第2話 搾乳機
「ウルさん。ようやく会えましたわ。」
「えっと?どうしたんですか?私に何か用事ですか?」
「たまたま今日はアーサー様は家の用事で…それでオブロンに居たのでウルさんと会いたくなりまして。」
「そうなんですか…私、これから少し出かけるんですけど。」
「あら?わたくしはお供してはいけませんか?」
「いいですけど…牧場関係ですよ?」
「牧場ですか?それなら今ホットですのよ。」
「ホット?あったかいんですか?」
「ええと。まあそんなところです。王都へ行く道中、少し外れたところなんですけど。牧場があったんですのよ。そこでミルクやチーズを買ってみたらとても濃厚で美味しんですの。」
「そうなんですか。」
「ええ。ウルさんも牧場を持っていますけど、何か必要なものでもあるんですの?」
「はい、搾乳機が欲しいですね。牛乳をたくさん欲しいので。」
「搾乳機はあの牧場にはあると思いますわ。」
「本当ですか、でもまだ行けないです…。」
「ウルさん。違いますわ。」
「え?」
「搾乳機があの牧場にあるということは、作れるということですわ。さて行きましょう。」
「あのさー?僕って鍛治師なんだよね?武器なの武器。わかる?」
「すみません…て、ティニーさん。なんでここに?」
「嫌ですわエルメダ様。農具も釘もなんでも作っていらしたじゃないですか。搾乳機も作れるのでは?」
「あのねえ。作れるのと作りたいのは別なの。それに搾乳機って君は牛でも飼ってるの?」
「それはこちらのウルさんが牧場を絶賛経営しておりますの。」
「ま、まだ2頭だけですけど。」
「ほうほう。それなら作っても良いけど一つお願いを聞いてくれたら良いよ。」
ニコニコしているエルメダにウルは恐る恐る聞いてみる。
「な、なんですか?」
「もちろん牛乳はこの町にも売ってくれるんだよね?」
販売の催促であった。
そこからエルメダは不満をぶっちゃけていく。
「この町も悪くないんだけど、野菜もお肉も、魚もぜーんぶ鮮度が悪いの。オブロンとか他の町に行くと毎回美味しくて、もう参っちゃう。」
「それと牛乳とはなんの関係がありますの?」
「あのねえ。来訪者の牧場主でしょ?新鮮に物を届けられるの!牛乳もそうだけど、他のものとか売って欲しいなーって狙いもあるんだ。」
「それならわたくしに言ってくだされば。」
「来訪者の中でも先々に行く君たちに言ってもさー。たまーにでしょ?逆にウルはオブロンに住んでると言ってもいいよ。定期的に物を届けてくれそう。」
「週に何度かダンネルの町に行く用事があるので、別に構いません。牛乳などは少し後になるかもです。」
「良いの良いの。ないのは普通だったから。それじゃ作ってみるか!」
そういうとエルメダは部屋の奥へ行ってしまった。しばらくしたらカンカンと槌の音が聞こえてきた。
「そういえば搾乳機ってどう使うんですか?」
「え?ウルさんは知らないんですか?」
「牛乳を手でやる以外にそういう機械があったと朧げにあっただけですので…」
「まあそんなものですわね。ここはゲームですので業務用のでかいやつではなさそうなのが幸いですわね。」
「え?大きいんですか?」
「もちろん。本当の搾乳機はでかいですわ。動画で見たことがある程度ですが。」
「ど、どうなるんですかね…手頃な大きさが良いんですけど…。」
「それは、エルメダ様だけが知ることですわ。」
緊張感を持っている二人、そしてお目付け役として付いてきたワン太も少しどうなるかわからなく震えていた。
三人がそれぞれ震えていると、音が止んだ。奥からニコニコしたエルメダが手に何かを持っていた。
「これが搾乳カップだよ。これにお乳をぽんと入れるだけで牛乳が取れるよ!一応十リットルは取れるから一頭ごととかでバケツや入れ物に出して空にしたほうがいいね!四つ渡しておくよ!」
「あ、ありがとうございます。どうやってバケツに牛乳を出せるんですか?」
「ここ、ここのボタンを押したらここからばしゃっとね!」
横のボタンを押すだけで、下から全部出るようであった。これなら子供でも簡単に牛の乳を絞れるであろう。
「あ、ありがとうございます。お代は?」
「あー。まあ二十万ってとこかな。」
「はい。お支払いします!」
ウルは支払いを終えると、にこりとしたエルメダに
「牛乳と聞いたらあれを思い出したよ。変な牛がいるって知ってる?」
「へ、変な牛ですか?わかりません。」
「そうなんだ。この町の南に沼があるよね。あそこの周りの森にたまーにいるんだって。濃い牛の乳が手に入るってさ。」
「そうなんですか…!」
「ウルさん、何か覚えがありますの?」
「いえ。でもその食材は覚えがあるんです。」
「へー。それはなんなの?ウルちゃん!」
「生クリームだと思います。」
「生クリーム?パスタとかそれこそホイップクリームとか甘いものには欠かせませんのよ!」
「えー。ウルちゃん捕まえてきてよ!甘いの僕食べたい。」
「あ、あはは、で、できたら飼うことにします。」
二人の圧に、冷や汗をかきながら愛想笑いをするしかなかったのである。




