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第十九章:ソーセージとネジの庭

理性が焼け落ちる時、狂気が唯一の道標となる。

サイラスは自らの体を燃料に変え、暗闇を照らす「地獄の松明」となった。

「人間」であることを捨てた時、彼は初めて、この深淵を支配する術を手に入れたのかもしれない。

数時間が過ぎたのか、あるいは数日が経ったのか。彼には分からなかった。精神も肉体も、ただ彼を喰らい尽くす獣のような暗闇に飲み込まれていた。それは見知った闇ではなく、彼の存在そのものを餌とする暴力的な闇だった。繰り返される凄惨な暴力の波。肉体を引き裂かれ、切断され、串刺しにされ、最悪の形で消化されては、再び意識を取り戻すという無限の円環。彼は無、すなわち絶対的な暗闇の中にいた。体が元の形を失っていくのと同様に、彼はその痛みに慣れ始めていたが、深淵の残虐さに苛まれ続けていた。

「……出なきゃ……出なきゃ……だめだ……忘れるな……」

サイラスの言葉は、かつてあの部屋の闇に足を踏み入れた時と同じように、希薄に溶け出していた。彼はただ、エリアスが自分の手を取って、この地獄から連れ出してくれることだけを願っていた。しかし、そんな救いは決して訪れない。ただ、奴らが何度も、何度も彼に襲いかかり、彼の肉を貪って満足するまで終わらないだけだ。

「……俺は……まだ……屈しない……」

ようやく手足が形を成し、辛うじて動けるようになった時、彼はそう呟いた。今の彼は、暗闇の中で闇雲に爪を振り回すことしかできなかった。どこを攻撃すべきかも分からず、ただ自分の弱点を何度も突かれ、そのたびに立ち上がるしかなかった。

「……タラ野郎……メカジキ……ドブネズミ……港のクソネズミ共が……」

再び立ち上がると、彼はある方向へ向かって走り出した。

「……逃げるんだ……逃げなきゃ……さもなきゃ全員ぶち殺してやる!」

彼は独り言を漏らした。それは最初の頃のような恐怖ではなかった。もっと根源的なもの――激しい「怒り」が彼を支配していた。どこへ向かっているのかはどうでもよかった。ただ、自分を束縛し、何もさせないこの抑圧的な空間で、何かを成し遂げたかった。

肉体が分断され、細切れにされ、喰らわれる感覚。しかし彼の精神は、どこか別の場所へ到達しようと足掻いていた。目を覚ますたびに彼は挑戦した。どこかへ、どこか出口があるはずの場所へと。

「……どけ! 俺の邪魔をするな!」

彼は叫んだが、その声はもはや彼自身のものではなく、人間のものでもなかった。彼は足を止め、自分が果たして「人間」に似た何者かですらなくなってしまったのではないか、という疑念に駆られた。

彼は感じることのできない歯を食いしばり、何度も、何度も走り続けた。

深い爪傷を負った時、サイラスはそれをやり返した。凄まじい悪臭を伴う苦痛の悲鳴が闇に響く。彼は構わず、音のした場所へ次の一撃を叩き込もうとしたが、かわされた。代わりに彼は捕らえられた。深淵の獣たちが、負傷した仲間を貪り喰う音が背後で聞こえる中、彼は締め上げられた。

捕食者はサイラスを圧縮し、二つに引き裂かんばかりの力で圧迫し続けた。しかし、死の抱擁の中で、サイラスは捕食者の「味」に気づいた。彼はそのまま両端を掴まれ、引きちぎられた。凄惨なサイクルが繰り返される。安らかに死ぬことも、思考を整理する時間も与えられない。

失敗を繰り返した末、サイラスはつまずいた。しかしそれは、自分自身でも、虚無に棲む化け物でもなかった。それは「階段」だった。彼は必死に登ろうとした。

手すりを強く掴み、脚を必死に動かした。ただ絶望に突き動かされていたが、運は彼に味方しなかった。

上の方で、金属音が響いた。暗闇の中に赤黒い光が灯る。鋼鉄と苦い肉の匂いが漂ってきた。微かに見えたその姿は、ゴキブリとは似ても似つかぬ代物だった。

「……どけ、化け物……どきやがれ……。俺様が……あ、アイロンが……!」

サイラスは錯乱していた。相手がどんな方法で自分を始末しようと構わなかった。自由になるチャンスが目の前にある。しかし、形を成していくその影を避けようとするたび、サイラス自身の形はより曖昧ディフューゾになっていった。

「……どけ……さもなきゃ……。俺……俺が動かして……やる!」

彼は自分がまともに言葉を発せなくなっていることに、手遅れになるまで気づかなかった。今の彼は、あの「イナゴ」と同じように、辛うじて単語を絞り出すのが精一杯だった。

闇の中の怪物に立ち向かおうと、彼は自分を奮い立たせた。以前と違い、化け物たちは地面を転がるサイラスにすぐには襲いかからず、慎重に様子を窺っていた。

「……助けて……助けてくれ……助けが必要なんだ!」

彼は対話を試みたが、成功しなかった。かつての仲間たちと同じように通じ合うことを期待したが、返ってきたのは唸り声と、不確実な死の予感、そして自分自身の敗北感だけだった。

