第02話 竜人生の始まり
「アモン!川の水を汲んできてちょうだい!」
家の外からお母さんが俺を呼ぶ声が聞こえてくる。まったく、2歳になってまだ半年だというのに人使いが荒い母親だ。というのも俺が2歳になってすぐの事、興味本位で家にあった漬物石を持ち上げようとしたら、両手で軽々と持ち上げてしまったせいなんだけどね…
そしたら、「この子には、戦士の才能があるんだわぁ!」とお母さんがお手伝いと称していろいろ頼み事をするようになった。お父さんが森へ出掛けている間、家は俺とお母さんの二人だけなので、俺はお母さんの“手伝い”をするようになったというわけだ。
手足の感覚があるのは幸いだったが、今回は感覚がある分、動かせないのがもどかしかった。やっとのこと半年でハイハイ、更に1年かけてようやくよちよち歩きで歩けるようになった。初めて両足で立ってお母さんのもとまで行った際は、両親とも大喜びして俺を褒めてくれた。俺としても数年ぶりに文字通り意味で地に足を付けて歩けたというのは、自分でも感動した良い思い出だ。
それにしても筋力が並外れていたとはいえ、2歳の子供に重労働をさせているのが当然の価値観を見るに、この世界の教育観の違い、延いては経済の労働者不足が窺えるな。両親もそういった環境で育ってきたのだろう。まぁ、俺としてはお母さんに頼られるのは嬉しいし、少しでも動いて早く体力を付けたいから良いんだけどね。
「汲んできたよーお母さん!…よいしょっと。次は何すればいいー?」
家の前で洗濯物を干しているお母さんに俺は柵越しに話しかけた。
「ありがとうー!水はそこに置いて良いから、次は牛に餌をあげてきてちょうだーい!それと畑から野菜も採ってきてー」
「わかったー」
出入口の前に水がたっぷりと入った木製バケツを置くと、俺は足早に牧場へと向かった。牧場と言っても柵で囲われた平地の中に牛を数頭飼っているだけだ。なぜこんな小さな平地で牛を飼えているのかというと、お母さんが使う魔法のおかげだ。一日に一度、平地に植物を成長促進させる魔法をかけることで、昨日食べ尽くしたはずの草原が翌朝には元通りというわけだ!
こういう現実離れした光景を見ると、本当に異世界に来たんだなぁと実感する。ほんと魔法様々だ。
それでも餌が不足しないように、備蓄してある干し草を追加で与えるのが俺の仕事だ。
「みんな今日も元気だな!しっかり食べて大きくなるんだぞー!」
牛たちは俺の言葉に答えるかのように「モーモー」と鳴き声を上げた。
俺は、牛の餌やりと体調の確認を終えると家の南側にある畑に向かう。ここは牧場と比べて非常に広い、なんせ魔法おかげで植物の生長が速いから畑にはいろいろな野菜が植えてある。
ジャガイモ・カブ・キャベツ・豆・玉ねぎ・ニンジン・大根などだ。うちの主食は基本的にジャガイモで、残念なことに米や小麦といった穀物は面積の割に手間がかかるので栽培はしていない。穀物自体はあるそうなので、いつか食べてみたいものだ。
生っていた野菜を採り終えると俺はいつも服と身体を土だらけにして家へと帰る。そして毎回――
「こらっ!アモン!また土だらけで帰ってきて!いつも家の前で土を払ってから来なさいと言ってるでしょ!」
「えへへ…」
「せっかくの綺麗な顔が台無しよ、上の服は脱いで早く外の水で洗ってらっしゃい」
「うん、わかった!」
そう言って外で身体を洗うまでがいつもの流れだ。
わざと土で汚しているわけではないのだが、無意識に母親から構ってもらえるのが嬉しいのだろう。どうしても汚して帰らずにはいられない。それを知ってか知らずかお母さんも毎日野菜の収穫は俺に頼んでくれる。忘れていた親子の愛情を享受しながら、俺は今日も水で濡らした布で顔を拭う。
「おーい!アモン!今日もやってるなぁ、またお母さんにどやされただろう?」
