第十章:ピエロの最後の笑い
仮面舞踏会の終わりには、常に誰かが血を流す。
華やかなドレスの裏側で、彼らは互いの喉元を狙う獣に過ぎない。
救済の言葉は、裏切りのナイフを隠すための鞘である。
二人は将校たちに突き飛ばされ、抗う間もなく豪華な廊下へと連行された。精巧に彫られた木製の扉には数々の絵画が飾られ、そこは単なる通路ではなく、贅を尽くした頽廃のギャラリーだった。エボニーや紫がかった異国の木材が光と音を吸い込み、視覚を圧倒する。
「……恥を知りなさい! 私の一族を侮辱し、その野蛮な行いで正義を汚すなんて!」
マルタは階級的な憤りを込めて鋭い声を上げた。彼女の横には、暗い色の木材で彫られた歪な彫像が立ち並び、彫られた瞳で太古の秘密を守るかのように彼らを監視していた。
「……お嬢様、落ち着いてください。これは私ではなく、諸家を統括する方々の命令なのです」
次尉補のマウリシオが、冷徹ながらも事務的な礼儀正しさでマルタに言った。しかし、その言葉が少女の怒りを静めることはなかった。
「……次尉補、その規律とやらは家具ではなく囚人に向けろ」
一尉補のズビンが唸った。彼はマルタを「繊細だが邪魔な荷物」のように扱い、サイラスが少しでも遅れたり、逆に進みすぎたりするたびに、そのうなじを無慈悲に殴りつけた。その罰は不規則で、計画的で、そして何より屈辱的だった。
階級制度という重圧の下、永遠とも思える時間が過ぎた後、彼らは装飾のない巨大な両開きの扉の前にたどり着いた。他の扉とは違う。マルタはそれを悟り、生唾を飲み込んだ。彼女の優越感という仮面が、音を立ててひび割れた。
「……さあ、ノックするか……あるいは祈るんだな」
処刑人であるはずのズビンでさえ、隠しきれない不安と居心地の悪さを表情に滲ませて囁いた。
扉を開けようとした瞬間、それは突発的な力で内側から放たれた。将校たちはその衝撃と、背筋を凍らせるような威圧感に気圧された。ムスク、異国のスパイス、そして道徳的な腐敗が混じり合った濃厚な匂いが四人を襲う。
「……次尉補。貴様が先に入れ……」
一尉補のズビンは吃らぬよう必死に命じた。二人の将校の間に気まずい沈黙が流れる。マウリシオは上官の臆病さに冷ややかな蔑視を向けた後、命令に従った。
「……いっそ、海の底に沈めてくれりゃあ良かったんだ」
サイラスは何かを言いかけたが、あまりの不吉な予感に口を閉ざした。彼らが足を踏み入れた豪華なサロンは、巨大な空間に影のような人物たちがひしめき合い、他者を圧倒せんとする過剰な贅沢で飾られていた。この町では、パッチの当たっていない服を着ているだけで「富豪」と呼ばれるに十分だったが、ここは別世界だった。
「……この餓鬼共が、よくもまあ気取りやがって……」
浪費の猥雑さに圧倒されたサイラスがついに口を開いたが、すぐにマウリシオの無機質な打撃が彼を黙らせた。
「……俺はここにいなきゃいけないのか、それとも消えなきゃいけないのかどっちだ!? 殴られながら透明人間になれってか!?」
若者が抗議すると、マウリシオは部屋の奥から向けられた鋭い視線に気づき、次の拳を止めた。
「……静かに、そして礼儀正しくしていろ、このドブネズミめ……」
将校は、周囲の瞳が自分たちを「不快感」ではなく「娯楽」として見つめていることに気づき、サイラスに脅しをかけた。
「……大人しくしろ、クズ。さもないとここが貴様の墓場になる。その前に去勢してやるからな」
マウリシオは憎悪を剥き出しにしてサイラスを指差した。それは単なる仕事を超えた、個人的な敵意だった。
