第4話 クリーム牛とバター
「すげー。これが凄い牛なんだよな?」
「そう…とにかくこの牛さんは美味しいものが大好きで、べたべた触られるのが嫌いらしいから。そこをしっかりお願いね?」
「もちろん。牛も六頭になったし、これで町で売れるようになるんじゃないか?領主様に言われているんだよな?」
「は、はは、その話はやめてよ。」
ことは少し前の話になるが、いつも通りオブロンの町を歩いていると。目の前に衛兵が来ると。
「ウル殿、ダリン様がお呼びだ。着いてきてもらえるな…。」
「はい…」
衛兵に連れられ、首を大きく落とし項垂れるウルの姿を周りとプレイヤーはなんの罪を犯したのかと掲示板で話題になるのだった。
領主邸に入り、部屋に通される。部屋の中には領主のみが座っており、
「ウルよ。座りなさい。」
「はい…。」
椅子に座り、ずっと緊張しているウルにダリンは
「そんなに緊張するでない…といっても無駄か。さっさと要件を話すが。お主は牧場を作った、それは事実だな。」
「はい。」
「そうだな。しばらくは少ない数を育て、慣れてから数を増やすとマリーに聞いておったが、それも事実じゃな?」
「は、はい…」
「いつになったら牛乳とやらを発売するのだ?ワシはずっと待っておるのだぞ?」
「え?」
ダリンが言うにはウルに報酬の土地を与え、それとなくダイタスにウルのことを話し、それで牧場を建てられてほっとしたのだが、待てど暮らせど牛を育て、牛乳をオブロンに流さない。個人の自由ではあるのだが、さすがに一言言っておかないといつまでも流通しないのではないかと言いたかっただけなのだった。
それがわかり、少し緊張が解けたウルは、安全が確認できたらすぐに販売する事を伝え、それは商業ギルドに渡せば済むようにしておくと言われ、ようやく一息つくことができた。
「まあお主のことだ、個人的に渡したい相手がいるとかあるだろうが、取れた半分はここに卸してほしい。具体的に半分というより、毎回オブロンには卸せといいたのだが。わかるな?」
「そ、それはもちろん。基本はここに卸します。それと個人の料理に少し友人に配る程度ですので。」
「それならば良い。それとな?牛乳をどうやって美味しく食べられるか料理をしっておったらマリーにでも伝えておいてくれ。別途それなりの額は渡す故な。」
「は、はあ。わかりました。」
「よし、それではもう戻ってよいぞ。これ以上ここに止めておくと後々うるさいやつが多そうだからな。」
そういうとダリンは、部屋を出ていってしまった。すぐに使用人が現れ、玄関まで送ってくれたのでそのままホームに帰り、緊張のストレスを解消とばかりにみんなを撫でるのだった。
「でも領主の言いたいことわかるぜ。ウルさんマイペースだからほっとくと一年牛乳卸さねーかもって。」
「そ、そんなマイペースかな、私。」
「まあ知らない人はそう思うかもってことだよ。でも牛乳うめーよな、俺よく飲んでいるぜ?」
「それならよかった。凄い量取れているから自分で飲む分はいくら飲んでもいいからね。」
「おう!でも生クリームはなんか変だった。」
「まあ脂肪が多いからね。料理したら美味しくなるから。」
「ウルさんの料理美味しいからたべてーや。」
「すぐ作るから待っててね。」
ウルは生クリームの活用法を考えたが、ホイップクリームには砂糖を大量に使う上、スポンジケーキの作り方もわからない、家で練習が必須だと考えていたら一つ思いついた。
「ジャック君!美味しい物を作れるけど協力してくれる?」
「なんだ?俺でよければなんでもするぜ?」
自信満々の笑みを浮かべるジャックにウルはにこやかな顔でこう言った。
「バターを作ろう!」
自家製バターを作ることにしたのだった。
「バター?それはなんだ?」
「えっとね、調味料にもなるし、パンに乗せるだけで美味しくなるの。」
「え?そんなものあるのか?」
「うん!とりあえず作ってみようよ。」
「うん!どうやったら良いんだ?」
「本当なら機械というか装置があれば良いけど、今回は一番簡単な方法で行くよ。」
「うん。それでなんか瓶を出したけどなにすんだ?」
「これに生クリームを入れて、振るだけ。」
上下にぶんぶん振るウルに、驚きながらも
「振っても変わらないだろ?何かあるのか?」
「こうすると少しずつ固まるの。それがバター!」
「へー!俺にやらせてよ。」
「いいよ?もう一つ瓶に生クリームいれて…お願い!」
二人でひたすら瓶を振る、振る、振り続ける、リアルであったらすぐにばててしまうウルであるが、ステータスが器用と攻撃に振っており、料理スキルもあるので全く疲れることがない。
リアルも違い、数分も掛ければあっという間にバターらしきものが出てきた。
「お!できてきたぜ!これがバターだろ?」
「そうそう、濾すための綺麗な布を敷いて、全部出して。水気を取ったら片方には塩を入れて、もう片方はなしで混ぜたら。」
「なんでだ?塩入れたほうがいいんじゃないのか?」
「無塩バターといって、使う用途が違うの。短剣とソードみたいなもの。」
「ふーん。それでこれで完成?」
「うん。温いけど、パンに塗って食べてみましょ?作った人だけのご褒美。」
「おう!」
ウルはジャックは、パンにバターを塗るとぱくり。
「う、うめぇ。」
「本当。パン屋のパンだから柔らかくて、バターがあるとすごく美味しい。」
「なあ、これチビたちにも食べさせたい。このとおりだ。お願い。」
頭を下げるジャックに、ウルは
「もちろん。二人で頑張って振りましょ。たくさん作ればみんなの分になるし。」
にこやかに答えると、キラキラと笑顔になったジャックは
「おう!」
と、二人で元気に新しい瓶を振り続けるのだった。