「……害虫共め……卑怯者め……」

自分を拷問し続けてきた者たちを罵り、サイラスは覚悟を決めて突進した。走るというよりは、這いずるような、蛇のようにのたくる動き。意識を集中して「自分の形」を保とうとしなければ、一歩ずつ進むことさえままならなかった。

それは新たな感覚であり、さらなる失敗を招いた。しかしその失敗の中で、彼はこの苦悶の中に一つの好機チャンスを見出した。怪物が攻撃を外し、鉄格子に火花を散らした瞬間だ。

一瞬の光だったが、それだけで十分だった。目の前の存在が想像以上に最悪であることを理解するには。彼の「恐怖」という概念は、彼自身の体が壊れたのと同様に、すでに破壊されていた。彼にできたのは、自分自身と、自分に降りかかる悲劇のすべてを笑い飛ばすことだけだった。

サイラスは高らかに笑った。笑うたびに激痛が走ったが、そうせずにはいられなかった。彼は全速力で走り、以前の怪物と同じように仕掛けようとしたが、一撃を喰らって再び死のプロセスを繰り返した。自らの悲鳴と笑い声の中で、彼は自分を襲う不幸と恐怖を嘲笑い続けた。

何度も打撃を浴びせられ、加工された肉と金属、そして背徳の塊である怪物は、彼が守ろうとしていた階段を再び叩き壊した。激しい火花が散り、朽ち果てた階段はその衝撃に耐えきれず、二人をさらに下の階層へと飲み込んでいった。

金属と癒着した腐った肉がサイラスの上に落下した。自らの体から吐き気のするような胆汁が流れ出し、肉と金属の混じり合った味を感じる。その重みに押し潰され、凄まじい苦痛が彼から力を奪った。……それでも、彼は笑った。それが痛みゆえなのか、恐怖ゆえなのか、あるいはすべてが「死ぬことのできない人生」という残酷なゲームに思えてきたからなのか、彼自身にも分からなかった。

ドロリとした液体がサイラスの上で泡を立てていた。彼は怪物の装甲にある亀裂に気づき、その内部へと潜り込んだ。暗闇の中で再び立ち上がろうとする怪物に、借りを返す時が来たのだ。彼は瓦礫の中から、衝撃で剥がれ落ちた怪物自身の体の一部である金属の破片を見つけ出した。

「……紳士淑女の皆様! お坊ちゃんにお嬢ちゃん! 皆様のピエロが帰ってきましたよ!」

サイラスは、怪物の耳と思われる場所に向かってリンパを振り絞るような笑い声を上げた。次の瞬間、怪物の金属の肢に串刺しにされ、地面に叩きつけられた。怪物は唸り声を上げながら、モーターの駆動音と共に恐るべき顎を開いてサイラスに近づいた。

「……演目の再開だ、輝かせてやるよ! ……火だ!!」

彼は持てる力のすべてを振り絞り、金属を金属に叩きつけた。最初は反応がなかったが、怪物が無数の機械の歯で彼を飲み込もうとしたその時、詰まっていた金属片が激しい火花を散らした。その光が、サイラスに残された残骸と、彼がいる場所を一瞬だけ照らし出した。熱が急激に上昇し、二人を恐ろしい罰(業火)が包み込んだ。

「……火だ! 火だ!!」

炎に包まれ、怪物は咆哮した。サイラスは、自分を苦しめてきた存在が、自ら招いた火刑に悶え苦しむ様子を信じられない思いで見つめていた。怪物は獲物を吐き出し、炎から逃れようと狂ったように四肢を動かし、火を消すための何かを探してのたうち回った。

若者は燃え広がる炎を見つめた。彼は蛇のような動きで、布が巻き付いた大腿骨フェムルを拾い上げ、それに自分の胆汁を塗りつけ、火を灯した。

上へ登れないのであれば、下りるまでだ。登るための道を見つけるまで。

彼は、自らの胆汁と骨で作った松明を手に、深淵の先へと進む決意を固めた。

自らの胆汁と骨を松明に変え、笑いながら奈落を下るサイラス。

その姿はもはや犠牲者ではなく、深淵を歩く新たな怪物の誕生を予感させます。

次なる階層で彼を待つのは、救済の光か、それとも自分を焼き尽くすさらなる業火か。

サイラスがいよいよ極限状態を超えて、自分の「icor(胆汁)」を自在に(あるいは自暴自棄に)使い始めましたね。失われた腕、変質した体、そして消えゆく言葉。彼がどこまで「サイラス」でいられるのか、手に汗握る展開です。

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