「……恥を知りなさい、将校さん。私の屋敷に足を踏み入れるための最低限の社会的基準から見ても、あなたたちの振る舞いはあまりに下劣だわ」
マルタは乱れた服を丁寧に整え、侮辱された「令嬢」の役割を演じ直し、冷徹な一瞥をくれた。
サロンの中には、一族の長を自称する富裕層たちの間で、重苦しい敵意と高慢な空気が渦巻いていた。彼らは互いを完全に無視し、金と怨念の塊となって、入ってきた一団にすら目もくれなかった。
「……貴様の言い訳は、我々の高潔で汚れなき社会に対する真の恥辱だ」
黒髪の中に年齢相応の白髪が混じった長身の女性──家長メンシアが言い放った。その声は冷たく研ぎ澄まされた金属のようだった。
「……フェルナンデス家長、その不遜な態度は撤回していただきたい……」
長く伸びた影のような男、フスト判事が、悪徳によって老け込んだ醜悪な容貌で応じた。
「……フスト、黙れ! 貴様の小芝居には反吐が出る。それよりも、無能な父親のせいで叱責を受ける羽目になった、貴様のふしだらな娘にでも説教したらどうだ?」
メンシアは、雪のように白い肌とは対照的な、精巧に装飾された金の杯を揺らしながら強調した。
「……不敵な魔女め! 下品な女だ! ウラカではなく、貴様と取引したのが間違いだった!」
老人は怒りで顔を歪めて吠えた。
「……私はこの町の最高判事だ! 秩序と正義はこの手にあるのだ!」
フストは威厳を保とうと声を荒らげたが、メンシアは彼を無視した。議論は彼らだけでなく、科学の議論に耽る者、貿易と生産の数字に執着する者など、会場のあちこちで自分たちの虚栄心を満たすためだけの衝突が起きていた。
「……フェルナンデス家は相変わらず質素なことで。謙虚を装った惨めさが、かえって目に余るわ」
異国の羽で飾られた扇子で顔を隠した女が呟いた。
「……余興も退屈だわ。誰かを虐殺するか、拙い能力の誇示でも見せないと楽しめないのかしら」
彼女の東洋的な目元が、厚化粧で塗りつぶされた仮面のような顔の下で、密かな愉悦に細められた。
「……聖別者の従者なんてものを使って一銭も惜しむ。ゴンザレス家ほどではないが、あの一族ももう終わりだろう。安定した地位を築けなかったのだから」
軽食を口いっぱいに詰め込んだ老人が、社交上の礼儀を完全に無視して侮辱を吐き捨てた。
「……バルマセダ代表……ここで何かするつもりではなかったのですか? 私は自分のクランの代表に報告させてもらいます。これは時間の無駄ですわ」
扇子の女が長いパイプから甘く濃厚な煙を吐き出した。
「……緊急事態の集まりだというのに、これでは民衆のカーニバルのようだ」
黄金の髪を滝のように垂らした、琥珀色の肌を持つ巨体の女が不平を漏らした。
「……我らであれば、予告なしの会合には相応の『獲物』を用意したものだが。儀式的な生贄でも捧げればいいものを、こんな瑣末な事ばかり」
サイラスは、そんな彼らを信じられないといった様子で、嫌悪感を隠さず見つめた。一方、将校たちは表情を殺し、疲労と倦怠を滲ませて直立していた。
「……おい、この腐った海鮮袋共は何を言ってやがる? なんであんな話し方なんだ?」
サイラスが呆れて問うと、将校たちは苛立ちを露わにしたが、マルタは自分たちの階級への侮辱に激昂した。
「……私の一族の親切心に向けられた卑劣な虚偽を慎みなさい! 自分たちを何様だと思っているの、この厚かましい餓鬼共が!」
マルタは、自家のステータスを汚す招待客たちの言葉に怒りを爆発させた。
