35 光の騎士、別れを告げる
イベントは、イベントそのものよりも、後片付けの方が大変。
悲しき公務員の経験則は、異世界でも有効だった。
前の世界で後片付けを複雑化させるのが、議員センセーなら、こっちの世界で混乱させるのは、金光騎士。テメーだ。
あとから代官の手勢など20人ほどでやってきて、黙って先行するのは協調性がどーの。
なにかあったら、責任はこのモドンが取らねばならぬ、とかなんとか。
しまいには、この顛末はこのモドンの名で教国に報告するとか、功績を横取りする気満々で言い出した。
脇で聞いていて思わず「はあ!?」と呆れた声を上げてしまったら、モドンとやらに思いっきり睨まれた。
その後ろで、メリアがいい笑顔でウインクしてたけど。
そのあとは矛先が俺たちの方に向き、そもそも誘拐されるなんて弛んでいる、とか喚き出す始末だ。
代官の手勢からも、同情の眼差しで見られちゃった。
さすがにリシュルが黙らせたが、なおもモドンはグチグチ言っている。
「金光騎士よりも、聖光騎士の方が偉いんじゃないの?」
本人に聞くのもなんなので、メリアにソッと聞いてみる。
「地位は聖光騎士の方が上だけど、モドンはそもそも貴族で、リシュル様は農家の出だから」
あー。なるほどね。
「金光騎士が、みんなああじゃないのよ。普通、貴族は教会の守護で外に出ることのない銀光騎士を選ぶんだけど」
メリアは苦笑しながら言う。
「時々、銀光騎士よりも偉いというだけで、金光騎士を選ぶ馬鹿がいるんです」
いつのまにか隣りにやってきたリシュルが、口を挟んできた。
口調は丁寧なものに戻っているのに、言っている内容は辛辣だ。
腹に据えかねた、というよりも呆れかえっているらしい。
「モドンが来る前に、事を終わらせられたのは幸いでした」
「捕まえた連中は?」
「望み通り、モドンに護送させます。魔法も手足も封じているので、彼にもできるでしょう」
いや〜、どうだろう?
俺の表情に、リシュルとメリアが苦笑する。
「一応、私たちも同行します。離れてね」
「なら、安心ですね」
あ、言っちゃった。
「という事で、しばらくの間お別れです」
え?お別れはともかく、しばらくの間?
「なるべく早目に背後関係を調査して、戻って来るつもりですので、その時はよろしく」
「戻って来る?」
そういえば、リシュルはなにしにスオナーデに来たんだっけ?
暗黒神信徒の調査?
じゃあもう来る必要は、ないのでは?
俺の疑問にリシュルは爽やかな笑みで応えた。
「あなたみたいに面白い子を放っておけるわけ、ないじゃないですか」
一体どーゆー意味なんだ。
「そうですね。どう見ても可愛らしい子供なのに、態度は妙に大人。しかもマセているわけでもない」
メリアもリシュルに同意している。
「なので、一件を片付けたら、またここにやってきます。その時は、クラキ君たちの村も見せて下さい」
なので、じゃねーが。
「いやぁ、他人様に見せるような村じゃないけど」
「それでは、しばしのお別れを」
そう言って光明騎士一行は、暗黒神信徒を引き連れて代官の屋敷へと戻っていった。
今日中に、スオナーデを出るそうだ。
「まずいな」
フウの腕の中で、考え込む。
あ、ちなみにさっきからズッとフウに抱っこされてます。
丸1日ヒイと2人で、ズルいという理由だそうだ。
もう、好きにして下さい。
「村に来ると言っていましたが」
フウが俺の顔を覗き込む。
ついでに頬っぺたをつつくのは、やめてほしい。
「うーん」
「排除しますか?」
怖いセリフをぶっ込んできたのは、ユキだ。
「あの加護は厄介だけど、ご命令であれば」
「やめてよ。光明神と対立する気は一切ないんだから」
「もしかすると、あいつらに言っていた事は本心ですか」
フウに取られた俺の代わりに、ピアとミリを構っていたヒイがびっくりした顔で言う。
自称暗黒神の使徒に、勝手に光明の使徒を牲にするんじゃねえと言った事だな。
「もちろん。俺、光明神と敵対した事ないはずだし」
たぶん。
まあ記憶ないからね。
「暗黒神様を封印してのは、光明神では?」
フウの言葉に頷いた。
「そうだよ。でも、それを頼んだの、たぶん俺」
「「「え?」」」
声を揃えてビックリするヒイたち。
理由は思い出せないけど、でもたぶんそうなんだ。
ごめんね。




