第12話 人見知り木工師と市場
「それで、木工師はどういう人なんですか?」
「えっとですね…一言でいえば人見知り? 気に入った人以外にはまったく話そうとしないんですのよ。」
「それって…私は大丈夫なんでしょうか?」
「一応わたくしは縁を持っているので大丈夫かと。最悪話せず終わる可能性もありますが。」
「は。はい。」
ウルは一抹の不安を抱えながらも行くしかなかった。ウル自身も口下手で知らない人だと緊張してしまうので、親近感は覚えていたが。同じもの同士なら話せない可能性が高いのだ。もしかしたらティニーがせっかく案内してくれているのに、残念な結果になってしまうのかと冷汗をかきながらもティニーの後をついていくのだった。
木工師の家はエルメダの場所からかなり歩き、周りには誰もいない場所にぽつんと一軒家が建っていた。周りとは隔絶した場所に作られており、人見知りもウルよりひどいであろうと見て取れた。今回はティニーもノックをして反応を待っており、しばらく何も返事がなかった。
「ティニーさん。居ないんじゃないですか?」
「いえ、居るとは思いますわ。たぶん私と知らない人を感知したので無視しているだけですわ。」
「え? それならどうしたらいいんですか?」
「うーん。もう少し待ってみますわ。」
「はい。」
「ちゅん?」
「おちゅんさん。ここに居る人に会いたいけど、会えないか少し待っているの。」
「ちゅんちゅん?ちゅん。」
「おちゅんさまはなんていいまして?」
「え? 居たらでてくるでしょ。居ないからどこか行こうよって言っていますね。」
「おちゅんさまは人見知りというのはわからないのですね。」
「それはそうですね。雀が人見知りとは聞いたことないですから。おちゅんさんも私と友達になる前に会ってもいい人と会いたくない人が居たでしょ? 私の素性がわからないからまだ会いたくないの。」
「ちゅん!」
「ありがとうね。でもそれはおちゅんさん達にしかわからないよ。」
「なんといいましたの?」
「ウルはとてもいい人って言ってますけど。初めての人に私の人となりをすぐにわかってもらえるはずないですから…。もう行きますか?」
「そうですわね…今度ご紹介いたしますわ。申し訳ないですわ。」
「いえいえ。全部が全部上手く行かないですから。それでは市場のほうへ参りましょう。わたくしのパーティーでも料理が得意な人が毎回市場で買い物をしているんですのよ?」
「確かに見て買うのがいいですしね。新鮮なものがあったら買っておきたいですね。」
「ウルさんはお料理が得意なんですのね。」
「多少はですけど。家でも作っていますから。」
「そうですのね…ところでウルさんは醤油は作れますの? サクラが醤油や味噌、ミリンなど調味料が欲しいと毎回ぼやいていまして。」
「え? 作れないですよ! 漫画で大豆と塩とか麹が必要とか聞いたことありますけど。」
「そうですわね。何か見つかったら教えていただけますか?」
「それはもちろん構いませんけど。」
ウルたちは木工師に会えなかったが、そのまま市場のほうへ向かうのだった。
がちゃ
扉の開く音がしたと思ったら、140センチ弱の小さいエルフが周りをきょろきょろしたと思ったら誰もいないことを確認していた。ウルたちがどこかへ行ったと思ったらほっとした顔をしてつぶやく。
「あの令嬢様、我が強くて会いたくないんだよな……。」
ウルに合わなかった理由はまさかのティニーが苦手だったからだった。
「ウルさんはオブロンでは市場とか行きますの?」
「そうですね。野菜とか、精肉店にパン屋さんも行きますよ。」
「そうなんですのね。パン屋さんがあるとは思いませんでしたわ。」
「喫茶店もダンケルにありますから。探したらなんでもありそうですね。」
「確かにそうですわ! 市場もしっかり見てまいりましょう。」
「はい。」
ウルたちは市場に着いた。プレイヤーや住民が何十人もおり、それぞれ買い物をしているのだ。オブロンでも見慣れた光景ではあるが、市場のようにぎゅうぎゅうに様々なものが置いていないのだ。
「人がたくさんですね。」
「ええ。ですけど意外と掘り出し物があるとか聞きますわ。さっそく見ていきましょう。」
「は。はい。」
「少し見てもよろしくて?」
「おう。美人な二人組だな! 買っていくならなにかサービスするぞ?」
「あらお上手ですわね。ウルさんももう少しこっちに来まして?」
「はい…。」
「なんだ、こっちのエルフの姉ちゃんは人見知りかい!あの子を思い出すよ。」
「あの子?」
「おう!一人が好きでずっと部屋にこもってるから俺らが食事を届けたりするんだぜ?」
「あ、もしかして?」
「そうですわ。木工師のピタ様の話ですわ。」
「なんだ? あんたらはピタの知り合いかい?」
「いえ。今日会いに行ったら会えませんでしたの。」
「ああ、最近来訪者が何人か連続で来ててな。余程気に入ってるやつじゃねーとまず出てこねーぞ。」
「そうなんですね。」
「何か用事があったのか?」
「私がティニーさんにこの町を紹介してもらってるうちの一つだったんです。」
「弓や杖のような物を扱ってましたので…ピタ様を紹介するのが宜しいかと思いまして。」
「まあ無理だな。傲慢なお嬢様が手下連れてずっとやかましかったからな。ピタは今来訪者嫌いとなってやがる。」
「それではしばらく会えませんね。」
「まあそうだな。何か買っていくかい?」
「色々教えて貰いましたし。少し買っていきます。」
「お! しっかりわかってんじゃねーの。お嬢さん。」
「ウルです。お嬢さんってティニーさんみたいな人ですから。」
「おう! ウルはなんだか暖かい良いやつだな。ピタに会いたくなったら俺に言え。会わせてやる。」
「え? ピタさんも急に会うのはしんどいんじゃないですか?」
「まあそうだけどな? 俺らもそろそろ友人の一人は作れって言ってるんだよ。ウルみたいなのはあいつと仲良くなれそうだからな。」
「は、はあ。」
「まあ、気が向いたら言ってくれや。俺は基本ここに居るからよ。」
「ありがとうございます。」
最初に八百屋のおじさんから野菜を買った。ナスやトマトなどかなり美味しそうなものがあったのでウルは後でスープにしようかと内心喜んでいた。
それから市場で新鮮な野菜をいろいろなお店で買うのだった。ウルはダンケルの町を満喫するのだった。