こっちに向かって近づいてくる声の主に顔を向けると、鹿を一匹狩って戻ってきた父の姿が見えた。腰に差した短剣一本で大人の鹿を狩るのだから、お父さんの身体能力も並外れていると思う。
一度どうやって鹿を狩っているのか聞いてみると、お父さんは仙法のおかげだと言う。
仙法。
体から放つオーラ(生命体の生命力そのもの)を操って使う技術なんだとか。魔法と違い学んで身に付けられるものではないらしく、その者の鍛練のみで習得することができるようだ。
仙法を使いすぎると、体力が切れて最悪、気絶してしまうらしい。
強者からすると強い魔法やスキルを持つ相手より、仙法で攻め立てられる方が相手の魔那の流れを読みづらいから非常に厄介とのこと。
魔那ってなんだ?と疑問に思っていると父に代わってパハドが教えてくれた。
「魔那ってのはな、魔物や魔法の基になる物質だ。人間は、人間ではない異形の存在を魔物、人間と変わらない知能と知識、言語能力、文化を持つ魔物を魔人と呼んでいるが、魔那を使って魔法やスキルを行使する点においては、人間も魔物もそんなに変わらないな。唯一違うのは、人間は生きるのに魔那を必要としない点だ。魔物が魔那の薄い場所に行くと酸素不足に似た症状を起こして死ぬのに対し、人間には症状が非常に弱い。酸欠みたいになる程度だ。大気中から魔那を取り込めないのだから、魔那を使いすぎて死ぬことはあるがな。その魔那不足の代わりかのように人間には、魔那中毒がある。魔那が濃すぎる場所にしばらくいると魂が魔那を処理しきれなくなって、魂が崩壊する。魔物は普段から物理的な肉体に魔那を保有しているから魔那への耐性が強いのさ。まぁ弱い魔物はその限りじゃないがなぁ」
この時のパハドは、普段にも増してめちゃくちゃ饒舌だった。よっぽど詳しいのか、聞いてもいないことをペラペラと喋ってくれた。
まぁ俺としては、この世界の事をいろいろ知れるからノープロブレムだ。
「(じゃあ、スキルってのは?)」
「スキルは、生命体が持っている天性の才能みたいなもんだな。魔法もスキルも強さによって段階や種類があるが…、とにかくスキルは、個人個人で能力が全然違うから切り札になることが多い。これは、その者の成長によって増えたり、統合されて進化したりすることがあるぞ。お前にもいつかスキルが身に付く日がくるかもな!」
と言った感じで、パハドの長い話のせいでやっと仙法の話に戻ってきた。聞いたのは俺なんだけどね…
仙法には主に4つの種類があるらしい。
身体能力を向上させる “仙闘法”、オーラを隠す“仙隠法”、オーラを感知する“仙知法”、武器等を強化する“仙付法”の4つ。各種それぞれに上位段階や派生があるようで、それらを含めるともっと多いのだとか。
実際に今日、お父さんが鹿を仕留めたのは、仙闘法と仙隠法の併用だ。
ちなみにこの併用を仙暗法という。
「うん!今日はたくさん野菜が採れたんだよ!」
「そうか~偉いぞぉアモン!今日もお母さんのお手伝いしてたんだなぁ、女性を助ける男は最高の紳士なんだぞー」
お父さんは、泥の付いた俺の頭を躊躇うことなく撫でてくれる。
父親に頭を撫でられる思い出なんて入院してからは無かったし、入院前の記憶はよく思い出せないから不思議と顔がほころんでしまう。
お父さんが帰ってきたことに気づいたのか、家の中からお母さんが出てきた。
「あまりこの子を甘やかしてはいけませんよ?あなたが甘やかすからアモンが毎日服を汚して帰るんですから」
「元気な証拠でいいじゃないか!アモンはお母さんのお役に立ちたいんだもんなぁ~」
「うん!」
俺に甘いのは、正直どっちもどっちだと思うのだがここは元気に返事をしておいた。
二人が微笑み合っていると、お母さんが表情を一変させて唐突にお父さんの右腕を掴んだ。
「あなた、これどうしたの!?怪我してるじゃない!」
「あぁ、鹿にとどめを刺したところで角で反撃されてしまってね。俺ももう年かな…はっはっはっ!」
