56 暗黒神と土地神 その2
ミカゲにダミー村の鎮守をしてもらえば、その魔力で岩山の緑化も進む。
緑化が進めば住める人間も増える。ダミーの村とはいえ、体裁が整うのはいい事だ。
純粋に居住可能地が増えるというのも素晴らしい。
いくら魔法があろうとも、還らずの森を切り開くのは大変だ。ダミー村の開拓が容易になるならありがたい。
「名前、考えんとなぁ」
ダミー村の岩だらけの土地を走り回って遊んでいる、ピアとミリたち獣人幼女を眺めながら呟く。
「この村の、ですか?」
俺を膝に抱えているフウの声が、頭上から降ってきた。ちょっと視線を上げるが、偉大なる山脈が邪魔をして、彼女の表情は見えない。
「まあ、神殿の村も含めてね」
「あちらは、神殿の村のままでいいのでは」
脇に控えたヒイが言う。
「それじゃ、なんか素っ気なくない?」
「クラキ村」
「やめてくれ、ユキ」
みんなが賛成しそうな気がして、食い気味に否定した。
「そうだな。あそこは、元巨大帝国の首都だったんだろう?」
「そのようです」
「じゃあ、モトテート村なんでどうだろう」
元帝都村。なーんちゃって。
そう続けようとした時、ヒイが大きく手を打った。
「なるほど!」
「え?」
「歴史も知れて、いい名前」
「ええ?」
「早速、みんなに布告します」
えええ!?
マジか。ギャグのつもりだったんだが。
あまり面白くないギャグだから、晒し上げてんじゃないだろうな、と疑心暗鬼にとらわれる。
だが、恐ろしい事にみんなは本気のようだ。
いいのか、それで。
それともこれが、異世界センスというものなんだろうか。
まさかと思うが、暗黒神たる俺のセンスが至上とされる訳じゃないだろうな。
「では、この村の名はどうしましょう?」
「ミカゲ村でいいんじゃない?」
俺としては良い名前だと思うんだが、反応は芳しくない。
特に名前を使ったミカゲは、引くほど拒絶している。
俺も、自分の名前を村の名に使うのを拒否ったので、わからなくはないが。
「うーん。岩村…は、あんまりだな」
みんなの反応を見て取り下げる。
笑顔だけど、なんつーか冷たい反応なんだよな。
「ちょっと変えて、イワオ村なんてどうだろう」
満点とは言いがたいが、まあマシな反応かな。
「じゃあイワオ村という事で」
いまさらながらの村の命名は、一応終了した。




