第11話:血税(おカネ)の行方、ライブ追及。
「やめろ……リリアーヌ! そこから離れろ! それは王家の、国家の機密だぞ!」
シリウス王子が、恐怖と怒りで声を掠れさせながら私を制止しようとする。
だが、私の横には不敵に微笑むカイルが、そして背後には数千人の怒れる民衆が控えている。もはや彼に、私を物理的に止める力など残っていない。
私は、会場の隅に置かれた重厚な黒檀の机――王子の執務机を指し示した。
「秘匿魔法も、配信の前では無防備な裸と同義ですわ。……皆様、今からお見せするのは、この輝かしい王宮の裏側に隠された、もっとも『汚らわしい記録』ですの」
私が指先で空間を弾くと、机の引き出しにかけられた何重もの魔力錠が、パキパキという軽快な音とともに破壊された。
宙に浮かび上がったのは、一冊の古い、けれど入念に書き込まれた『裏帳簿』。
「映像投影。……全ページ、文字認識(OCR)開始ですわ!」
壁面の巨大な水晶板が、帳簿の内容を鮮明に映し出し、重要な項目を瞬時に赤くハイライトしていく。
『……おい。これ、去年の大飢饉の時の「救済支援金」の項目じゃないか?』
『「聖女エレンの装飾品代」として全額流用……!? 白金貨500枚!?』
『こっちは、国境を守る兵士たちの「装備更新費」。それが……王子の「裏カジノの負債補填」に消えてるぞ!』
次々と暴かれる、血の通わない数字の羅列。
学園に通う貴族の子弟たちも、自分たちの親が納めた税金や、領民から吸い上げた金が、これほどまでに私的な欲望のために浪費されていた事実に、絶句し、震え始めた。
「シリウス殿下。あなたがエレン様のために買い与えたあの『魅了のペンダント』。その代金は、昨冬に北部の寒村で餓死した数百人の民の命の重さ……そのものですわ」
「うぐ……あ、ああ……っ」
王子はもはや言葉を紡げず、床に這いつくばる。
エレンもまた、自分の贅沢がどのような犠牲の上に成り立っていたかを世界中に知られ、人々の冷酷な「殺意」に晒されていた。
【通知:視聴者の怒りが臨界点に達しました。王都全域で暴動(祭り)が発生。】
【通知:スパチャ総額が 500,000,000ガルドを突破。】
「皆様。私は、この金を私利私欲のために使うつもりはありませんわ。……カイル、準備は?」
「ああ。すでに各ギルドの代表者、および商会連合に通信を繋いでいる。このスパチャは、今この瞬間から、被害を受けた領民たちの『救済金』として送金される」
情報の力で、富を再分配する。
前世のシステムを異世界に強引に持ち込んだ、私だけの『ざまぁ』の完成形。
「さて、殿下。王家が破産した今、あなたを守る憲兵も、食事を運ぶメイドも、誰もあなたに従う義理はありませんわ。……おや、ようやく『真打』のご登場ですわね」
会場の喧騒を切り裂くように、重厚なトランペットの音が鳴り響いた。
第11話、お読みいただきありがとうございました!
今回は「金(裏帳簿)」の暴露回でしたわ。
感情的な解決も良いですが、具体的な数字での追い詰めは逃げ場がなくて最も残酷ですわね。スパチャをそのまま「民への救済金」としてリアルタイム送金するリリアーヌ……資本主義の申し子のような立ち振る舞い、お楽しみいただけましたでしょうか!
次回、第12話「玉座からの宣告、放送は止まらない。」。
ついに国王陛下が登場し、王家としての最後の審判が下されますわ。王子の末路、そしてリリアーヌの更なる野望をお見逃しなく!
もし「リリアーヌの経済ざまぁにスカッとした!」と思っていただけたら、最後にチャンネル登録や評価(いいね・応援スパチャ)をお願いいたしますわ。
皆様の応援という名の「救済資金」が、物語を動かす最強のエネルギーになりますのよ!




