39 暗黒神、いろいろ考える その4
神殿から亜空間収納で持ってきた家を据え付けるには、基礎がいる。
基礎といっても土地を均して、要所要所に平たい石をいく程度なんだが。
ただどこに家を置くのかというのが、なかなか悩ましい。
一番平らで広いところは、畑にしたいんだ
よな。
あと池に近すぎても、浸水の恐れがある。
しばらく考えて、池の脇の岩場を平らにする事にした。土の部分と比べて高いところにあるし、転圧する必要もない。
人力でやると大変な手間だが、神託について調べていた俺には、マイナー魔法の知識が、アホみたいに増えている。
その中の一つ。平滑を使って岩場を均していく。
でも滑らかすぎるのが、玉に傷だな、これ。
凄く滑り安くなっている。
そのうちに削れて滑らなくなりだろうが、それまでに素っ転んでもヤダな。
全員に俺の後ろに避難してもらい、魔法の砂嵐を即席のサンドブラスターとして使ってみる。
よし。いい具合に表面が削れたな。
なけなしの土の露出している部分が、エラい事になっているが、気にしない事にする。
どうせ、これから耕すんだから、少しくらい砂が積っても、ダイジョブダイジョブ。
持ってきた家を置く段になって、想定外の事が起こった。
ゲールとスシャルが、もっと大きい家が必要だと言うのだ。
「クラキ様が、ここに住んでいる形にするのだろう?」
スシャルの言葉に、ヒイとフウがハッとした表情になる。
スシャルの言葉は正しい。
そもそも、リシュルに「俺たちの住んでいる場所」を見せるためのダミーなのだ。最低、リシュルたちと会った人間が、ここに住んでいる設定である。
「うかつでした。クラキ様の住まいは神殿という先入観で、うっかりしていました」
ヒイの言葉にフウも肯く。
「本当に。ダミーとはいえ、クラキ様の住まい。いわばもう一つの神殿と思えば、もっと他と差をつけた建物とするべきでした」
「いやいやいや。こんな場所に家だけ大きなもの建てたってしょうがないでしょ」
かえって怪しまれるって。
だが、ユキまで首を横に振った。
「集落の長と、従う者の家が同じくらいの大きさという方が不自然」
だったら召喚してるときに言えよ。見てただろ。
俺が言うと、ヒイとフウはあさっての方を向き、ユキは無表情に舌を出した。
「これはうっかり」
あざとい!
3人ともあざといぞ。
ドジっ子キャラをつけようとしやがって。
ヒイたちなんて、色黒巨乳ドジっ子お姉さんキャラとか、属性が大渋滞だよ!
好きだけど。
でも露出は少なめの方が萌えるタイプです。
心の中で性癖をカミングアウトしてから、落ち着いて思案する。
「とりあえず、このまま設置して、ここで建て増ししよう」
どうせ集落の体裁も整える必要もある。
まあ、そういった細かい事はゲールたちにお任せして、俺は俺にしか出来ないことをやろう。
すなわち、農耕可能な土地の拡張だ。
岩の除去とも言う。
といっても実際に農地を増やすわけではない。草地を増やして、羊たちをこっちで飼いたいのだ。
主な理由は二つ。
まず、リシュルたちが動物を買った事を知っている事。
集落に買った動物もいなければ、飼おうとした形跡もない。では、怪し過ぎる。
もう一つの理由は、神殿の周囲では動物たちが怯えてしまっている事。
いくら祝福によって安全が確保されているといっても、その周りは魔物が闊歩している土地だ。
その気配に怯えて、羊も山羊も一塊りになって餌も食おうとしないものが多数。
極一部の山羊と牛のみが、なんとか慣れて行けそうな様子を見せている。
なのでそれ以外の動物は、こっちで飼おうという算段だ。
ということで、地表に転がっている岩を魔法で持ち上げる。まさに人間起重機。
持ち上げた岩は、加工して建材などに使えるだろうから、少し離れた場所に置いておく。
表面の岩をどけても、出てくるのは礫混じりの土だが、とりあえず草が生えてくれればオッケー。それよりも岩をどけて、30センチ以上地面が下がった方が問題かもしれない。
最終的には、どこからか土を持ってこないといけないかもな。
そんな事を考えながら、ひたすら岩をどけていく俺。
「なあ。スシャル」
「どうした、ゲール」
「最初から、ここに村を作れば良かったんじゃねーかな」
「馬鹿を言え。クラキ様がいてこそ、だろうが」
そう言いながら、スシャルはため息をついた。
その視線の先には「はあ、ドッカンドッカン」と元気良く叫びながら岩をどかす俺がいる。
「だいたい暗黒神様が、こんな方だと事前にわかるものか」