「……恥知らず共! どこの馬の骨とも知れぬ路地裏のドブネズミのような血統の分際で! 分家出身の分際で、本家でも役立たずのくせに、偉大な名門を侮辱するなんて!」
少女の叫びがサロンの洗練された空気を切り裂いた。しかし、周囲の者たちは腐った卵に群がる蝿のように、その騒動に好奇の視線を向けた。
「……なんと野蛮な振る舞い……」
金髪の女が絶句した瞬間、マルタの追撃が飛んだ。
「……それから! ラミレス代表、恥を知りなさい! 何世代にもわたってあんたたちの無意味な浪費を支えてきたのは誰だと思っているの! 今もあんたたちを主要家系として扱ってあげている寛大さに感謝しなさい!」
ラミレス家の女は、その肥満体を揺らして驚愕した。
「……我らラミレスは、聖なる戦士と狩人の家系であり……」
威厳を保とうとした彼女の言葉を、背後からの声が遮った。
「……フェルナンデスの小娘の言う通りだ。我らゴンザレスが数百万頭の家畜を送り込んでも、何の結果も出ていない。家長はお前たちの空虚な言葉遊びに辟易している」
穏やかだが重みのある声。大きな眼鏡をかけた、この場では逆に目立つ質素な服を着た男だった。
「……ホルヘ! よくもラミレス家を! あの子供たちは神聖なる義務のために……」
緊急会議の焦点が自分に向けられたことで、女は取り乱した。
「……言葉を慎め、ラミレス代表。我々は各家の代表であり家長だ。『子供』ではない」
男は眼鏡を直し、議論を終わらせるように唸った。
「……聖なる教会は浄化のために我らの側にある……」
その時、鋭い指パッチンの音が響き、全員が沈黙した。暖炉の前に立つメンシアが、その完璧な姿勢と冷酷な存在感で全員を圧倒していた。
「……汚らわしい口を閉じなさい。下位の使い魔ですら、ゴミ以下の振る舞いをする代表共よりは有能だわ。この愚行を正すのが、私の義務のようね」
彼女の言葉は物理的な衝撃を伴って全員を貫いた。そして誰よりも深く傷ついたのは、マルタだった。
「……私はあなたの弟子……弟子のはず……使い魔じゃない……」
メンシアの言葉は、マルタの心に深々と突き刺さった。少女は顔を真っ白にして屈辱に震え、サイラスや将校たちの後ろで沈黙した。
「……主要家系によって築かれたこの町は、幾星霜もの苦難を生き抜いてきた。外の世界の腐敗が我らの力によって食い尽くされる時、その苦しみは終わるわ」
メンシアが杯を掲げ、脅迫を含んだ余韻を残した。
「……何を提案するつもりだ、腐った魚の匂いがするクソババア」
卑俗で不遜な声が響いた。そこに立っていたのは、サイラスと同じ長い黒髪を持つ、褐色の肌の長身の男だった。その声と姿を見た瞬間、サイラスは激しい嫌悪感に襲われた。
「……それほど傲慢に振る舞わないことね、ヘルナンデス。貴様の家長としての権限は、ルイス家による承認の手続き中よ。法を外れた詳細が暴かれ、判事の拘束下に置かれたいわけではないでしょう?」
メンシアは優雅に、かつ冷酷に脅しをかけた。
若者の名はアザイ。サイラスの兄だ。彼はメンシアを無視し、自分にしがみつく売春宿の女二人を弄んでいた。屈強で不遜なその姿は、権威を示すためではなく、単なる粗野な生き方の現れだった。
「……アザイ! この二つある頭のどっちでも物事を考えられねえ馬鹿野郎が! マンボウ頭め、いい加減にしろ! 家の代表面してんじゃねえぞ、間抜け!」
サイラスの怒りは、招待客たちにとって最高のエンターテインメントとなった。兄は港の汚い言葉で罵り返し、サイラスもまた全力で応酬した。兄弟の醜い争いは、アザイの節操のない私生活を暴露し、退屈していた代表たちに極上の毒を提供した。
