第6話:『沈黙の聖域』に響く、真実の絶叫。
「ははは! 消えたぞ! 忌々しい光が、すべて消えた!」
シリウス王子の狂ったような笑い声が、会場に響き渡った。
聖女エレンが掲げた漆黒の紋章から放たれた波動により、私を囲んでいた紫色の光球はすべて砕け、壁に映し出されていた外界との窓も、砂嵐のように消滅した。
会場を支配していた『全世界の視線』が、物理的に遮断されたのだ。
「リリアーヌ。これで終わりだ。証拠などどこにも残らん。今この場で貴様を処刑しても、外界には『魔女リリアーヌが暴走し、自滅した』と発表するだけのこと!」
王子が腰の剣を抜き、ぎらついた視線で私を睨む。
騎士たちは剣を収めたままだが、王子自らが手を下すというのなら、誰も止めることはできない。
しかし。
私は、絶望するどころか、そっと閉じた扇子を口元に当てて微笑んだ。
「あら。殿下。一つ、前世の……いえ、私の研究室での教訓を教えて差し上げますわ」
「何だと……?」
「情報は、一つ(メイン)の線が切れたくらいでは、完全に消すことなどできなくてよ。――冗長化、起動」
私が指をパチンと鳴らす。
すると、会場の床、柱、そして貴族たちの持つ宝飾品。それらすべての魔石が、一斉に共鳴し始めた。
音である。
映像は遮断された。しかし、空気の振動を伝える『音声魔法』の回路は、この沈黙の聖域では完全には殺しきれていなかった。
【システム:映像配信切断。代替プロトコル『全方位共鳴ラジオ放送』に切り替え。】
「殿下、映像が見えなくなっても、『声』は届いていますわ。今、王都中の人々は、あなたのその『今この場で処刑して証拠を隠滅する』という醜い絶叫を、一言一句漏らさず耳にしていますわよ」
「な……っ!? 馬鹿な、そんな機能があるはずが……!」
その時。会場の外から、地鳴りのような音が聞こえてきた。
それは、学園の正門前に集まった民衆たちの、怒りのシュプレヒコールだった。
『リリアーヌ様を殺すな!』
『卑怯者の王子を引きずり出せ!』
『聖女は偽物だ!』
物理的な壁さえも震わせる、数万人の怒号。
配信という魔法が、ついに『物理的な革命』の引き金を引いたのだ。
「ひっ、ひいいいっ! エレン、何とかしろ! この声を止めろ!」
王子がエレンの肩を掴んで揺さぶる。
しかし、エレンの顔はすでに土気色だった。
彼女が掲げていた漆黒の紋章は、リリアーヌの魔力……投げ銭によって強化された圧倒的な『共感魔力』に耐えきれず、パキパキと音を立てて砕け散っていく。
「……無理、ですわ。もう、この世界そのものが、あの方の味方をしてしまっている……」
崩れ落ちる聖女。
立ち尽くす王子。
そして、静寂の戻った会場に、再び紫色の光が灯る。
【システム:映像配信復帰。視聴者数 300,000人突破。世界ランキング:502位】
【通知:この放送は、隣国の王室関係者も視聴を開始しました。】
もはや、国内の問題だけでは済まなくなった。
「さて、殿下。舞台は整いましたわ。……これ以上醜態を晒す前に、その剣を捨ててお跪きになってはいかがかしら?」
その時。
パーティー会場の奥、招待されていなかったはずの『黒い法衣』を纏った男が、ゆっくりと拍手をしながら姿を現した。
「実に見事だ、公爵令嬢。だが、あまりに『人気』を集めすぎるのは……教会にとっては、少々不都合でしてね」
王子という駒を使い捨て、真の敵――世界の情報を支配しようとする『教会』の影が、私のカメラの前に踊り出た。
第6話、お読みいただきありがとうございました!
本作『全世界配信中の断罪、ありがとうございます!』、放送事故からの逆転回でしたわ。
「映像がダメなら音声だ」というラジオへの切り替え……情報の「冗長化」は、前世での戦いを経たリリアーヌの真骨頂ですわね。民衆の怒号が学園を揺らすシーン、皆様もカタルシスを感じていただけたでしょうか!
次回、第7話「聖女の盾、教会の矛。」。
教会の介入をリリアーヌはどう「ネタ」に変え、視聴率を稼ぐのか!?宗教という名の巨大権力、その腐敗を全世界に実況して差し上げますわ!
もし「リリアーヌの機転にワクワクした!」と思っていただけたら、最後にチャンネル登録や評価(いいね・応援スパチャ)をお願いいたしますわ。
皆様の声(チャンネル登録)が、リリアーヌの次の配信を加速させる、最強の魔力供給になりますのよ!




