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神様の裏垢を特定したので暴露します  作者: シロネル


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第4話 消された予言

 ――『なぜそれを知っている?』


 その返信を見た瞬間。


 降谷璃瑠葉は笑った。


「やっぱりか」


 否定しなかった。


 それどころではない。


 問題はそこじゃない。


 相手は驚いている。


 明らかに。


 二〇二九年七月二十三日。


 その日付に反応した。


 つまり。


 何かがある。


「大当たり」


 カタカタとキーボードを叩く。


フリル


『その日付は何なんですか?』


 送信。


 既読。


 だが返信は来ない。


 一分。


 三分。


 十分。


 反応なし。


「逃げた」


 あるいは。


 相談している。


 どちらにしても収穫だった。


◇◇◇


 翌日。


 動画投稿。


 タイトル。


【消された予言】創造神が隠した『2029年7月23日』とは?


 サムネイル。


 創造神。


 ノイズまみれの映像。


 赤文字。


『それは駄目だ』


 公開。


 そして。


 爆発した。


◇◇◇


 三時間後。


 再生数五百万。


 コメント十万超。


 海外翻訳開始。


 各国SNSでトレンド入り。


【2029年7月23日】


 たった一つの日付が。


 世界中のおもちゃになっていた。


【来たああああ】


【祭りだ】


【考察勢出番】


【神実在派大興奮】


【設定勢も興奮】


【何も分からんのに面白い】


【創造神どうした】


【あの表情初めて見た】


【演技上手すぎ】


【逆に演技じゃなかったら怖い】


 ネットは盛り上がる。


 理由は単純。


 誰も本気では信じていないからだ。


 終末論。


 予言。


 神界。


 全部エンタメ。


 都市伝説。


 考察コンテンツ。


 だから安心して騒げる。


 しかし。


 その裏側では。


 本物の考察勢が動いていた。


◇◇◇


「おいおいおい……」


 璃瑠葉は届いたメールの数を見て絶句した。


 四千件超。


 そのほとんどが情報提供。


 世界中のオタク達が掘り返したデータだ。


「ネットって怖いな」


 一人で探せば数年。


 しかし数万人が動けば一日。


 集合知は怪物だった。


 そして。


 その中に共通する情報があった。


「また消えてる」


 創造神の過去配信。


 数千本。


 その中で。


 二〇二九年七月二十三日に触れた可能性がある部分だけ。


 不自然に消えている。


 切り抜きがない。


 文字起こしがない。


 魚拓がない。


 海外保存サイトにもない。


 普通ではありえない。


 インターネットは忘れない。


 それが常識だ。


 だが。


 この件だけは違う。


 まるで。


 世界規模で削除されたように。


「誰が?」


 創造神本人?


 運営?


 神界?


 分からない。


 だが。


 隠している。


 それだけは確定だった。


◇◇◇


 その頃。


 神界。


 会議室。


 空気は最悪だった。


「五百万再生です」


 知恵の神が報告する。


 沈黙。


「海外で翻訳も始まっています」


 さらに沈黙。


「考察Wikiが作られました」


 沈黙。


「二〇二九年七月二十三日まとめサイトも」


 沈黙。


 創造神が目を閉じる。


「だから言っただろう」


 静かな声。


「刺激するなと」


 風神が縮こまる。


「すみません……」


「謝罪は後だ」


 創造神は深く息を吐いた。


「問題は人類ではない」


「え?」


 神々が顔を上げる。


「彼女だ」


 降谷璃瑠葉。


 たった一人。


 神界最大の問題児になりつつあった。


「人類は信じない」


 創造神が言う。


「だが彼女は違う」


 真実を追う。


 都合のいい答えではなく。


 事実だけを積み上げる。


 だから危険だった。


 神界にとって。


「まだ間に合うでしょうか」


 海神が問う。


 創造神は答えない。


 数秒後。


「……分からない」


 初めて。


 神々はその言葉を聞いた。


 創造神が。


 分からないと言った。


◇◇◇


 深夜。


 璃瑠葉は世界中から集まったデータを整理していた。


 ホワイトボード。


 壁。


 床。


 付箋だらけ。


「これ何の事件捜査本部だよ……」


 自分で言って笑う。


 だが。


 実際その通りだった。


 そして。


 一つの奇妙な共通点に気付く。


「神話?」


 世界各地。


 日本。


 ギリシャ。


 北欧。


 メソポタミア。


 エジプト。


 マヤ。


 インド。


 全ての神話。


 そこに共通する伝承があった。


 名前は違う。


 表現も違う。


 だが内容は似ている。


『神々が天から降りた』


『神々が人類を導いた』


『神々が文明を与えた』


 ここまでは普通。


 問題はその後。


『神々が去った』


 その記述だ。


 なぜか。


 どの神話にも存在する。


「なんで?」


 神が現れた。


 分かる。


 神話だから。


 だが。


 去った?


