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神様の裏垢を特定したので暴露します  作者: シロネル


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第5話 神界最大の隠蔽

 翌朝。


 降谷璃瑠葉は目覚ましより先にスマホの通知音で目を覚ました。


「……うるさ」


 眠い。


 だが通知数はもっと酷かった。


 SNS。


 メール。


 DM。


 動画コメント。


 全部合わせて数万件。


「終わってる……」


 完全に祭りだった。


 原因はもちろん昨夜の動画。


 そして。


 創造神のDM流出である。


『二〇二九年七月二十三日』


『門が開く』


 たったそれだけ。


 たったそれだけで。


 世界中の考察勢が発狂していた。


◇◇◇


 朝食代わりのエナジードリンクを飲みながら。


 璃瑠葉は各国の反応を確認する。


 英語圏。


 中国圏。


 欧州。


 南米。


 中東。


 どこも同じだった。


【門って何?】


【終末予言?】


【神界コラボイベント説】


【VR企画説】


【大型ARG説】


【創造神の新シリーズだろ】


【設定勢仕事しろ】


【神実在派集合】


 誰も信じていない。


 だからこそ盛り上がる。


 もし本気で世界滅亡を信じていたら。


 こんなノリにはならない。


 ネットミーム化している時点で。


 人類は平和だった。


「うん」


 璃瑠葉は頷く。


「平常運転だな」


 問題は別だ。


 彼女が注目したのは。


 考察勢の方だった。


◇◇◇


 動画投稿から十時間。


 世界中のオタク達が掘り返した神話データ。


 その量は既に数十万件を超えていた。


 そして。


 ある一つの共通点が浮かび上がる。


「また出てきた……」


 璃瑠葉は資料を見つめる。


 神話。


 伝承。


 宗教文書。


 民話。


 古文書。


 全部違う。


 だが。


 共通する記述がある。


『神々は天より来た』


『神々は人を導いた』


『神々は去った』


 ここまでは前回と同じ。


 問題はその先だった。


 各地の神話をさらに掘ると。


 稀に続きが存在する。


『そして再び帰る』


「帰る?」


 神々は地上から消えた。


 なのに帰る?


 どこへ?


 何が?


 意味が分からない。


 しかし。


 その記述は世界中に存在した。


 偶然では説明できないレベルで。


「これ面白いな……」


 神話は地域ごとに独立している。


 なのに。


 なぜ同じ構造になる?


◇◇◇


 その頃。


 神界。


 会議室。


 空気は葬式だった。


「報告します」


 知恵の神が立ち上がる。


「人類側の考察勢が第三段階へ到達しました」


 神々が顔を覆う。


 第三段階。


 それは。


『神々が去った理由』


 に興味を持ち始めた状態を指す。


「早すぎる……」


 海神が呟く。


「普通はもっと掛かるでしょう」


「普通ならな」


 創造神が言う。


「相手が普通ではない」


 降谷璃瑠葉。


 神界史上初。


 本気で神話の整合性を調べ始めた人類。


 しかも。


 彼女自身は神実在説を信じていない。


 そこが最悪だった。


 信者なら誘導できる。


 アンチなら無視できる。


 だが。


 調査者は違う。


 証拠だけを見る。


「今どこまで行った」


 創造神が尋ねる。


「神々が消えた理由を探っています」


 沈黙。


「……」


「……」


「……」


 全員黙った。


 触れたくない。


 本当に触れたくない。


 神界における最大級の禁忌。


 数千年間。


 誰も口にしなかった話。


 それに。


 人類が近付いている。


◇◇◇


 一方。


 璃瑠葉は新しい動画を作っていた。


 タイトル。


【神界最大の隠蔽】なぜ神々は地上から消えたのか?


