23 暗黒神、光の騎士に出会う その3
「リシュル様」
「あら、いいでしょ」
メリアの咎めるような言葉に、リシュルは笑顔で返した。
「協力をお願いするんだもの。理由くらい教えなくちゃ。子供たちを助けてるんだから、誘拐犯とは繋がりはないでしょうし」
ごめんなさい。繋がりあります。
叩き潰したという方向だけど。
「協力と言ってもな〜。分かる事は答えるけど」
俺が捕まってた事は、一切話さないけどね。
ピアとミリが捕まってから話せる事は、大してない。俺も倉庫近くで、他の子を見つけた設定なので、話せる事は、以下同文である。
例え、他の救助された子たちに聞き込みをしていたとしても、俺を見たのは暗闇の中で、しかもすぐに眠ってしまっている。最後に捕まったのが俺だとは、同定できないだろう。
「そんな早朝に、何故あんな倉庫街へ?」
子供たちを見つけたのが、夜明けの倉庫街というのは、確かに不自然かも知れない。
幼児が積極的に行きたがる場所じゃないしね。
だが俺には鉄壁の言い訳がある!
「朝の散歩」
「え?」
「この町には初めて来たんで、周れるとこは全部見たかったんだよね。倉庫って昼間行くと邪魔になりそうだからさ、朝に連れってってもらった」
どーよ、この完璧な理由(穴だらけ)。
リシュルは、しばらくジッと俺の顔を見つめていたが、やがてなにかを諦めたように溜め息をついた。
「なるほどね」
ふっ。危機は去ったゼ。
「あなたたちは、この町に住んでいるんじゃないの?」
ドキッ!!
「こ、ここから5日程のところに、村を作ったんだ」
「5日!随分と離れてるのね」
「ぼ、僕やピアたちがいるからね。大人だけだともっと早いかも」
少し遠目に言い過ぎたかも知れないので、修正する。じゃあ、案内してくれ、って言われるのが嫌だったんだけどね。
「クラキ殿は、村長の御子息なの?」
「まあ、そう言ったところ」
「なるほど。いろいろ参考になりました。どうもありがとう」
そう言ってリシュル一行は立ち上がった。
「まだ聞きたい事も出来るかも知れないけれど、いつまで滞在の予定でしょう」
「4、5日はいるかな」
「なるほど。ではいずれまた」
ニコリと微笑んで、部屋を出て行った。
「いずれまた、ねぇ」
「疑われているのでしょうか?」
ヒイが、一行の出て行った扉を睨んでいる。
「それはないよ思うけど、興味を持たれちゃった感じかなぁ」
主に俺が。
もっと幼児っぽくしておくべきだった。
態度が、こまっしゃくれたというレベルを超えていたかもしれない。
いまさらなので、前向きに誤魔化す方法を考えよう。
「とりあえず、魔法だな」
「魔法ですか?」
ユキが、そこから?といった表情だ。
「俺の魔法は、使っちゃったら、誤魔化しようがないからね」
俺が普通に魔法を使うと、漆黒の紋章が浮かび上がるのだ。
暗黒神本人と思われなくても、関係者と見られるのは間違いない。
ヒイたちの印は、普通に白く輝くんだけどなぁ。
前にやったように、紋章の大きさと出現位置を調整して隠す事も出来るけど、あれはあれで難しいのだ。
とっさの護身で使えるかどうか、自信がない。
そこで魔道具を作っておこうと思う。
あれなら紋章は浮かばない。魔法式に魔力を通すのは繊細な作業だが、紋章の調節を行うのに比べれば、鼻歌交じりでやれるレベルだ。
防御と攻撃、一種類ずつを用意しておけば、安心だろう。
「あとは、スオナーデにいる時は、亜空間収納を使わないようにしないとね」
似た魔法や魔道具はあるようだが、あまり目立たない方がいい。
「短期的に誤魔化すのは、それくらいか。あとは、拠点だよな」
帰らずの森の中で、封印された暗黒神の神殿を見つけて、そこに住んでます。とはちょっと言えない。
リシュルたちがいなくなった後も、スオナーデの人たちに不審がられたら、いろいろと差し障りがある。
「そのうち、偽の拠点を作らないとダメかな」
だんだんと大事になってきたな。
「スオナーデを含めた、ここ一帯をクラキ様が支配すればよろしいのでは?」
カル〜くヒイがいい、フウが頷いている。
「それ、絶対戦争が起こるパターンじゃん。面倒くさい事禁止」
口先だけで平和的に建国できるなら、考えなくもないが、それにしたって有能な統治者候補がいたらの話だ。
神治国家なんて、悪夢だ。主に俺の勤労意欲において。




