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神様の裏垢を特定したので暴露します  作者: シロネル


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第8話 七回目の人類

 ――『今の人類文明は七回目』


 そのDMが公開されてから四十八時間後。


 インターネットは壊れていた。


 物理的ではない。


 概念的に。


 完全に。


 壊れていた。


【第一文明考察スレPart328】


【失われた六文明まとめWiki】


【創造神文明ループ説】


【七回目人類検証サーバー】


「増えすぎだろ……」


 降谷璃瑠葉は頭を抱えた。


 もはや自分でも追い切れない。


 世界中の考察勢が動いている。


 しかも。


 今回は規模が違う。


 神話。


 宗教。


 考古学。


 歴史学。


 天文学。


 地質学。


 陰謀論。


 オカルト。


 ありとあらゆる界隈が参戦していた。


 理由は単純。


 ロマンがあるからだ。


 人類が七回目。


 失われた六文明。


 神々の戦争。


 誰だって好きである。


 現実味がないからこそ。


 安心して楽しめる。


【どうせ創造神の世界観設定】


【ここまで作り込むの凄い】


【公式考察本出してくれ】


【神実在派また元気になってる】


【七回文明説好き】


【神話考察界隈の祭り】


 平和だった。


 本当に。


 平和だった。


◇◇◇


 しかし。


 璃瑠葉は違った。


「七回目か……」


 モニターを見つめる。


 創造神のDM。


『前の六回は失敗した』


 それが事実だと仮定する。


 すると。


 おかしなことがある。


 いや。


 おかしなことだらけなのだが。


 一番おかしいのはそこではない。


「なんで知ってる?」


 ぽつりと呟く。


 それだった。


◇◇◇


 人類文明が滅んだ。


 分かる。


 神々が見ていた。


 それも分かる。


 問題は。


 六回。


 全部。


 覚えていることだった。


 創造神は言った。


『今の人類文明は七回目』


 つまり。


 前の文明も知っている。


 しかも断定している。


 曖昧ではない。


 確信している。


「なんで?」


 普通ならおかしい。


 文明崩壊。


 世界滅亡。


 何万年。


 何十万年。


 そのレベルの時間が流れているはずだ。


 なのに。


 創造神は覚えている。


 まるで昨日の出来事みたいに。


◇◇◇


 その日の夜。


 璃瑠葉は新しい配信を始めた。


 タイトル。


【最大の矛盾】なぜ創造神だけ覚えているのか?


 配信開始。


 同時接続。


 三百万人。


「おかしいでしょ」


 開幕第一声。


 コメント欄爆発。


【来た】


【待ってた】


【フリル考察】


【神界燃やし配信】


【神実在派集合】


【また始まった】


 璃瑠葉はホワイトボードを映す。


 そこには。


 大きく書かれていた。


創造神



何を知っている?


