第13話:投げ銭だけで、思い出を買い取りましたわ。
国王の震える手によって署名された『土地譲渡契約書』を手に、私は卒業パーティー会場の壇上から、集まったすべての人々――そしてカメラの向こう側の視聴者たちを見渡した。
「皆様。本日の『断罪ショー』、お楽しみいただけましたかしら?」
私の問いかけに、王都中から地響きのような大歓声が沸き起こった。
チャット欄には『最高だった!』『伝説を見たぞ!』という文字が光速で流れ、そのたびに私の魔石が心地よく脈動する。
だが、宴はまだ続いていた。
「この学園の西塔、および私の生家……ヴァランシエール公爵家の旧領。これらは王家に没収されておりましたが、今この瞬間、皆様からの温かな『スパチャ』によって、一括で購入させていただきましたわ」
会場の貴族たちが息を呑む。
土地を「買う」。それも、一令嬢が、これほどの短時間で蓄積した「スパチャ」だけで。
それはこの異世界の常識では計り知れない、情報の価値が物理的な資産を凌駕した瞬間だった。
「リリアーヌ嬢……本気か? その額は、我が国の数年分の税収に匹敵するのだぞ」
国王アルフォンスが、呆然とした様子で私を見る。
私は、魔石の操作画面に浮かぶ『総資産:782,000,000ガルド』という数字を軽くタップした。
「あら。足りませんでしたかしら? でしたら、今この瞬間に『チャンネル登録者の皆様』に向けて、追加のクラウドファンディングを募ってもよろしくてよ?」
「……いや、結構だ。それ以上、余の国の経済をかき回さないでくれ」
国王は力なく笑い、私の提示した契約を全面的に受け入れた。
これにより、学園の一部は今後、私の『放送本部』として治外法権が認められることになる。もはや王命でさえ、この配信の光を消すことはできない。
私は、会場の隅で見守っていたカイルに視線を送った。
彼は満足そうに頷き、静かに私の元へと歩み寄る。
「……リリアーヌ様。これで、あなたを縛る鎖はすべて消えました」
「ええ。ですがカイル。鎖が消えたなら……次は、この翼でどこへ向かうべきかしら?」
私は、砕け散った聖女の紋章の欠片を見つめた。
エレンが使っていた魔物との契約具。その背後にいた教会の影。
そして、私の脳内に語りかけてきた謎の『運営』。
世界は私が思っていたよりもずっと広く、そして「作られた場所」なのかもしれない。
【通知:第1部『完結』まで、あと 2話。】
【新目標:未踏領域への『ロケ放送』を解禁。】
(ふふ。ただの令嬢生活に戻るなんて、もう退屈すぎて耐えられませんわ)
私は、スパチャで輝きを増した魔石を高く掲げた。
これから始まるのは、復讐劇ではない。
この歪んだ世界を、私の配信で丸ごと『面白く』書き換える物語なのだ。
第13話、お読みいただきありがとうございました!
ついに「学園の一部を買い取る」という規格外の報復が完了しましたわ!
自分を捨てたはずの場所を、自らの領土に変えてしまう……これ以上の「ざまぁ」はありませんわね。そして、さりげなく示唆される謎の「運営」や世界の真実。リリアーヌの野望は、ここからさらに加速していきますのよ。
次回、第14話「騎士と令嬢の、新しい契約。」。
ずっと隣で支えてくれた騎士カイルとの、本当の「契約」について。リリアーヌの心の内が少しだけ見れるかもしれませんわね。
もし「土地買い取り、カッコよかった!」と思っていただけたら、最後にチャンネル登録や評価(いいね・応援スパチャ)をお願いいたしますわ。
皆様の評価という名の「固定スポンサー」が、第1部完結へ向けたリリアーヌの機材をアップグレードしますのよ!