「何言ってるの、まだまだ元気でいてもらわないと困るわ。いいからちゃんと見せて」
お母さんは左手でお父さんの右腕を支えながら、右手を患部に重ねると魔法を唱えた。
「創傷完治」
「おぉ!相変わらずお母さんの回復魔法はすごいなぁ!傷跡も無くてきれいさっぱり元通りだ!流石は聖都の聖女様だな」
傷が治るとお父さんは、右腕をぐるぐると回して調子を確かめている。
回復魔法なんてものもあるのか、と俺も驚いた。本当にこの世界は、初めて見るものばかりだ。
お父さんに褒められたら少し恥ずかしそうにしてお母さんは顔を赤らめている。
「もう、止めてください…この程度、大したことではありませんわ。“聖女”なんてもう昔の話です。そんなことより二人とも早く体を洗ってきなさい!朝ごはんの支度はもう終わってるんですから!」
「「はーい!」」
お母さんはそそくさと家に入ってしまった。
父曰く、お母さんは照れると昔聖都で人々の傷を癒す聖女として活躍していた時代の話し方に戻ってしまうのだそうだ。それがお父さんからすると可愛いから、たまにからかって褒めているのだとか。
自分の子供にのろけ話をするなよ、とツッコんでしまいそうになったのは言うまでもない。
「そうだ、アモン。お父さんと背中を洗いっこしよう。」
「うん!」
お父さんの背中を拭くのもこれで何回目になるか。お母さんもそうだが、俺がまだ2歳なのもあって、二人はよく俺に構ってくれる。3人暮らしで頼れる隣人もいない自給自足じゃあ、話ができる相手も二人だけになるのだから仕方ない。だが二人のこの構いようは、まるで高齢出産で産んだ老夫婦のようだ。
「今日は鹿が捕れたから、夕飯は鹿肉と野菜のスープだな」
「本当!?やったー!」
夕食を作るのはいつもお父さんで、前世の現代社会では働きに出ている父親が家で母親の振舞う夕食を家族で食べる、というのが俺のイメージだったが、ここでは狩猟と夕食、家の掃除、たまに家の周りに魔物が出ると見張り番をお父さんが担当している。
余談だが俺も魔物を初めて見た時は度肝を抜かれた。四つ目に角の生えたライオンのような肉食獣、ラヴィという魔物らしい。
あんな狂暴そうな魔物もお父さんを見るや否や鋭い四つ目で威嚇しつつも静かに森の中へ消えていった。
平然と玄関先で魔物たちに、ここに入ったら殺すと言わんばかりにオーラを放つ父を見て、俺もあんな風になりたいと素直に尊敬していた。
そんな歴戦の戦士のような風格を漂わせるお父さんが卒なく家事をこなす姿を見る度に、あぁ…一人暮らしが長かったのかなぁ?と邪推している。
まぁなんにせよ、こんなに強い父親が俺たちを守ってくれているのは頼もしい限りだ。
「いつまで身体洗ってるのー?朝ご飯冷めちゃうわよー!」
「「はーい!」」
*
朝食を終え、俺は食べ終えた食器を洗い場に移し、溜め水の入った大樽の蛇口を捻る。勢いよく流れる水と布、そこに灰を少し使って皿洗いを始める。皿洗い一つとっても俺にとっては経験の少ないことなのでとても楽しいのだ。
何よりこの後に待っていることを考えると楽しみで仕方ない。一日の中で最も楽しい時間だ。
俺は逸る気持ち抑えながら、丁寧に皿を洗う。前世と違いここにある食器は全て木製なのでカビが生えると面倒だ。臭いも付きやすいから貴重な水でもここは贅沢に使う。
皿洗いが済んでもそれだけでは終わらない。一つ一つ空拭きをしてお母さんのチェックが入る。全ての食器で合格がもらえて初めて解放されるのだ。
皿洗い自体は楽しいのだが、この厳しいチェックは堪えるものがある。
聖都の厳しい教えの下で暮らしていた母のこだわりなのだとか。
最後の一枚に合格が入ると、俺はお父さんのいる庭へ駆け出した。
「お父さーん!皿洗い終わったよー、今日は何を教えてくれるの?」
「よーし!今日は、昨日教えた魔法と剣術への応用だ」
そう!戦闘訓練である!
