第14話:騎士と令嬢の、新しい契約。
狂乱のパーティーがようやく終わりを告げ、夜風が吹き抜ける学園のテラス。
私は、さきほどまで数百万人の視線を集めていた魔石を、そっとドレスのポケットに収めた。配信を止めた直後の静寂は、まるですべてが夢だったのではないかと思わせるほどに深い。
「……お疲れ様でした。リリアーヌ様」
背後から歩み寄ってきたのは、月光に銀髪を輝かせたカイルだった。
彼は私の数歩手前で足を止め、いつもの騎士としての礼を崩さずに、けれどその瞳には、今までに見せたことのない複雑な色が浮かんでいた。
彼は私の数歩手前で足を止め、いつもの騎士としての礼を崩さずに、けれどその瞳には、騎士の忠誠心とは明らかに違う、けれどそれ以上に深く、熱い色が宿っていた。
「カイル。……あなたには、感謝してもしきれませんわ。あの100万ガルドのスパチャ、そしてリセット・フィルター。……あなた、何者なのですか?」
私は彼を真っ向から見据えた。
単なる騎士に、これほどの財力と、配信魔法への深い知識があるはずがない。
カイルは、ふっと自嘲気味に口角を上げた。
「……かつて、あなたのいた世界で。私は、ただの一人の視聴者でした」
「え……?」
「あなたが、あの冷たい都会のビルの屋上から、最後の配信を行っていた時……。誰もいない暗闇に向かって、たった一人で『この世界を、情報の愛で埋め尽くしてやる』と叫んでいた横顔を……。私は、画面の向こう側の小さな部屋から、祈るように見つめていた者の一人です」
衝撃が走る。
カイルは……私の前世での、視聴者?
あの時、誰にも相手にされず、孤独な死を目前にしていた私の声を、本当に聞いてくれていた人?
「あなたの声が途切れた時、私の世界も止まりました。……その後、私も事故で命を落とし、気づけばこの世界で騎士の家系に生まれていました。……ですが、私の記憶には、あなたのあの美しい『意志』だけが、唯一の色彩として残っていたのです」
カイルは……ずっと、私を探していた?
「私はこの世界で、あなたが転生してくるのを……そして、あなたの才能が再び花開く瞬間を、十年以上、ずっと待っていました。公爵家に入り込んだのも、すべてはあなたを守り、あなたが再び全世界を熱狂させるための『ステージ』を用意するためです」
「カイル……」
「先ほどの100万ガルドは、私がこの世界で、騎士団の給与や商売で死に物狂いで貯め、魔力に変換し続けてきた……私の人生そのものです。……ようやく、あなたに届けることができた」
カイルがゆっくりと私の前に膝を突き、その右手を捧げる。
「リリアーヌ様。私は、あなたの『騎士』ではありません。……私は、あなたの『生涯最初の、そして最後の一人まで残り続ける熱狂的なファン(保護者)』です。……これからのあなたの物語を、最前列で見守り、守り抜く権利を、いただけますか?」
彼の言葉に、私は不覚にも視界が滲むのを感じた。
前世で、届かないと思っていた私の孤独な叫び。それは、次元も時間も超えて、この男に届き、彼をここまで動かしていた。
「……ええ。拒否する理由など、どこにもございませんわ」
私は、彼の手に自分の手を重ねた。
これは、主従の誓いではない。
孤独な配信者と、その魂を救い上げた唯一の聴衆による、新しい世界を構築するための『共犯の契約』。
「さあ、カイル。学園編(シーズン1)は、これで完結ですわ。……明日からは、もっと広い世界を、私たちのカメラに収めに行きませんこと?」
「御意、我がスター。……全人類の視線を集めて、あなたを世界一の輝きの中へ導きましょう」
第14話、お読みいただきありがとうございました!
第一部完結直前にして、カイルの正体が判明する衝撃回でしたわ!
カイルはただの騎士ではなく、リリアーヌの前世での「ガチ勢」とも言える最古参ファンだったのですわ。孤独な死を遂げたはずのリリアーヌ……けれど、彼女の魂は決して一人ではありませんでしたの。異世界で最強の味方となった「元リスナー」と共に、物語はさらなる高み(バズ)へ向かいますわよ!
次回、第15話「次なる放送は、世界の果てから。」。
第一部「学園断罪ショー編」、ついに大団円のフィナーレですわ!リリアーヌが学園をどう「卒業」し、世界へと飛び出していくのか……その瞬間を、ぜひ最前列で見届けてくださいまし!
もし「カイルの告白にグッときた!」と思っていただけたら、最後にチャンネル登録や評価(いいね・最古参認定スパチャ)をお願いいたしますわ。
皆様の応援が、リリアーヌの、そして私たちの「共犯関係」をさらに深める最強のリンクになりますのよ!




