第2話:「いいね」の数だけ、あなたの罪を数えましょう
会場中が、理解の及ばない事態にパニックを起こしていた。
ある者は壁に映る自分たちの姿に驚愕し、ある者は「魔女の呪いだ」と叫んで逃げ出そうとする。
しかし、一番混乱しているのは間違いなく、目の前の金ピカな王子様だった。
「リリアーヌ……! この光を消せ! 不敬だぞ! 誰か、この女を早く捕まえろと言っている!」
シリウス王子の命令に従い、騎士たちがギラリと光る剣を手に一歩踏み出す。
だが、彼らの足はすぐに止まった。
会場の壁に投影された巨大な映像の中で、自分たちが「麗しき令嬢を囲む卑怯な追っ手」として、あまりに醜く、そして繊細に映し出されていたからだ。
「動かない方がいいですわよ。この映像は今、王都全域の広場にある水晶板に投影されていますの。騎士様方が無抵抗な令嬢に暴力を振るえば、明日の朝には『王位継承者が気に入らない女を公衆の面前でなぶり殺した』というニュースが、世界を駆け巡りますわ」
「なっ……」
「殿下、落ち着いて。リリアーヌ様、こんな魔法で脅すなんて、やっぱりあなたは恐ろしい魔女……っ」
聖女エレンが、すかさず王子の腕にしがみついて涙を流す。
守ってあげたくなるような、弱々しい仕草。
その瞬間、私は密かに操作パネル(脳内の意識)をいじった。
(スイッチ、今! 聖女の顔を斜め下からズーム。照明を少しだけ操作して、鼻の下の産毛すら見えるくらいシャープに映して!)
会場に浮かぶ光球の一つが、エレンの表情を冷徹に捉える。
その瞬間、モニターの端に紫色の文字が流れ始めた。
『あれ……聖女様、泣いてるけど、なんか目が笑ってない?』
『今、王子に抱きついた時に、リリアーヌ様をチラッと見てニヤけなかったか?』
『【鑑定:嘘 80%】これ,聖女じゃなくて詐欺師だろwww』
『この令嬢、凛としててカッコいいな。本当に悪役か? 誰か教えろ』
それは、私の開発した『思念共有掲示板』。
水晶板の向こう側にいる視聴者たちの純粋な感想が、リアルタイムで会場に流れてくる。
「リ、リリアーヌ! この壁に流れる不吉な文字は何だ! 誰が書いている!」
「皆様の『お声』ですわ、殿下。お聞きになりまして? 『王子の鼻の穴が膨らんでいて、怒ったカエルみたい』だそうですわよ。あ、あら失礼、私が言ったわけではありませんわ」
「な、……なんだとォ!?」
シリウス王子の顔が真っ赤に染まり、怒りで震える。
その瞬間――。
【システム:視聴者数 100,000人突破。世界ランキング:1,502位】
【評価:王家の『値打ち(株価)』が暴落。現在のステータス、0.82リセット。】
「さあ殿下、続けてくださいまし。私の『罪』を、皆様の前で一つ残らず読み上げてくださいな。あ、ご安心ください。嘘をついた瞬間にチャット欄が『炎上』し、あなたの支持率は石のように転落いたしますから」
私は優雅に扇子を仰ぎ、獲物を追い詰めた猛獣のように微笑んだ。
視聴率は、まだ上がり続けている。
「エレン、次はあなたの番ですわ。階段から突き落とされた時のお話、もっと『詳しく』お聞かせいただけます? ――ズームアップ、準備して」
第2話、お読みいただきありがとうございました!
本作『完璧な断罪をありがとうございます。撮影準備はよろしくて?』、コメント欄というなの民衆の声こそが、リリアーヌにとって最大の武器ですわ。
王子の醜態も、全世界に配信されれば一級品のエンターテインメントに早変わり。
「カエルみたい」と言われた彼の支持率(時価総額)は、果たしてどこまで下がり続けるのか……。リリ様と一緒に見届けましょう。
次回、第3話「投げ銭の輝きは、救いの光」。
ついに例の「高額投げ銭」の音が、厳かな学園の空気を物理的に震わせますわ!お楽しみに!
もし「この演出、スカッとした!」と思っていただけたら、最後にチャンネル登録や評価(いいね・応援スパチャ)をお願いいたしますわ。
皆様の「いいね」が、リリアーヌの次の配信を加速させる、最高のブーストになりますのよ!




