30 光の騎士、暗黒神を救う その3
ピアとミリが小走りに戻ってきた。
最初は、リシュルたちが偵察に動こうとしたのだが、獣人娘たちが圧倒的に潜伏行動に向いている事が判明した。
獣人の運動能力と小さな体躯の相乗効果だろう。小走りに走っても、少し離れるとリシュルたちでも見失ってしまう。
もちろん、奇跡を使えば別だろうが、この場においては充分な能力だった。
幼い女の子に頼るのは心苦しかったが、ピアたち自身が主を救う為に、と志願したこともあり、リシュルは2人にお願いすることにしたのだ。
「外に人はいません。裏口はしまってました」
ピアが報告する。特に息を切らしている様子もない。
「窓は空いてます。男の人が何人か見えました」
「声、7人分してた」
ミリが補足する。
「クラキ様とヒイさんの匂いは、裏口の近くからしています」
そこまで言って、ピアとミリは顔を見合わせた。
「それと、家の周りに一頭ずつ山羊が繋がれていました」
「全部で6頭?」
「思ったより情報が多くて助かるが、山羊が気になるな」
家の周囲に6頭。さらに屋根の上に1頭。これで何の意図もなければ驚くが、その意図が全く読めない。
「誰か来ます!」
周囲を警戒していたメリアが、押し殺した声で警告する。
道を見ると街の方から、若い男がやってくるのが見える。
男はさほど警戒をする様子も見せずに、農家に歩み寄り入り口をノックした。
少し空いた扉に向かって何事かを言い、そのままスルリと入って行く。
「別働隊でしょうか?」
「たった1人でか?」
メリアの言葉にリシュルは首を横に振った。
「伝令か何処かの見張りならともかく…」
なにかに気付いたようにリシュルは、言葉を切った。
「そうか。まずいな」
リシュルは右のこめかみを揉んだ。
「今回の誘拐は、おそらくクラキ殿自身が目的じゃない。だとすれば、本来の目的に連絡が必要だ。人質を取ったぞ、と」
「連絡?まさか代官屋敷にですか」
メリアが確認した。
「たぶんな。ここで人質を取ってるぞ。と宣言しないと、普通ならここに誘き出されないだろう」
と、犯行声明前に敵アジトを見つけた人が申しております。
「だから奴が来るぞ」
「奴?」
興味なさげな態度でユキが聞く。
「あなたたちも見たろう?金光騎士のモトンだ」
フウとユキは、味方が増えるのならいいのでは?といった表情でリシュルを見ている。
「奴は金光騎士にあるまじき事に選民意識が高い。他国の平民が人質になっていても、無視して力押しするぞ」
その言葉にフウたちの顔から表情が抜けた。
「急いで救出しましょう」
フウが急かす。
「そうだな。悠長な事をしている間はなくなった」
リシュルが肯く。
「幸い。犯行宣言したばかりだとすると今すぐに、攻撃されるとは思ってないだろう。我々3人が正面から向かう。あなたたちは背後に回ってくれ」
「いや、わたしとフウがいることは、連中は知っている。わたしたちも正面にいた方が、油断するはず。背後は」
そう言ってユキは、ピアとミリの肩に手をおいた。
「この子たちに任せる。奇襲にはうってつけだ」
その言葉にリシュルは瞑目した。
「戦えるのか」
「ゴブリンなら余裕で倒せます」
ピアが胸を張る。
嘘は言っていない。「10匹でも1人で」というのを省略しているが。
「よし」リシュルは決断した。
「時間もない。それでいこう」




