第4話:真実は、リプレイの中に。
「リ、リプレイ検証……? 何を言っている、リリアーヌ! 魔法で変えられない過去を弄ぶつもりか!」
シリウス王子の叫びが会場に響く。
だが、私の指先が空中で魔法陣をなぞると、四方の壁に投影された映像が――シュルシュルと、奇妙な音を立てて逆回転を始めた。
「殿下、時間は巻き戻せませんが、『映像』はいくらでも遡れますのよ。私がこの配信魔石を起動させたのは、実は今朝、学園に登校した瞬間からですわ」
「なっ……なんだと!?」
映像は急速に巻き戻り、数時間前の出来事を鮮明に映し出し始めた。
学園の西塔、あの長い石造りの階段。
そこには、私と、エレンの二人が立っていた。
『あ、映った……!』
『おい見ろ、リリアーヌ様、めちゃくちゃ不機嫌そうな顔してるぞ』
『やっぱり突き落としたのか?』
『待て……エレンのやつ、今リリアーヌ様の袖を自分で掴んで引っ張らなかったか?』
チャット欄には不安げな言葉が並ぶ。
映像の中の私は、確かにエレンに向かって何かを言っているようだった。
「さあ、殿下の主張によれば、私がここで聖女様に罵声を浴びせ、突き飛ばした……とのことでしたわね? ――スロー再生、開始」
私の合図で、映像の速度が極端に落ちる。
エレンが足を滑らせ、後ろに倒れようとする瞬間。
そこには、私が彼女を突き飛ばした形跡など……微塵もなかった。
むしろ。
エレン自ら、足首を不自然にひねり、私の腕をわざと掴んでから――自分から背後へ、ダイブしていたのだ。
『え……!?』
『今、自分で飛んだ……よな?』
『【鑑定完了】自作自演率 100%www 聖女様の跳躍力すげーな!』
『待て、スローでもう一回見せろ! リリアーヌ様の手、エレンの服に触れてもいないぞ!』
会場にどよめきが広がる。
私はさらに、操作パネル(意識)を一点に集中させた。
「皆様、見てくださいまし。エレン様が落下を始めた直後の、その『お顔』を。……拡大!」
石段を落ちていくエレンの顔が、巨大な壁面にアップで映し出される。
恐怖の表情であるはずのそれは。
私を見上げながら、獲物を罠にハメた安堵と――薄気味悪い『勝ち誇った笑み』を浮かべていた。
「ひっ……!」
エレンがパーティー会場の床にへたり込む。
彼女の美しい顔が、今、壁に映る数時間前の自分の『邪悪な笑顔』と対比される。
『うっわ……暗黒聖女じゃん』
『この顔、子供が見たらトラウマになるぞ……』
『王子、こんな女のためにリリアーヌ様を断罪しようとしたのか? 正気かよ』
「そんな……嘘……魔法で……映像を捏造しているんですわ! シリウス様、信じて!」
「そ、そうだ! リリアーヌ、貴様は魔女だ! 映像を書き換えるなど……っ」
「捏造、ですわね? でしたら殿下。こちらのログ(記録)をご覧くださいな」
私はもう一つの水晶板を出現させた。
そこには、魔法のパケット……もとい、魔力波形の連続性が証明されていた。
「この魔力記録には、一切の断絶がありませんわ。もし捏造していれば、魔力の波がここで大きく跳ねるはずですもの。――ねえ、そこにいらっしゃる学園の教官様? 魔力鑑定の専門家として、この映像に『繋ぎ目』があるかどうか……確認していただけません?」
指名された教官が、真っ青な顔で壁の魔力波形を見上げた。
彼は王家に従いたい一心だったが、この全世界に配信されている状況で、専門家としてのプライドを捨てて嘘をつく勇気はなかった。
「……ま、魔力の連続性に、一切の乱れはありません。この映像は……混じり気なしの、真実です」
王子の、そしてエレンの「無謬の正義」が、ガラス細工のように音を立てて砕け散った。
【システム:視聴者数 150,000人突破。世界ランキング:1,200位】
【通知:大衆の『疑念』が『確信』へと変わりました。聖女エレンの信仰値が、25%減少。】
「さて……次は、殿下がこの嘘を『知っていて共謀したのか』、あるいは『まんまと騙された無能なのか』を、検証していくべきかしら?」
私は、震えるシリウス王子の鼻先に、空中に浮かぶ『カメラ』をグイ、と突きつけた。
第4話、お読みいただきありがとうございました!
本作『完璧な断罪をありがとうございます。撮影準備はよろしくて?』、リプレイ検証、ついに決まりましたわね!
スローモーションで自分の嘘を全世界へ放送される……これほど精神的にくる処刑はありませんわ。聖女様の「勝ち誇りスマイル」がドアップになった時の、会場の冷え込みようといったら……まさに「神回」の予感ですわね。
次回、第5話「騎士の誇りか、画面の評価か。」。
この状況を見て「王家にもう勝ち目はない」と判断した近衛騎士たちが、面白い行動に出ますわ。裏切りのエンターテインメント、お見逃しなく!
もし「このリプレイ検証、スカッとした!」と思っていただけたら、最後にチャンネル登録や評価(いいね・応援スパチャ)をお願いいたしますわ。
皆様の高評価が、リリアーヌの次の配信をさらに豪華に彩る「スポンサー料金」になりますのよ!




