38 暗黒神、いろいろ考える その3
遠征組が、新拠点候補地に到着するまでの間、神託のことだけにかまけていたわけではない。
それはもう、忙しく働いている。
例えば神殿周りの開墾の進み具合を確認したり、生活に必要な品を召喚したり、オーガやリザードマンの子供たちと遊んだり、ヒイとフウに甘やかされながらユキの冷たい視線を浴びたり。まあ、そういった事だ。
さらにやっておかなければいけない事と言えば、新拠点用の家の用意だ。
神殿周りでも、少しずつ家が増えてきたが、それを持っていくわけにもいかない。
新拠点用に新たに家を作るにしても、作る人員は限られている。という事で、手っ取り早く召喚する事にした。
召喚物の大きさに比例して、魔力を消費するので、広さは控えめだ。
あまり大きな家を召喚して、向こうに置けないとか、悲惨だからね。召喚したら、亜空間収納に仕舞い込む。
「向こうに転移してから、現地合わせで召喚した方が、確実では?」
ユキの言葉には「早目に召喚して、魔力の回復をしとかないと」とか言ってごまかす。
もっと早く言ってくれよ、と内心で地団駄踏んでいたが。
3軒も召喚しちゃったよ。
むこうにおけなければ、神殿周りに置くからいいんだけどさ。
傷心の俺は顔をヒイの豊かな胸に埋めて、慰めてもらう。
優しく頭を撫でられていると、どんどん人としてダメになっていく気がする。
いや、俺は神だから、大丈夫。おそらく。
「クラキ様。目的地に着いたぜ」
ゲールの念話が届いた。
「魔法陣は設置した?」
「おうよ」
勢いのいいゲールの返事に、転移陣の親がある広間に移動する。
転移するのは、俺の他にいつものヒイたち女性5人組だ。
「転移するよ」
念話で伝えてから転移を起動する。
短距離での試験は何度も行なっているので、もう慣れたモノだ。
一瞬、視界が闇に包まれ、光が戻ってくると転移終了だ。
「こりゃまた」
見える風景に思わず声が出る。
「確かに岩だらけだな」
「森と見比べると余計にそう思いますね」
フウの言葉に肯く。
緑の色濃い帰らずの森から直接やってくると、灰色を基調にした荒野は一層荒れ果てて見える。ゴロゴロとした岩の間に僅かに土が見え、草が生えているのが、かえって荒涼感を増している気がする。
後ろを見ると山々が聳り立っているが、そちらの方が余程緑が多い。
今、我々がいるのは、山への斜面がキツくなる直前。池と僅かな草原がある部分だ。
「ここにだけ、奇跡のように土が見えてるな」
水際の平地かぁ。雨降ると浸水しそうだな。前の世界で、公共放送のブラサングラスを良く見ていたので、地形には敏感なのだよ。
リアルに神様がいる世界で、どこまで有効かはわからんが。
この池だって、流れ込む川も流れ出る川もないしな。水は綺麗だけど、湧き水かな?
一通り見て回るが、使える土地の広さを別にすれば、悪くないように思える。
ただ、浸水に気を付けなければいけないのと、発展性がなぁ。
「本拠に使うのは無理だけど、ダミー拠点なら十分かな」
10人くらいまでなら、なんとか養える畑は作れそうだ。
実際は、神殿と行き来できるので心配する必要はないが、一応暮らしていける体裁は整えておかないと不自然だからな。
「よし!ここを新たな拠点と定める!」
俺が拳を振り上げて宣言すると、ピアとミリが「おお〜」と声を上げながら拍手をしてくれた。
オーガとリザードマンの諸君。反応に困ってソワソワするのは、やめてくれ。
読んでいただき、どうもありがとうございます。
次回投稿は、2月18日になってしまいます。
なるべく、その分長めに書けるように頑張ります(努力目標)。