「文明が七回目」


「敵の存在」


「門」


「信仰ポイント」


「過去文明」


「全部知ってる」


 コメントが流れる。


【確かに】


【設定担当だから】


【草】


【メタ発言やめろ】


 璃瑠葉は続ける。


「でもおかしいんです」


「他の神は知らない」


 一瞬。


 コメントの流れが止まった。


◇◇◇


「知恵の神」


「海神」


「雷神」


「全員反応が違う」


 璃瑠葉は過去配信を並べる。


 神々の切り抜き。


 何百本。


 何千本。


「この人達」


「過去文明について話せないんですよ」


 コメント欄。


【あ】


【言われてみれば】


【確かに】


【創造神しか喋らん】


 璃瑠葉はさらに続ける。


「敵についても同じ」


「門についても同じ」


「なぜか創造神だけが答える」


「他の神は知らないか」


「知っていても言えない」


「どっちかです」


◇◇◇


 神界。


 会議室。


「うわぁ……」


 雷神が頭を抱えた。


「気付いた」


 海神も顔を覆う。


 知恵の神だけが興味深そうにモニターを見ている。


「面白いですね」


「面白くない」


 創造神が即答した。


 珍しく。


 本当に珍しく。


 疲れた顔をしている。


◇◇◇


 璃瑠葉は続ける。


「仮説があります」


 コメント欄。


【来た】


【仮説タイム】


【考察勢正座】


 璃瑠葉は深呼吸した。


 そして。


 言う。


「創造神だけ年齢がおかしい」


 沈黙。


 一秒。


 二秒。


 三秒。


 コメント欄が爆発した。


【草】


【神だからだろ】


【終了】


【帰れ】


【神実在派歓喜】


【待て聞け】


 璃瑠葉は笑う。


「違う違う」


「そうじゃない」


「神だから長生きは分かる」


「でも」


「他の神も神です」


「なのに」


「創造神だけ知ってる」


 ホワイトボードに書き込む。


創造神



唯一の共通点



最初から存在している?


「もし」


「創造神だけが」


「第一文明から今までずっと生きているなら?」


 コメント欄。


【あ】


【なるほど】


【それはありそう】


【設定としては】


【神実在派死亡】


◇◇◇


 神界。


 全員沈黙。


「正解ですか?」


 知恵の神が聞く。


 創造神は答えない。


 ただ。


 少しだけ笑った。


「半分だ」


◇◇◇


 配信終了後。


 璃瑠葉は大量の資料を整理していた。


 すると。


 海外考察勢から新しいデータが届く。


「ん?」


 古代文明の一覧。


 地層分析。


 年代測定。


 各種論文。


 そして。


 一つの異常。


「なんだこれ」


 文明崩壊時期。


 それぞれバラバラ。


 しかし。


 ある周期が存在していた。


 約一万二千年。


 一万二千年ごと。


 文明が崩壊している。


「……は?」


 背筋が冷える。


 一回。


 二回。


 三回。


 四回。


 五回。


 六回。


 全部。


 一万二千年前後。


◇◇◇


 その瞬間。


 DM通知。


 送り主。


Genesis_0


 本文。


『気付いたか』


 璃瑠葉は即返信。


『周期があります』


 既読。


 返信。


『そうだ』


『来る周期だ』


 鳥肌。


 来る。


 何が?


 敵。


 門。


 それ以外にない。


◇◇◇


 璃瑠葉は送る。


『なぜ創造神だけ覚えているんですか?』


 既読。


 長い沈黙。


 過去最長。


 一分。


 二分。


 三分。


 そして。


 返信。


『忘れられないからだ』


「?」


 意味が分からない。


 さらに送られてくる。


『皆は忘れる』


『文明も』


『神々も』


『人類も』


『だが私は忘れられない』


 その文章を見た瞬間。


 璃瑠葉は違和感を覚えた。


 今までの創造神と違う。


 何か。


 疲れている。


 いや。


 違う。


 諦めている。


◇◇◇


 神界。


 創造神は一人で空を見ていた。


 門。


 その向こう。


 暗闇。


「あと三年」


 小さく呟く。


 残された時間。


 あと三年。


 七回目。


 最後の文明。


 最後の挑戦。


「今度こそ」


 その声は。


 誰にも届かない。


◇◇◇


 一方。


 璃瑠葉はDMを見つめていた。


『忘れられない』


 普通の言葉。


 だが。


 おかしい。


 なぜ忘れられない?


 なぜ他の神は忘れる?


 神なのに?


 その時。


 彼女の頭に。


 一つの恐ろしい可能性が浮かぶ。


「待って……」


 もし。


 創造神だけが覚えているのではない。


 覚えていなければならないのだとしたら?


 記録係。


 観測者。


 管理者。


 そういう役割だったら?


 そして。


 七回の文明。


 六回の滅亡。


 全部。


 見続けてきたとしたら。


「……」


 初めて。


 創造神を少しだけ可哀想だと思った。


◇◇◇


 その時。


 最後のDMが届く。


『私は最初の人類も知っている』


 璃瑠葉の呼吸が止まる。


 続く。


『最後の人類も見るだろう』


 さらに。


『それが私の役目だからだ』


 そして。


 最後。


『だから君は私を調べるべきじゃない』


 オフライン。


 沈黙。


 だが。


 璃瑠葉は逆に確信した。


 創造神。


 神界の頂点。


 全てを知る神。


 そして。


 最も秘密を抱えた存在。


 この世界最大の謎は。


 門の向こうではない。


 創造神そのものだと。



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