これが毎日楽しくてしょうがない。健康で万全な身体を思う存分動かせるというのは、至上の喜びに他ならないのだ!一応は戦闘訓練という形だが、ここで出来る遊びと言えばこれくらいのものだ。
そして、汗だくで息絶え絶えになるまで訓練を終えた時が一番生を実感する。自分一人だけで遊んでいては、この感覚は味わえなかっただろう。
誰かと同じ時間を共有することがこんなにも素晴らしいことなのだと今の両親は思い出させてくれたのだ。
*
…目が覚めると、俺はベッドの上で仰向けに寝転んでいた。何があったのか上手く思い出せないが、確か遊び疲れてそのままベッドに入って寝てしまったような気がする。家の窓から入ってくる薄い橙色の日差しからして、もう夕方なのだろう。
「うぅ…頭痛い」
頭の2カ所が部分的に痛む。何かが中から飛び出してきそうなくらい痛い。俺は痛む箇所を右手で押さえるように撫でてみる。すると、掌と水平だったはずの頭の一部から固く小さい何かが突き出していた。
それだけじゃない、右手の感触がおかしい。頭から伝わる手の感触、これは…なんだ?
俺は、咄嗟に右手を顔の前に出した。
「何だ…これ?」
赤い深紅の鎧のような鱗が、指先から右肩までを全て覆い、爪は黒く変色し鋭く伸びている。
俺は、すぐさまベッドから飛び起き、家を飛び出していた。向かう先は、今朝水を汲みに行った川だ。そこなら鏡代わりに自分の姿がよく見えると思った。
「おいアモン!どこへ行く!?」
「アモン!そっちは危険よ!戻ってきなさい!」
外で洗濯物を取り込んでいた両親の制止を振り切り、俺は走り続けた。
「ねぇあなた、あの子髪が…」
「あぁそれだけじゃない。一瞬だったが頭に角のようなものが見えた。まさか、もう…とにかく追いかけよう!」
「えぇ…」
大声で呼びかける両親の声が聞こえる。だがその声もだんだんと遠く小さくなっていった。
この時点で身体の異変にも気付くべきだった。いくら全速力で走っていたとは言え、本気で止めようと追いかけてくる父親を2歳の俺が振り切れるはずないのだから。
いつもは、十分ほどで着く川に一分足らずで到着した。
俺は恐る恐る川の水面をのぞき込む。
そこで見たものに俺は目を疑った。父親譲りの黒髪は灰色に変わり、母親譲りだった白目で紫色の瞳が黒目の黄金色の瞳に変わっていた。
恐怖で息が乱れ、身体中が震えだす。そして突如胸に激痛が走る。
俺は地面に膝をついた。
胸を確かめると、そこには見覚えのあるものが胸から露出していた。特徴的な文様をしたクリスタルを十あるダイヤ型のクリスタルが囲んでいる。
「はぁはぁ、これは…パハドと同じ…、どういうことだ…パハド!」
俺が心の中にいるパハドに問いかけると、パハドは相変わらずの飄々とした態度で答えた。
「どうもこうもねぇさ、お前は竜人に転生したんだからなぁ」
「ドラゴノイド…?」
「そうだ。…何を言ってんだこいつって顔だが、俺は一言も人間に転生したなんて言ってねぇぞ」
「何…?」
「だが、こうは言ったよな~、“絶望して風穴の空いたお前の魂にオレの魂が住み着いてる”って、お前は人間である自分の魂と、龍であるオレの魂は別々で存在していると思っているかも知れないが、実際は違う。これも最初に言ったが、魂は一つの身体に一つしか存在できない。その身体に二つ以上の魂が存在する場合、それらは一つに統合される。なんでかは知らねぇがそういう作りなんだよオレ達は。つまり今、この身体にある魂は、“オレとお前”の魂ということだ。それによって、成長と共にオレの魂の情報が身体に反映されつつあるんだ。まぁグラスの中でコーヒーと牛乳が別々で存在できずに、カフェオレみたいになっているようなもんさ。お分かり?」
