第20輪「三椏」
「護衛は外だ」
「……承知しました」
「フィン、いい子で待っててね」
「はい」
馴れ馴れしく腰を抱くガストン様の手を抓ってやりたい衝動を抑え、擦り寄る。
随分と華やかなもので揃えられた部屋に、私は深く息を吐き出したくなった。
「まぁ、こんなに沢山どうなさったの?」
さも感動しているかの如く感嘆を漏らす。正直、贅沢には慣れているし、異国のものにも然程興味はなかった。
それでも半年間、私の審美眼を磨いてくれたことには感謝している。逆に言えば〝それだけ〟なのだけれど。
天蓋付の寝台に並べられた各国のドレス。テーブルの上に鎮座する菓子と酒。カウチに展示される小物の数々。
普通の女なら喜んで飛びつくのだろうが、私には何の感慨もない。
「君の為に揃えたんだ! 喜んでくれたかな?」
「ええ」
「それはよか……」
「とてもつまらないわね」
満面の笑みを携え、この上ない屈辱を与える。今迄、言われたことがないだろう言葉を放ち、私は鼻で笑ってやった。
「は?」
「間抜けな顔。私、馬鹿は嫌いなのよ」
「え? は? んん?」
「聞こえてらっしゃる?」
「え、エレアノーラ様は気分が優れないのかな?」
「私、とっても元気よ?」
「なにを……」
「生憎、こういう物には興味がないのよ。貢物は小さい頃から散々されているんですもの」
「じゃ、じゃあ! なになら嬉しいんだ!? 私は君を妻にしたい!」
「あら、こんな私でも愛してくださるの?」
「勿論だ! 私は君を愛している! 当家と繋がりを持つのは、君の家だって悪くない筈だろ!?」
「そうね」
「だろ!? だから……」
「興味がないわ」
「え……」
「私は女。家を継げないことは、ご存知でしょ? お父様のことは嫌いじゃないけど、家なんてどうなっても構わないのよ」
「そ、そうなれば君は好きでもない奴と籍を入れなければいけなくなるんだぞ」
「貴族の間じゃ珍しくもない話でしょ。それに、それは貴方と結婚しても同じこと」
「どういう意味だ」
「ハッキリ言わないと分からないかしら? 私は貴方のことが好きでもなんでもない、と言ったのよ」
「じゃあ、どうしてそんな素振りを」
「恋愛ごっこを楽しみたくて。貴方だって私の美しさに目が眩んだだけで、好きなわけじゃないでしょう?」
ニッコリ笑みながら寝台に向かう。彼からのプレゼントに腰掛ければ、眉をピクリと動かしたのが分かった。
ベッドがギシリと音を立てる。勝負はココからだ。




