51 侵攻側の都合 その4
結界が壊れた。
そう悟った冒険者たちは、我先にと走り出す。
が、たちまち鈍い音と悲鳴を発した。
「また、結界ですか」
魔法使いが顔を顰める。
破壊した結界のわずか1メートルほど内側に、新たな結界が張られていたのだ。
全員の視線が魔法使いに集った。
結界を破壊できるのが、彼しかいなさそうなので、仕方がない。
魔法使いは、ため息をついて印に魔力を巡らせた。
「炎舞」
再び炎が荒れ狂う。
結界が破れ、冒険者たちが再び突入する。
半ば予想していたことだが、三度結界に阻まれた。
さすがに頭を強打した者はいないが、尻餅をついている者は、結構いる。
「どういうことですかね」
魔法使いが不審気な声を上げる。
「なにがだ?」
「これだけの結界を張れる人間が、3人もいるなんて、どういう事でしょうかね」
「張れる人間は珍しいのか」
「この規模なら破れる人間より遥かに少ないでしょうね」
「ふうん」
こちらの反応が気に入らなかったのか、魔法使いはジロリと俺を睨んだ。
「結界というのは、結界自体の強さもさることながら、広さによって大きく難易度が違ってきます。ここら辺一帯を覆う結界を張れる人間など、国中探してもそうはいません」
「あなたは、張れるんですか?」
「もちろん」
気負う事なく魔法使いは言う。
「ですが、破られた直後に貼り直すのは、無理です。印の再励起に時間がかかりますし、破られた事による衝撃だって受ける」
「つまり、この先にはあなたに匹敵する魔法使いが、最低2人はいるわけだ」
「そういう事です」
ゾッとしない話だ。
だが冒険者たちも魔法使いも、先に進む意欲を失っていない。
冒険者たちはともかく、魔法使いが進む意志を見せている限り、我々も進まざるを得ない。
命令に、我々の選択肢はないないのだ。
「連発してみますか」
そう言って魔法使いは、炎舞を2連発で放つ。
いとも簡単にやってはいるが、彼が尋常ではない技能の持ち主であることが、よくわかる。
攻撃魔法にしたところで、印をすぐに再励起させるのは容易ではない。
だが、その見事な早技も報われることはなかった。
「馬鹿な」
自信に満ち溢れていた魔法使いが、呆然と立ち尽くす。
結界は2枚連続で破られた。
しかし、その奥にさらに結果が張られていたのだ。
読んでいただき、どうもありがとうございます。
転勤とコロナ騒ぎで生活が不規則になっていますが、なんとか次回は金曜日に更新したいと思っています。
頑張ります。多分。