 なぜ?


 しかも。


 理由が書かれていない。


 そこだけ曖昧。


 異常なほど曖昧。


 まるで。


 肝心な部分を隠しているみたいに。


「……待って」


 璃瑠葉の脳内で。


 点と点が繋がる。


 神々は昔いた。


 そして消えた。


 現在はネットで活動。


 なぜ?


 信仰減少?


 本当に?


 それだけか?


 もし違うなら。


 神々は何から隠れている?


◇◇◇


 その瞬間。


 一本の動画が送られてきた。


 送り主。


 海外の考察勢。


 再生数。


 七回。


「七回?」


 ほぼ誰も見ていない。


 だが。


 内容を見た瞬間。


 璃瑠葉は立ち上がった。


「嘘でしょ」


 それは。


 創造神の最古クラスの配信だった。


 十年以上前。


 まだ登録者数が数千人だった頃。


 画質も悪い。


 音質も悪い。


 今の神々しい創造神とは別人のようだ。


 そして。


 その配信の最後。


 創造神はこう言った。


『いずれ再び門は開く』


 コメント欄。


【世界観好き】


【厨二病全開】


【神界設定いいね】


 誰も気にしていない。


 だが。


 その直後。


 創造神は続けた。


『その時まで人類が生きていれば良いのだが』


 映像終了。


 璃瑠葉は固まった。


「門?」


 初耳だ。


 神界設定資料にもない。


 Wikiにもない。


 考察サイトにもない。


 どこにもない。


 まるで。


 その単語自体が忘れられている。


 さらに。


 創造神の配信履歴を検索。


 ヒット件数。


 一件。


「ありえない」


 一億人登録者の配信者だ。


 一回しか出てこない?


 そんなことあるか?


 不自然すぎる。


◇◇◇


 そして。


 もう一つ。


 璃瑠葉は気付いてしまった。


 神話。


 予言。


 門。


 二〇二九年七月二十三日。


 全部を並べる。


 共通項。


 ただ一つ。


「帰還……?」


 神々の帰還。


 その言葉が頭をよぎる。


 神々が昔いた。


 去った。


 そして門が開く。


 帰る?


 どこへ?


 何が?


「いや……」


 まだ足りない。


 証拠がない。


 だが。


 方向性は見えた。


 その時。


 画面が光る。


 新着DM。


 送り主。


Genesis_0


 本文。


『そこまで辿り着いたか』


 璃瑠葉の瞳が細くなる。


 返信。


『門って何ですか?』


 即既読。


 数秒。


 返信。


『知らない方が幸せだ』


『人類も』


『我々も』


 そこで文章が止まる。


 続く。


『だから数千年隠してきた』


 璃瑠葉は息を飲む。


 初めてだ。


 神界側が。


 明確に秘密の存在を認めた。


 そして。


 最後の一文が送られてくる。


『二〇二九年七月二十三日』


『門が開く』


 画面を見たまま。


 璃瑠葉は動けなかった。


 そして。


 次の瞬間。


 DMが全て削除された。


 まるで最初から存在しなかったように。


 しかし。


 スクリーンショットは保存済み。


 証拠は残った。


 そして。


 降谷璃瑠葉は理解する。


 今自分は。


 創造神の裏垢を追っているのではない。


 神界そのものが隠してきた秘密へ。


 手を伸ばしているのだと。


【コメント欄】


【門!?】


【なんだそれ】


【考察勢集合】


【新設定きた】


【創造神ワールド広がりすぎ】


【神実在派失神】


【帰還って何】


【終末論ルート?】


【普通に続き気になる】


【これ無料で見ていいの?】


【フリル掘れ】


【絶対掘れ】

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