ただ二人、フスト判事とメンシアだけは違った。判事は石の塔から逃げ延び、今も生きているサイラスを見て歯を剥き出しにした。
「……メンシア、あの邪魔者を始末させておくべきだった……生きてやがる、クソが!」
フストはメンシアに怒りの囁きをぶつけたが、家長は満足げな笑みを浮かべていた。
「……私の親戚のソロモンよりも、貴様の娘があんな男に何を見出したのか……そっちの方が興味深いわ。残念ながら、どちらも私の計画には入っていないけれど」
メンシアは冷ややかに答え、将校たちに連れ出されるサイラスを見送った。アザイもまた別の将校に拘束され、女たちから引き離されていた。
「……思っていたより、この土地は面白そうね……」
扇子の女が笑みを隠しきれずに言った。
「……今のよりマシな喧嘩なら、首都の下層スラムの実験診療所でいくらでも見れるぜ」
バルマセダの代表が、退屈そうに首を掻いた。
「……感心したぜ、ボウズ。自分の兄貴やあの連中に真正面から向かっていくとはな」
一尉補のズビンが、サイラスを運び出しながらぼそりと呟いた。
「……もう十分だ。そのボロ布をここから連れ出し、相応しい場所へ放り込め」
判事が、メンシアの演説を妨害した若者への嫌悪を込めて命じた。
「……落ち着け、フスト。厳しい真実の前に、少しは緊張をほぐすのも悪くない。嫌でも奴らは認めざるを得なくなる……さもなければ、ディアス家の二の舞になるのだから」
扉が閉まる間際、メンシアの冷徹な声が聞こえた。
「……クソ野郎め、よくも……ああ、天上の者よ! ひどい目に遭った。もう一人の次尉補があのヘルナンデスの害虫を抑えてくれて助かったぜ」
次尉補のマウリシオが額を拭った。
「……害虫!? 害虫だって言ったか!? あいつはアザイだ、俺の一族を代表してるクソ野郎だぞ! あいつは『淡水船乗り』ですらねえ、海のナマコにも劣る! ナマコは役に立つからな!」
サイラスは、兄があの場所にいた屈辱に震え、呪いの言葉を吐き続けた。
「……確かに。あんたの言う通りだ。あのヘルナンデスのゴミ溜めの中でも、あいつは格別不快だ……」
マウリシオは嫌そうにサイラスの言葉を肯定した。
「……さて。お互い心の底から憎み合っているし、俺はあんたの一族全員がゆっくり苦しみながら死ぬことを願っちゃいるが……家族の敵対心よりも大事なこともあるんだ」
一尉補のズビンが、まるで理解ある者のように近づいてきた。
「……あんた自身よりも、あの兄貴のなり損ないをぶちのめしたい気分だぜ。俺も仕事でなきゃ、そうしてた。……だが、命令は命令だ」
次の瞬間、ズビンの**電気警棒**がサイラスに叩き込まれた。
激しい電撃が若者の体を硬直させ、マウリシオも加わって、薄れゆく意識の中にあるサイラスを叩き伏せた。
「……すまんな、ボウズ。ゲームオーバーだ。権力争いは今のところ、あんたの兄貴の勝ちだ。あんたは、最後の一片だったんだよ……」
ズビンの声が聞こえた。残酷でサディスティックな偽りの世界で、それは奇妙なほど真摯な謝罪だった。
しかし、意識が闇に沈むサイラスにとって、謝罪など何の意味も持たなかった。最後に残った記憶は、彼を使い捨てた家長の、冷たく遠い笑い声だけだった。
サイラスの「最後の抵抗」は、上流階級の娯楽として消費された。
兄アザイの台頭、メンシアの冷酷な切り捨て、そしてマルタに刻まれた「使い魔」という呪い。
暗闇に消えるサイラス。果たして「最後の一片」が、チェス盤の上で再び動く日は来るのだろうか。




