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神様の裏垢を特定したので暴露します  作者: シロネル


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第2話 創造神実在説

 降谷璃瑠葉――PNフリルは興奮で眠れなかった。


 午前三時。


 モニターの青白い光だけがワンルームを照らしている。


「いやいやいや……」


 何度見ても同じだった。


 創造神の裏垢らしきアカウント。


 投稿履歴。


 活動時間。


 使用端末。


 各種ログ。


 過去アーカイブとの一致。


 偶然で片付けるには無理がある。


「でもなぁ……」


 問題はそこではない。


 仮にこれが創造神の裏垢だったとして。


 世間がどう反応するか。


 答えは簡単だ。


「設定の裏垢扱いされるだけだよね」


 創造神は神を名乗る配信者だ。


 だから裏垢が見つかったとしても、


『世界観の一部』


 で終わる可能性が高い。


 普通なら。


 だが。


 璃瑠葉の口元がゆっくり吊り上がる。


「だったら証明すればいい」


 神であることを。


 少なくとも。


『本当におかしい』


 と思わせる程度には。


 動画編集ソフトを起動する。


 タイトルを入力。


【検証】創造神、本当に神かもしれません


「よし」


 再生数の匂いがした。


◇◇◇


 翌日。


 動画投稿。


 そして。


 二時間後。


「は?」


 璃瑠葉は画面を凝視した。


 再生数。


 百二十万。


「早っ!?」


 コメント数。


 三万件超。


 トレンド入り。


 急上昇一位。


「なにこれ」


 伸び方がおかしい。


 完全にバズっていた。


 動画内容はシンプルだ。


 創造神の過去配信を徹底分析。


 不自然な点を列挙。


 あり得ない予言的発言。


 説明不能な現象。


 神話との一致。


 そして。


 裏垢。


 それらをまとめて一つの仮説にした。


『もし創造神が本物だったら?』


 という動画だ。


 もちろん断定はしていない。


 考察動画である。


 だが。


 ネットは盛り上がった。


【考察勢歓喜】


【久々に面白い】


【陰謀論動画かと思ったら意外とちゃんとしてた】


【神実在派きたな】


【ねーよw】


【でもちょっと面白い】


【創造神本人見てそう】


【設定考察としては神】


【神だけに】


【草】


 コメント欄は祭りだった。


 そして。


 その祭りは世界中へ飛び火する。


◇◇◇


 その頃。


 神界。


 巨大な白亜の会議場。


 雲海の上に浮かぶ神殿。


 そこで神々が騒然としていた。


「創造神様!」


「見ましたか!?」


「大変です!」


 雷神が叫ぶ。


 創造神は静かに茶を飲んでいた。


「どうした」


「人間がまた騒いでおります!」


「いつものことでは?」


「違います!」


 雷神がタブレットを差し出す。


 神界で最も見られている動画。


 そこには。


 フリルの顔が映っていた。


『創造神、本当に神かもしれません』


「……」


 創造神が無言になる。


 動画を再生。


 三十分後。


「なるほど」


 静かに頷いた。


「よく調べている」


「感心してる場合ですか!?」


「いや」


 創造神は少しだけ驚いていた。


 人類は気付かない。


 それが神界の常識だった。


 なぜなら。


 神々は昔から堂々と名乗っている。


 だが誰も信じない。


 むしろ。


 信じる方がおかしい扱いだ。


 しかし。


 この配信者は違う。


 異常なほど調査している。


「名前は」


「フリルです」


「ほう」


 創造神が動画を巻き戻す。


『ここで注目してほしいのは創造神の発言です』


『三年前の配信』


『この時点で創造神は南太平洋の大規模噴火について言及しています』


『実際に噴火したのは二年後』


『偶然でしょうか?』


 動画が進む。


『次にこちら』


『創造神は世界各地の神話について異常な知識を持っています』


『専門家でも説明できないレベルです』


『しかも間違いが一度もない』


 さらに。


『そして裏垢』


『ここで出てくる神界政治という単語』


『創造神は公式配信でも何度か神界政治に触れています』


『設定と言われればそれまでです』


『ですが一致率が異常です』


 創造神は動画を閉じた。


「優秀だな」


「そこですか!?」


 雷神が頭を抱える。


◇◇◇


 一方その頃。


 璃瑠葉は異変に気付いていた。


「なんだこれ」


 DM。


 メール。


 匿名掲示板。


 SNS。


 大量の情報提供。


 それも。


 創造神関連ばかり。


『創造神の発言まとめ』


『海外神話との共通点』


『神実在説研究会』


『神界考察Wiki』


 次々届く。


 考察勢が集まり始めていた。


「おお……」


 ネットは面白い。


 火種一つで勝手に燃え広がる。


 特に。


 誰も本気では信じていない時ほど。


「都市伝説扱いだから気軽に遊べるんだよね」


 これが本当に宗教だったら危険だ。


 しかし。


 今は違う。


 みんな。


 エンタメとして楽しんでいる。


【創造神実在説】


 という巨大なコンテンツを。


◇◇◇


 三日後。


 事態はさらに加速した。


 世界最大の掲示板。


 考察フォーラム。


 動画サイト。


 全てで同じ話題が流れていた。


【創造神って本当に神なの?】


 もはやネットミーム化している。


 だが。


 その中で。


 一つだけ奇妙な話があった。


『創造神の予言一覧』


 まとめサイトだ。


 璃瑠葉は目を通す。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


 十。


 二十。


 三十。


「……あれ?」


 途中で手が止まった。


 おかしい。


 確率がおかしい。


 外れた予言がほとんどない。


 いや。


 正確には。


 予言と呼ぶべきか。


 未来を知っているような発言。


 それが多すぎる。


「偶然?」


 あり得る。


 登録者一億人の配信者だ。


 発言数も膨大。


 当たることもある。


 だが。


 それにしても。


「ちょっと多くない?」


 背筋に嫌な感覚が走った。


 その時。


 通知が鳴る。


 DM。


 匿名アカウント。


 送り主名。


Genesis_0


 璃瑠葉の呼吸が止まった。


「……は?」


 まさか。


 震える手で開く。


 短い文章。


 たった一文。


『その調査、どこまで進んでいる?』


 璃瑠葉の全身に鳥肌が立った。


 冗談だろ。


 誰かのなりすまし。


 そう思いたい。


 だが。


 添付されていた画像を見た瞬間。


 思考が停止した。


 それは。


 まだ誰にも公開していない。


 彼女の編集途中動画のスクリーンショットだった。


「なんで……?」


 PCはハッキングされていない。


 クラウドにも上げていない。


 外部送信もない。


 見られるはずがない。


 なのに。


 画像は本物だった。


 そして。


 続く二通目。


『君は優秀だ』


 三通目。


『だからこそ確認したい』


 四通目。


『君は真実を知りたいのか』


 璃瑠葉は無意識に唾を飲み込む。


 モニターの前で固まる。


 部屋には誰もいない。


 静寂だけが広がる。


 だが。


 画面の向こうには確かに何かがいる。


 その確信だけがあった。


 そして。


 最後のメッセージが届く。


『それとも再生数が欲しいだけか?』


 その瞬間。


 降谷璃瑠葉は初めて思った。


 もしかすると。


 本当に。


 創造神は――。


 神なのかもしれない。


【コメント欄】


【おいおいおい】


【神本人降臨!?】


【創造神RPうますぎる】


【なりすまし確定】


【でも編集途中動画どうやって見た】


【怖くなってきた】


【神実在派大歓喜】


【考察勢集合】


【フリル逃げろ】


【いや追え】


【絶対追え】


【ここでやめたら伝説になれない】


【次回待機】

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