34 暗黒神、光の騎士を見守る その2
監禁2日目。
この小屋の状況は、念話でフウたちにしっかり伝えてある。
今気になっているのは、繋がれた山羊たちの体調だけだ。
特に屋根に繋がれている山羊が、気になる。
外のトイレに行く時に、やたらと山羊を気にしていたので、山羊よりも自分の身を心配しろと、拉致犯に説教された。
お前らだけには、言われとーないわ。
口には出さなかったけど。
「そろそろ、光明騎士に使いを出すか」
リーダー格らしいパルモが指示をだす。
「代官の屋敷に、こいつを投げ込んでこい」
書状を指示した男に手渡す。男は、即座に小屋を出て行った。
「僕たちを使って、お金を取るの?」
一応、目的の確認をしてみる。
「金?」
パルモはせせら笑った。
「俺たちの目的は、そんなちっぽけなモンじゃないさ」
「じゃあ光明騎士の命?」
重ねてヒイが問う。ずっと俺を膝に座らせているが、痺れないのかね?
「まあとりあえずはな。だが、それも手段に過ぎない」
「光明騎士の命が手段?」
「そう!俺たちは光明騎士の命を捧げて、暗黒神様の復活の糧とするのさ!」
やっぱりか。
そうじゃないかと思ってたんだよなー。
「暗黒神様に?」
ヒイが、ちょっと表情を和らげる。暗黒神を信奉する者として、親近感を抱いたらしい。
「暗黒神様が望んでいるの?」
「あん?」
俺の問いにパルモが、なにを言うのかという表情をする。
「暗黒神様が、光明騎士の命を望んでいるの?」
「そりゃそうだろう。にっくき光明神の使徒だぜ」
「え?光明神様と暗黒神様って仲悪いの?」
「当たり前だろう」
そのパルモの言葉には、ヒイも頷いている。
そうか。そういう認識なのか。
「だって、闇があってこそ光はより輝くし、光の元にこそ闇は生まれるのに」
「え?」
「闇と光は別に対立しないよ。だって全ては暗黒から生まれて、暗黒に還っていくんだ」
パルモのみならず、そこにいる全員が呆然と俺を見ている。
「暗黒は全てを包み込む、優しい存在なのに」
ボク、悪い神様じゃないよ。
「ぼ、坊主。暗黒神様を敬うとは見所があるじゃないか」
パルモは、気を取り直すように大声をあげた。
「事が終わったら、俺たちの仲間にしてやるよ」
そう言って、少し乾いた笑い声を上げ、パルモの仲間たちも続いた。
「そうだね。仲間になれるといいね」
お前らの求めている暗黒神は、どこにもいないけどな。
そろそろ、フウたちがリシュルを連れて、近くまでやって来たようだ。
道案内してあげているので、迷いようがない。むしろ、監禁場所を知らない振りをする方が、難しいだろう。
彼女たちが潜んでいる場所も、魔力で確認できる。
一つ、余計なものまで見つけてしまったが、それは後回しでいいだろう。
周囲の偵察をするピアたちに、見張りの様子を伝えたりして、人質大活躍である。
そのうち使いに出ていた男が、戻ってきた。
「文を投げ込んんできたが、どうもこの小僧の連れが、光明騎士を連れ出した後みたいだぜ」
その言葉にパルモは顔を顰める。
「じゃあ、早目に光明騎士が来るかもしれねぇな。クソ。ずっとこいつに手を置いてるのは、面倒なんだがな」
そう言って机の上の石盤に左手を置き、俺たちの座っている魔法陣を励起させた。
これで俺たちの命は、パルモの左手に委ねられたわけだ(但し俺が認めた場合)。
次の瞬間。
リシュルたちが、入口を開け放ち突入してきた。
おいおい、ビクッとして左手離しかけるんじゃないよ。
魔法式書き換えたのを、誤魔化すの大変じゃん。
それからは怒濤の展開であった。
リシュルの加護のチートっぷりを確認している最中に、突入してくるミリとピア。
今度は左手を完全に離してしまったパルモ。
慌ててピアとミリに外側から引っ張り出してもらって、その直後に魔法陣を動作させたけど、冷静に見てたら動作が遅い事は明白だったろう。
その場にいた人は、見張りが巻き込まれてしまったので、誤魔化せたかもしれないけど。
それにしても、この魔法陣、凶悪過ぎないか。上半身、グチョグチョやぞ。
直近で見たヒイは顔を背けてしまっている。
ピアとミリにも見せないように、気を使っているようだ。
対策は講じていたとはいえ、つい先程まで座らせていた場所の仕掛けを実演付きで見せられると、さすがに気分が悪い。
なので、最後の仕掛けの爆破魔法陣が不発で、呆然としているパルモの顔を見て、ザマアと思ってしまった。
これで、とりあえずここにいる連中は、リシュルに任せても大丈夫だろう。
チートな結界も含めて、彼女の実力は疑いようがない。
俺は手にしていたボールをワザとらしく転がして、小屋の外に出る。
さっき見つけた、気になるモノの処分をしなければ。
気になるもの。それは、おそらくパルモたちの監視をしている人間だ。
パルモたちに敵対しているというわけではなく、たぶん裏切りや捕まった時の口封じのためだろう。
その証拠に、今も隠蔽の魔法を駆使しながら、小屋に近づいている。逆に目立つんじゃないか、というくらいに黒尽くめだ。
手には不自然に濡れている剣。きっと毒でも塗っているのだろう。
俺とは10メートルほど離れているし、これ以上近付くと俺が奴に気付いている事が。バレるだろう。
こんな時にこそ、前に作った魔道具だ。
チャラチャンチャ〜ン、チャラチャンチャンチャラ〜
と某アニメの音楽を頭の中で鳴らしながら、右の靴に仕込んだ魔道具に魔力を流す。
パリッ。
微かな放電がおき、オゾン臭が立ち込める。
トゥルトゥルトゥル。
頭の中の音楽の終わりに合わせ、右足でボールを蹴る。
「パクリ・シュート!」
あ、思わず叫んじゃった。
だが、不意打ちに黒尽くめは反応出来なかった。
魔道具により、数万ボルトに帯電しているボールを腹部に受ける。
バチッ!
電撃を食らって、声もなく黒尽くめは倒れた。
特大のスタンガンくらったようなモンだしね。しばらくは動けまい。
「あれれ〜!変な人が倒れてるよ!」
大声を上げて、みんなを呼んだ。
これで一件落着だろう。
読んでいただき、どうもありがとうございます。
次回投稿日は1月31日になる予定です。




