第19話 ピタ
「これで低級ポーションを作って納品できる。」
「ワン!」
「自分たちの分を残せって? もちろんだけどあまり冒険行かないから少な目でいいよね?」
「モー!」
「アルデが守ってくれるもんね。」
昨日、たくさん採取したアイテムを使って調薬を続けている。低級ポーションはアミンとの訓練により、納品できる品質のものなら作れるようになっていた。
「でも魔力を使うって難しいんだよね。なんとなくぽわーって出せるようになったけど。まさか低級ポーションには必要って知らなかったな。」
「ちゅん?」
「おちゅんさんが教えてくれたんだよね。」
生産ギルドでアミンから数箱ぎっしり詰まった上薬草を渡されてひたすら低級ポーションの作る練習をしていた時、一度作って貰い、見よう見まねで作ってみたが、100を超えてもまったく上手く行かなかった。
一箱を使ってしまうかもしれないという冷汗をかきながらも完成できなかったときに、おちゅんさんがアミンが手から魔力を出していたと教えてくれたのだ。
そこから手から魔力を出す練習をすることにした。それこそウルは他のゲームをやっているわけでも、天才でもない。本来なら手を向け、魔力を出ろと念じるか声に出すだけでいいのだが、それがわかるわけもなく。
「んん!!ん!!ん!出なーい!」
気合で出す練習を続けていた。呆れたアミンが何をしていると聞きに来るまでずっと変なことをしていたが、アミンから魔力を出す方法を教えてもらい、無事作れるようになったのだった。
「みんなのご飯に、神社や牧場や畑とか色々作りたいものがあるからお金は必要なんだよね。低級ポーションはポーションの4倍の値段で売れるし、素材は大森林に行かないといけないけど、敵はダマルで倒していけばいいから…今度シヴァ様にお詫びしに行かないと。」
何をあげればいいか、悩みながら今度は料理を作っていく。スキルの補正で短時間で料理は作れるのだが、孤児院の人やダイタス組、アミンなどにも用意しているため、作る量が尋常ではない。
葉物でサラダを作り、オリーブオイルや塩、果物の果汁でドレッシングを作り、肉はステーキやハムなど加工品を半々に作っていく。
子供たちに人気のあまり取れない牛乳を使ったシチューを作っていく。
今回はいつもよりたくさん作っている。それはある理由があったからだ。
二時間掛けて、一週間の食事ができたウルは、ほとんどをホームのボックスにしまっていく。時間停止が付いているため、ここにいれておけば出来立てが味わえるのだ。
そして、一部をもってダンケルの町へ向かう。
市場をきょろきょろ見渡すと、目的の人物を見つける。
「あ。あの~。」
「おう。あの時の嬢ちゃんか。もしかしてピタに会いたくなったと?」
「それもありますけど、ピタさんに食事の御裾分けを…。」
「…なんだって?」
ウルの発言に、びっくりしている八百屋のおじさんだった。
「あっはっは! 嬢ちゃんは本当に面白いやつだな! ピタに会いたいけど。手土産に手料理ってか。俺たちが料理をもっていっているって聞いてそうしたのか?」
「はい。おじさんのところで買った野菜で作ったものと、私が住んでいるオブロンで取れるもので作ったものを持ってきました。」
「いいじゃねーか。あいつも凝っていない料理ばかりで刺激が足りねーだろ。よし! ついて来い。」
屋台をあっという間に片づけたおじさんは、ウルを連れてピタの元に行ってしまう。
前に行ったが、会えなかった家を前に、ウルとおじさんは立っていた。
がちゃり
「入るぞー。」
「え? 駄目ですよ。勝手に入っては。」
「いいんだよ。毎日入ってるんだ。俺の家みたいなもんだしな。」
そういうと、おじさんは勝手に中に入ってしまった。
さすがに自分も勝手に入るわけにはいかないと、家の前に立っていると、ガチャリと扉が開くと女の子が出てきた。
耳が長く、美しい見た目でエルフということはわかったが、サクラよりも小さな見た目にびっくりしていると。
「入りなよ。ザックも家でゆっくりしてるし。」
「う。うん。ありがとう?」
ピタに促され、中に入って行く。
中は普通の一軒家であり、木工の道具が奥にたくさん見える。ダイタスが持っているものと違い、多種多様な道具にウルはついみてしまっていた。
「好きなの? 木工?」
「そうですね。かなりやっているので。」
「ふーん。師匠とかいるの?」
「木工は居ないですね…他はアミンさんとダイタスさん。それにシーテンさんに教えてもらっています。」
「へー。いいね。」
「はい。とてもいい師匠です。」
「うん。ところで君は私に何の用?」
「えっと…ご飯を持ってきました。ザックさんがご飯を持っていくって言っていたので。先日むりやり押し付けたお詫びに持ってきたんです。」
「ふーん…。じゃあ貰う。」
「はい。こっちがザックさんから買った野菜でつくったポトフです。こっちが、私が住んでいるオブロンの野菜と牛乳で作ったシチューです。」
「うん。ありがと。」
ピタは小さい木造の箱を出すと、そこに食べ物を全部しまった。
「え? アイテムボックス?」
「うん。作った。」
「凄いですね…作れるものなんですね。」
「簡単。あなたでも……無理だね。」
「そ、そうですよね。」
「うん。まあ作ってほしいなら、作ってあげる。」
「そうなんですか?」
「うん。お金と素材があればいいよ。」
「ち、ちなみにおいくらですか?」
「素材アリなら3億G、素材ナシなら10億G。」
「た、頼めるようになったらお願いします。」
「いいよ。他の人は駄目だから噂広めないように。」
「もちろんです。」
玄関先で話していると、部屋で休んでいるおじさんがこちらに来た。
「お前ら、話しているのはいいけど、こっちで座れよ。落ち着かない。」
「私の家、どこで何をしても自由だけどね。」
「いいじゃねーか。最近面倒なやつがいるからって面倒みてやってるだろ?」
「礼はした。」
「まあな。ウルも座って話せ。」
「同意、ここに居るなら座る。」
「は、はい。」
しどろもどろになりながらも、ウルは座ってピタとザックと話すことにした。
「それでザックは、この子をなんで連れてきたの?」
「ん? そんなのいい子だから会わせたくなったからに決まっているだろ。」
「それで前はお嬢様を連れてきたけど。晴れて私のストーカーだけど?」
「そんなこともあったな。それで今回も外れってか?」
「ううん。」
「え?」
「ウルは凄いというか不思議、清廉なる神や、逆に暴れん坊の神、神獣や聖獣、聖樹に好かれている。うーん、不思議。」
「え? え? わかるんですか?」
「まあね。私の目は特別。それで私の友達候補とはザックは言っていたけど。」
のほほんとしていたピタであったが、その言葉を口にした後に、鋭い目つきになった。このゲームに来て一番強い圧力を出しながら、こちらを見定めるような顔をしている。
回答次第ではその場で死が確定しているかのような、そんな恐怖に駆られる気がしていた。
ウルは、しばらくピタの眼をみると、じっと黙っている。
「あなたは私と友人になりたいの?」
とピタはゆっくりとウルに語りかけるのだった。




