36 暗黒神、いろいろ考える その1
「よし!決めた」
スオナーデの買い出しを終え、神殿に戻ってきた俺は、早速風呂に浸かっている。
今回の帰り道は牛、羊、ヤギを引き連れてだったので、さすがに疲れたよ。
当然の如く女湯で、両脇にはヒイとフウ。神殿に戻ってきているので、変身は解いて、いつものダークエルフの姿だ。
目の前にはミリとピアが、ニャンニャン、ワンワン言いながら、お湯に浮いている。
戻ってきていきなり、ノーフェスがピアとミリに「君たちはキャラ付けが薄い!」とか、訳のわからん説教をかましたためだ。
あいつ、実は転生者じゃないだろうな。
そんな疑いが生まれてしまった、今日この頃。
ピアにもミリにも、変なキャラ付けはしないでいいと言っておいたが、ヒイとフウに刺さってしまったらしい。
ピアたちも、結構気に入ってるっぽいしな。妙な語尾が定着するかもしれない。
ちなみに俺が決めたのは、語尾についてではない。
「どうなさったのでしょう?」
ヒイの問いに答える。
「リシュル対策、ってだけじゃないな。とにかく、この森の外に一つ拠点を作る」
ようは対外的なダミーとしての村だな。
「ここの開発もさほど進んでいないのに、外部の拠点?」
少し離れた場所で湯につかっていたユキが、首を傾げる。
確かにこの本拠も、まだ個人の家は建っておらず、種族ごとに集団生活をしている。畑も広がってはきたが、最初に植えた葉物野菜も、収穫には至っていない。
外部に拠点を作るには、早すぎるだろう。
だが。
「外部の拠点だけど、外部の拠点として使わなければいい」
「?」
俺の言葉に全員が、わけがわからないといった表情をする。
「神殿一階の大広間に、デカい魔法陣があったろ?」
「はい」
「あれの解読に成功した」
俺は湯船で立ち上がり、胸を張った。
イカ腹だから格好はつかないが。
久しぶりに帰ってきて、魔法陣を見た瞬間に、閃いてしまったんだよなぁ。
なんというか、神が降りてきた瞬間って言うの?(なお、自分が神な模様)
「さすが暗黒神様」
ヒイとフウは褒めそやすが、ユキは黙ったまま先を促している。
「ありゃ転移の魔法陣だ」
その言葉に、さすがのユキも驚愕の表情を見せた。
風呂から上がり、問題の魔法陣のある大広間に来た。
どうやって聞きつけたのか、ちゃっかりノーフェスもいる。
「正確に言えばこれは転移魔法陣の親だ」
「親、ですか?」
「こいつを使用するには、転移の出発点と到着点の両方に魔法陣が必要なんだが、対になる魔法陣は、極簡単な物で大丈夫なはずだ」
「な、なるほど!この陣が転移魔法の大部分を受けもつために、対になる方は大した魔法式がいらないんですな!」
唾を飛ばしながらノーフェスが叫ぶ。
いいから落ち着け。
それに、周りの愛人兼弟子たちは、ウットリとした顔をやめてくれ。
怪しい宗教団体にしか見えない。(なお、ここ全体が怪しい宗教団体な模様)
「そうだな。だから子の方の魔法陣は、大して魔力を使わない上に、そっちだけ読んでも、なんの為の魔法陣かわからないはずだ」
そう言いながら、頭の中で子の魔法陣を組み上げてみる。
「いや、そもそも魔法陣とすら気付かないかもな」
暗黒神の大紋章も酷かったけど、この魔法陣も酷いな。子供の落書きみたいだ。
どうにか工夫すれば、布地の紋様みたいにできるか。
今回、やろうとしている事にはちょうどいい。
「この転移陣を使って、新しい拠点と行き来するわけですな?」
フウの言葉に肯く。
「そういう事。行き来は一瞬でできるし、声をかけるのも念話で簡単だ。同じ村にいるのと、あまり変わんないだろう?」
単純に開拓場所が広くなったと、思えばいいのだ。
なおかつ、外部に対しては、そここそが本拠と思わせられる。
完璧な計画じゃないか?