最初から違和感はあった。
二歳になって間もない子供が、あんな重そうな漬物石を持ち上げられるはずがなかったんだ。
見張り番を終えて戻ってきたお父さんが、「アモンが生まれてから、襲ってくる魔物が減ったんだ」と、お母さんに話しているのを聞いたことがあった。
レヴィや他の魔物たちがお父さんを襲わなくなったのは、家にいた俺を警戒していたからなのか。
一度狩りの手伝いでお父さんに森の中へ連れて行ってもらったことがある、その日は森が静かすぎて、一匹も獲物や魔物にさえ出会うことはなかった。
それらの理由が竜人であることならば、納得がいった。
「こうなっては、もう二人と暮らせないな…」
「そんなことは、ないと思うがなぁアモン」
「…なんでそう思う」
「あの二人は、前の両親とは違う。お前も見てれば分かるだろぉ、竜人に転生したことを黙ってたのは悪かったからさ!驚いて喜んでくれるかと思ってただけなんだよぉ、なぁ元気出せって」
「あぁ分かってる…お前が悪い奴じゃないってのはなんとなく分かる。だが――」
――だが、両親はまだ分からない。
人は少しのきっかけで簡単に変わってしまう。俺だってそうなんだから。
今の俺を見て自分達の子供だって分かるかさえ怪しい。それほどに今の俺は異形だ。魔物として殺されてしまうかもなぁ…
「くう、うぅ、ううっ うっうっ」
声にならない声が喉から無理やり押し出される。溢れる涙を抑えることができない。
やっと幸せになれたと思ったのに、やっと身体を自由に動かせると思ったのに。
また俺は、独りになってしまうのか…
「「アモン!!!」」
振り返るとそこには、息を上げながら俺を真っ直ぐに見つめるお母さんとお父さんの姿があった。
まずい、逃げなきゃ。このままじゃ、二人に殺されてしまう。痛む胸を押さえながら、俺は走り出そうとする。
そんな俺を捕えるため、四本の腕が力強く俺を引き留めた。
「待つんだ!アモン!」
「待って!アモン!」
何が起きている。二人は俺を殺そうとしたんじゃないのか。俺の体を二人は必死に自分達のほうへと抱き寄せる。
だめだ。そんなことしたら鱗が体に突き刺さってしまう。
頼む離れてくれ、もうここには居られないんだ!
「大丈夫よ!アモン!」
「そうだ!大丈夫だぞ!逃げなくていい。怯えなくていいんだ。お父さん達がついてるかな!」
涙ぐみながら、全力で俺を止めようとする二人の声を聞いて、初めて二人が俺を殺そうとしていないことに気づいた。
二人は、姿の変わってしまった俺を自分の子供だと最初から分かっていたんだ。
抱きしめている腕を強くつかみ返しながら、俺は膝から崩れ落ちてしまう。
「うっ、うっうわああああああああ!わああああああああ!」
泣き崩れる俺をお母さんはそっと抱きかかえてくれた。安心していいんだ、一緒に居ていいんだと言うように温かく抱きしめられて、溢れる涙は勢いを増してゆく。泣きじゃくる俺の頭を優しく撫でながら、両親は俺を連れて家へと向かうのだった。




