26 暗黒神、光の騎士に出会う その6
町に戻り、布地の買い物などを行って宿に戻る。
宿の若い女中にリシュルのことを聞いてみたら、使いの者が来て宿を引き払ったそうだ。
「お供の女の人たちが、不満そうに用意してたわ。居心地が良かったのにって」
嬉しそうに赤毛の女中が言う。綺麗とは言い難いが、愛嬌があって親しみの持てるタイプだ。
「なんか使いの人は偉そうだったなあ」
「実は、あのお姉ちゃん、すっごく偉い人だってよ」
可愛らしく言ってみる。
「なんかキンピカの騎士さまが言ってた」
おお。我ながらなんか幼児っぽい。
ピリとミアが笑っているのが解せぬが。特にピリは、尻尾をブンブンと振っている。
「キンピカの騎士さま?それって2、3日前にこの町にいらしたという、金光騎士様かな?」
「わかんなーい」
「プッ」
今度はユキが吹き出しやがった。
なんとか興味なさそうな表情を作っているが、口元が引きつっている。
「金光騎士様とお知り合いってことは、リシュル様はどこかのお嬢様ってことかな?」
赤毛の女中さんは突如、両手を握りしめて身悶えた。
「男装のお嬢様と金光騎士様かァ!クー。モえる!」
え?今、草冠の方の「もえる」を言ってたような気がするぞ。ここ異世界だよね?
というか、俺の喋ってる言語、日本語じゃないよね?
深刻な設定上の悩みを抱く。
「あたし、仕事で金光騎士様見れなかったんだけど、凄く凛々しかったんですって?」
興奮のあまりか、女中の立場を忘れてヒイに詰め寄っている。
「凛々しいのかな、アレは」
ヒイが気圧されて、フウに助けを求めている。
「あの、あまり正面からお顔を見れませんでしたから」
フウの言葉に、女中さんは「そっかー。残念」などと言いながら引き下がった。
ミーハーパワー恐るべし。
こういった反応を見る限り、リシュルと早目に縁が切れたのは運が良かったのだろう。彼女の正体が知れた後では、大変な騒ぎになっていた事だろう。
…もう手遅れじゃないよな?
「手遅れだったみたいだなぁ」
翌日、再び買い物に宿を出たところで、ため息をついた。
両手には、昨日作ったボールを持って幼児味は、バッチリだ。
ボールといっても羊の胃袋に端切れを詰めたものだが。案外重いし、形もラグビーボール風で。
「手遅れ、ですか?」
ユキが聞いて来る。
「まあね」
ざっと見回したところ7人程、頭上の球体が敵意あり表示になっている連中がいる。
俺たちが動くと、その連中もついて来る。
妙なのは、その敵意があまり強くない事だ。極薄っすらとした赤。
とても俺たちを尾行するような敵意には、思えない。
つまり。
「俺たちが直接のターゲットじゃない可能性が高い、か」
例えば、俺たちに危害を加える事が目的でなく、金銭が狙いである場合。
ここ2、3日は結構金を使っているので、可能性はある。
もう一つ有力な線は、ヒイたち女性陣が狙いである場合、
タグの表示は、あくまで俺に対する敵意の有無なので、俺がおまけである場合は、敵意は薄く表示されるだろう。
そして、最後の線は俺たちを狙うのが、あくまで手段に過ぎないパターンだ。
そういった事を念話で全員に伝えた。




