第3話 新しい仲間
ドロドロ沼、ダンケル南に位置する大きな沼地の地帯であり、サクラとレベル上げに来たっきりであった場所であった。
まずウルたちは動物のテイムモンスターをメインに戦うパーティーであり、沼地というのは泥だらけで汚い場所であり、せっかくの毛並みがどろどろに汚くなるのがあまりワン太たちが好きではないのだ。
ウルも足袋がぬちゃぬちゃして気持ちが悪いとあまり乗り気ではなかった。経験値効率は良いとされており、今でも結構な人数のプレイヤーが魚と戦っているのが見える。
しかし、今回は沼が目的ではなく、その周りの森であった。小さな木々と鬱蒼とした草を掻きわけながら進んでいく。
今回は少し前にエルメダに言われた生クリームを取れる牛を飼うためであった。その後搾乳機を使ってみたところ乳を入れるだけですぐに取り切ってしまい、子供たちにもやらせてみたところ簡単に出来てしまった。
入れすぎたとしても自動で外れるようになっているため、壊れる心配もなく、早速牛乳用の樽を一日掛けて作り終えたウルは牛を増やすことにした。
その言葉に子供たちは喜んでいたため、今度牛乳を使った食べ物をいっぱい作ろうと思ったウルであった。
「みんな。いつもと違う牛を見つけたら教えて?私だと見分けつかないかもしれないかもしれないから。」
「ワン!」「ちゅん」「ちら?」「モー!」「くあ!」
やる気が出た全員と共に中に入って行く。かなり前に買っていたソードを振り回して草を掻きわける。
「うー。やっぱり大きい刃物を振り回すのは怖い…。」
おっかなびっくり、それもへっぴり腰でソードを振り回す姿にワン太は呆れながらもウルスラにお前が掻きわけろと言い。
「くあ!!」
「あ、ウルスラ凄い!!!ありがとう。」
ウルスラの鋭い爪を使い、あっという間に草を切っていく。力も強く、ウルの数倍は早く先へ進んでいく。
しばらく進んでいると、小さな動物たちが木の上からウルたちを見ている。ワン太達がきっと睨みつけるとびくりと驚き逃げていく。
「怖い顔しているけど。なにかあったの?」
「わん…。」
まったく敵の気配を察知しないウルを、呆れながらもなんでもないというワン太であった。
あれから森を散策していること1時間弱であったが、まったく牛のうの字もなかった。時々モンスターが現れるが、ウルスラ一人であっという間に倒してしまう。複数体は出てこない上、通常のウルフ程度なのだ。かなり倒しやすいのだろう。
森で少し足場が悪いという欠点があるが、それでも沼地よりは大分ましだろう。なぜここに人が居ないのか少し疑問に思っていると、
「か、亀?」
大きな亀が目の前に居たのだ、ゾウガメのような大きさで、こちらをじっと優しい目で見ている姿には愛らしさをウルは感じていた。
「か、かめさん。」
「ワン?わんわん…。」
もしかして仲間にするのかというワン太に、ウルは。
「うん!!神社で日向ぼっこしてもらうの!!池もあるし…。」
そう言いながら亀の元へ走るウルに、ワン太は呆れながらも自分もそうやって仲間になったのだと思い出すだった。
亀の目の前についたウルは、しゃがみ亀と目線を合わせると。
「亀さん。私の仲間になってください。」
と手を出すのだった。
その亀はウルの手をじっと見つめると。
「いいじゃろう。」と言うのだった。
「は、話せるんですか。」
「もちろんじゃ。伊達に200年は生きておらんよ。そして娘よ。さきほどと話し方が違うが?」
「そ、それは可愛い亀から話かけられたら…。」
「そうか?それなら仲間の話はなかったことになるのかのう?」
「え?それは無くならないです…。一目見てびびっと来たから。」
「そうかそうか。主はワシのあるじになるのだからかしこまるのはやめるのじゃ。」
「う、うん…。そうするね。名前どうしようかな。」
「いいのを頼むぞい。ワシもたくさんテイムされた奴らを見て羨ましいと思っていたからのう。」
「ジー様で…。ジーニアスのジー様だよ。」
「ジジイではないのかのう?」
「違うよ。ジーニアスって天才って意味だからね。こんなに話せるのは天才だから…。おじい様とも掛けているけど…。」
「最後は聞き取れなかったが、まあいい名前だのう。よろしく頼むぞ。」
「うん。じー様は戦いは得意なの?」
「いんや。どちらかと言うとほれ。あそこに苔や小さな木が生えているじゃろ?だから戦いはあまり得意ではないぞ。」
「そうなんだ!なら私の神社に聖樹と池があるからし、そこで暮らさない?」
「それは願ったりかなったりじゃが?戦いはなくていいのか?」
「うん。私も別に戦いが好きってわけではないから。」
「ならワシもその神社とやらに立派な庭を作ろうじゃないか。よろしく頼むぞ。」
前足を出したジー様と手をつなぎ握手をしてテイムが完了するのだった。
早速ジー様のステータスを確認してみると。
名前:ジー様 レベル:22
種族:ワイズタートル
スキル【植物魔法】【言語☆】【水魔法】【土魔法】【育成】【庭師★】
となっていた。魔法は使えるが、どちらかというと植物のお世話をメインにしているらしく、モンスターを追い払う程度の威力しかないようであった。
庭師のスキルもあり、神社の庭を任せるには持って来いであり、そのうちウルの考えていることができそうでウルは心の中でウキウキしていた。
「それでジー様…。私たちは生クリームを出す特殊な牛を探しているんだけど。知らない?」
「生クリームとな?それは知らないが…。牛ならほれ?」
ジー様が顔をさす場所には、クリーム色の普通の牛よりまるまる太った牛がいた。
「あ!!私の牧場にきてください。」
走りながら牛に近づくウルに、ジー様は
「なんだか落ち着きがない主人だのう。それも可愛らしいが…。」
「わん。」
そう孫を見る目でウルが捕まえるまで見ていたのだった。