「これで行くか」


 投稿。


 そして。


 爆発。


 もはや説明不要だった。


◇◇◇


【来た】


【待ってた】


【今日も神界を燃やしに来た】


【フリルさん仕事早い】


【神界側かわいそう】


【神界側って何だよw】


【設定なのに既に実在感ある】


【神実在派歓喜】


【考察勢出撃】


 コメント欄は大盛況。


 そして。


 動画内で璃瑠葉は一つの仮説を提示した。


『神々は負けたのではないか?』


 これだった。


◇◇◇


「神話を見ると変なんですよ」


 動画内で璃瑠葉が語る。


「神々は圧倒的存在として描かれています」


「天変地異を起こす」


「不死」


「超常能力」


「人類を創った」


「文明を与えた」


「なら」


「なぜ消えた?」


 コメント欄が流れる。


【確かに】


【言われてみれば】


【神なら消える必要ない】


【転勤じゃね?】


【草】


 璃瑠葉は続ける。


「普通に考えれば二つ」


「自分達で去った」


「あるいは」


「追い出された」


 その瞬間。


 神界。


 会議室。


 全員が固まった。


◇◇◇


「おい」


 雷神が立ち上がる。


「まずくないか?」


「まずい」


 創造神が即答した。


 珍しく。


 本当に珍しく。


 創造神の顔が曇っている。


 知恵の神が震える声で言う。


「なぜそこへ到達するんですか」


「知らん」


 創造神も知らない。


 ただ。


 あの人間は異常だった。


 証拠から逆算する。


 だから。


 辿り着いてしまう。


◇◇◇


 動画は続く。


「神話には共通点があります」


「神々は去った」


「しかし」


「なぜ去ったか書かれていない」


「ここだけ不自然に曖昧なんです」


 コメント欄。


【確かに】


【そこ飛ばされてる】


【偶然じゃね?】


【いや多すぎる】


【ちょっと怖い】


 そして。


 璃瑠葉は最後の資料を出した。


 世界地図。


 大量の付箋。


 線。


 神話。


 文明。


 伝承。


 それらを結んだ図。


「ここからは完全な仮説です」


 そう前置きする。


「神々は何かと戦った」


「そして勝てなかった」


「だから地上から撤退した」


 神界。


 完全沈黙。


◇◇◇


「……」


「……」


「……」


 誰も喋らない。


 創造神だけが静かに目を閉じていた。


 当たっている。


 完全ではない。


 だが。


 方向性は正しい。


 それが問題だった。


「人類は本当に面白い」


 創造神が呟く。


 笑っている。


 だが。


 その笑顔は少し苦かった。


◇◇◇


 動画投稿から六時間後。


 璃瑠葉はある情報を受け取った。


 送り主。


 海外の歴史研究家。


 内容。


 たった一枚の写真。


「なんだこれ」


 古代石板。


 文字。


 読めない。


 だが。


 翻訳文が添えられていた。


『神々は門を閉ざした』


 璃瑠葉が固まる。


 続き。


『敵が来る前に』


「敵?」


 初めて出てきた単語だった。


 門。


 帰還。


 そして敵。


 繋がる。


 全部。


 少しずつ。


「まさか……」


 神々は帰るのではない。


 戻るのではない。


 逃げた?


 その可能性が浮かぶ。


◇◇◇


 その瞬間。


 PCが通知を鳴らした。


 新着DM。


 送り主。


Genesis_0


 本文。


『その石板はどこで見つけた』


 璃瑠葉は笑った。


「やっぱり見てるじゃん」


 返信する。


『本物なんですか?』


 既読。


 一秒。


 二秒。


 三秒。


 返信。


『偽物であってほしかった』


 背筋が冷えた。


 今までで一番重い言葉だった。


 そして。


 続く。


『君は間違っている』


 璃瑠葉の眉が動く。


 やはり仮説は外れか。


 だが。


 次の文章で。


 全身に鳥肌が立った。


『神々は負けたのではない』


『まだ終わっていないだけだ』


 世界が静止した気がした。


 終わっていない。


 つまり。


 戦いは現在進行形。


 今も。


 まだ。


 そして。


 最後のDM。


『だから我々は配信を続けている』


 そこで通信が切れた。


 璃瑠葉はモニターを見つめる。


 配信。


 信仰。


 神々。


 登録者数。


 神格。


 今までバラバラだった情報。


 全てが。


 少しだけ繋がった気がした。


 神々は信仰を集めている。


 なぜ?


 弱体化するから?


 本当に?


 それだけか?


 もし違うなら。


 信仰ポイントとは。


 一体何のために必要なのか。


 そして。


 敵とは何なのか。


 降谷璃瑠葉は気付いていなかった。


 今のDMこそが。


 神界最大の秘密へ至る。


 最初の鍵だったことを。


【コメント欄】


【敵!?】


【急に物騒になった】


【神界戦争編か?】


【設定がデカすぎる】


【フリルどこまで掘るんだ】


【創造神焦ってない?】


【神実在派大歓喜】


【まだ終わってないって何】


【配信が伏線だったのか】


【考察勢徹夜確定】


【次回はよ】

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