52 侵攻側の都合 その5
魔法使いの表情が、完全に抜け落ちてしまった。
あれから、攻撃魔法の3連打、4連打で次々と結界を破壊していった。だが、いくら結界を壊しても次の結界が待ち構えているのだ。
だが、ついに状況が変わる。
悪い方に。
魔法の5連打ののち、結界が破壊される事なく残っていたのだ。
位置的には、2枚目辺りの結界が残っている。つまりこの結界は4連打の魔法を耐え切ったという事になる。
「馬鹿な」
魔法使いは、表情が抜け落ちたまま呟く。
「これだけ大規模な結界を強力に張れる?何人かで協力して張っているのか?」
ブツブツと呟いていたが、印書を取り出すと額の印を変えはじめた。
「少し離れていて下さい。今度の魔法は強力ですよ」
結界を調べている冒険者たちに、警告する。慌てて冒険者たちは、後ろに下がった。
我々も、少し結界と距離をとる。
「いきますよ」
額の印に魔力を込めはじめたのだろう。今までにない眩しさで、印が光り輝く。
魔法使いの前方2メートルほどに、大きな火球が現れたかと思うと、それが縮み始めた。
圧縮され、輝きが赤から白、そして青白く変わる。同時に針のように形を変えた。
離れた我々の方まで、熱が伝わってくる。
「貫け、焔の怒り」
その言葉とともに、青白い炎の針は結界目掛けて飛んでいった。
結果に当たった瞬間に、弾け炎と風、轟音を撒き散らす。
離れて立っていた我々も弾き飛ばされそうになり、周囲の木々が嫌な音を立てる。
「す、すげえ」
誰かの喘ぐような声が聞こえた。
だが。
結界は揺らぎさえしていなかった。
パチパチパチ。
間の抜けた音がした。
まるで、小さな柔らかい手が拍手をしているような音だ。
「すごいすごい!なかなか強力な攻撃で、ビビっちゃったよ」
場違いな子供の声が聞こえてきた。
周囲を見回すと、結界の向こう。闇の奥に小さな人影が見えた。さらにその後ろに付き従う影が2つほど見える。そちらは大人のようだ。
「なかなかいい攻撃が、連発されるんで見に来たけど、まさか1人の魔法とは思わなかった」
あどけない子供の声が、先程の魔法使いの呟きと似たような事を言う。
「いやぁお兄さん、魔力が多いよね。大したもんだ」
感心したように言っているが、完全に上から目線の物言いだ。
魔法使いのこめかみに、血管が浮く。
「貴様。何者か」
読んでいただき、どうもありがとうございます。
もうちょっと区切りのいいところまで、と思っていたんですが、力つきました。
来週も、ちょっと不安定な投稿になるかも知れません。
ご寛恕いただければ幸いです。
そして、もう少し頑張れ、俺。




