弱いままの子供だ。

 そんな自分に自信が持てなかった。

 だからなんだろう。不安になるのは。


「あなたが何もせず他人任せな子ならとっくに見切りつけてますよ!! そうじゃないからついて行ってるんです!! あなたの人徳の結果なんですよ!!」


「だとしてもさぁ! 泣き言もちょっとぐらいさ、言わせてよ!! 友達でしょ!?」


「アープルにでも言ってください!! 友達でも協力してる私に言わないで!! カザミショーヤを生き返らせることが許されるのかなんて、今まで協力してきたのに蔑ろにされたみたいで悲しいし腹が立つでしょう?!」


「蔑ろになんかしてない!! むしろ感謝してるの!! だから、アタシが——」


「だったら!! 黙ってやり遂げないよ!!!」


「やり遂げるよ!! けど、不安な気持ちも怖い気持ちも黙って抱えてろって言うの!? ネオンを信頼してるから話したのに!!」


「だったら、許されるのかなーなんて聞かないで!! 許されるに決まってるでしょ!? 例え世界が許さなくても私が許す!!」




 ——そこから、二人の喧嘩は続いていく。通りかかったルルーミャに止められても止まらず、頭へ拳骨を喰らわされるまで終わらなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。