第13話 第三エリアボス戦
ティニーとダンケルの町へ行った2日後、またティニーと約束をしていたリンネルへ行くことにした。
今回はワン太たちは全員来ており、ティニーに聞いていた情報から色々なアイテムをウルは調薬していた。
もしかしたら数日神社を開ける可能性があるため、マリーとジェーン、そしてジャックに報告していた。
「リンネルかー、布とか有名らしいよな。」
「ウルさん。布が欲しいです。」
「ジェーン。お願いするものではないですよ?」
「いえいえ。そもそも布とかたくさん欲しかったので。ジェーンちゃんたちの分も買ってくるよ?」
「やったー!」
「ウルさん。俺も欲しいよ!」
「もちろん。ジャック君たち男の子の分も買ってくるから。」
「よかったぜ。」
「それで二日くらいで戻りますけど。もしかしたら長くなるかもなので。」
「ええ。気を付けて行ってらっしゃい。」
「待ってるぜ。」「早く帰ってきてね?」
「うん。行ってきます。」
次に神社のネイアにも伝えておく。最近は聖水が取れる池と小さな聖樹の近くで休んでいることが多い。
ウルがイベントポイントで交換していた卵を優しく抱きしめているのだ。卵を所持していることがわかったネイアは私に欲しいと言い出したのだ。ウルもずっとお世話になっているネイアの初めてのお願い事なので二つ返事で渡してしまっているが、あれから卵はうんともすんとも言わないのだ。今度テイマーギルドで聞こうかと思っているウルだった。
「ネイア様。少し遠い町に行ってきます。」
「ええ。たまには冒険というのも悪くないわ。楽しんできなさい。」
「ありがとうございます。卵は変化ありませんか?」
「そうなのよね。少し頑張りすぎちゃったかしら。」
「え?」
「何もないわよ。狛犬たちと行くの?」
「そうですけど。来訪者の一人も追加で。」
「あら。サクラかしら? それともジャンヌだっけ?」
「いえ。ティニーというこの前知り合った人なんです。」
「あら? ウルが友人を作るなんて。」
「へ? た、確かに友人みたいですね。」
「今度紹介しなさいよ? 私もウルの友人なら一度見ておきたいから。」
「神事の時に居ましたよ?」
「もしかして、あの男と一緒にいた子達かしら?」
「アーサーさんですか?」
「アーサーと言うのね。創造神ガイアの寵愛を受けた神子だから凄まじいわ。」
「はあ。」
「まあその子たちなら安心だわ。行ってらっしゃい。」
「は、はい。行ってきます。」
全ての用事を済ませたウルは、ワン太と共にダンケルの西門近くまで移動した。門から出てまっすぐ行けばリンネルまで行けるが、西は状態異常を振りまくモンスターが多いのだ。
状態異常を回復できるポーションをたまたま作れたのであった。いつもの林にダンケル北の森などで素材は揃った。品質はあまり良くないが、低レベルの状態異常ならこれでなんとかなるらしいというのはサクラから聞いていた。
サクラは今回の話をしっかり伝えており、今度たくさん遊ぶ約束をしてなんとか許してもらえたのだ。
【サクラ:来週は私と遊ぶ】
【ウル:もちろん! 孤島にも行けるからね。】
【サクラ:じゃあ来週は孤島に行く。】
というのが送ったメッセージだ。
西門を出たところで待ち合わせをしており、すぐにティニーは見つかった。
「すみません。遅れました。」
「いえ。わたくしが早すぎただけですわ。」
「そうですか。」
「行くまえに軽く説明いたしますわ。ワン太様も聞いておいた方がいいですし。」
「はい。状態異常の鱗粉を撒く蝶々がいるんでしたよね?」
「はい。そうですわ。」
ティニーがいうには、西の森には状態異常を出す蝶々を始めとした、虫のモンスターが出てくるのだ。
代表的なのが蝶々であり、色が違う蝶々が飛んでいて、紫は毒、黄色は麻痺、青は眠りといった用に、色によって使う鱗粉が違うので予測はできる。
それに隠れて毒針を撃ってくる隠れイモムシに、素早い動きと針で毒状態にするハチが出てくるらしい。
おちゅんさんやワン太で素早いモンスターを倒すことと、アルデが攻撃を引き受けて状態異常になり、それを回復するのが一番良い作戦らしい。
アルデの負担に少し考えるウルであったが、今までも何回も過保護に接し怒られていることを理解していたウルは、アルデにしっかりいうことにした。
「アルデ。今回はかなり厳しい戦いになるけど。大丈夫?」
「モー!!」
「そうだよね。しっかり状態異常は回復するから、私たちを守ってね。」
「皆様仲がよろしいですわ。」
「はい。大事な家族みたいなものですから。」
「良いことですわ。パーティーというのは信頼関係無くては難しいですわ!」
ティニーに敵モンスターの行動を最後に聞いて、早速出発することにした。先頭にワン太とおちゅんさんの探知コンビ、その後ろにアルデとその頭に乗っているチラリン。ウルとティニーがその後ろで、最後部はウルスラで後ろから来たモンスターを倒す係となっている。
森での戦闘はかなり順調に進んでいた…一部を除いて。
「え?」
「ウルさん!」
「Zzzz」
蝶々が毎回複数出てくるのだ。戦闘をしながら結界を張れるわけもなく、抜けてきた蝶々にウルはやられてしまう。
チラリンがウルのアイテムバックからポーションを取り出して掛けることですぐに解消しているが、なぜか蝶々はウルばかりに攻撃するのだ。
「なぜウルさんばかり狙われているんでしょうか?」
「私も知りたいです。舞しかしていないんですけど。弓もこの森で一度も使っていないです。」
「もしかして、舞や歌のヘイトがかなり高いのでは?」
「ヘイトですか?」
「ええ。この森のモンスターは状態異常を出す代わりに攻撃はHPは大したことがないんですわ。その代わり回復をする人に対して通常よりヘイトが向きやすいのでは?」
「なるほど。舞は控えたほうがいいですね。」
「そうですわね。今のところ回復は間に合っていますし。そのかわりボス戦には注意した方が良いですわね。」
「ですね。」
「ボス戦ではわたくしの力も存分に使いますわ。」
「凄いですよね。島の時も出してましたし。」
「そうですわね。精霊を使役し、精霊術を使うのがわたくし精霊術師ですから。」
「そうなんですね。精霊って何人使役できるんですか?」
「わたくしはまだ三体ですわ。中級一体に最下級精霊が二体です。」
「等級があるんですね。」
「ええ。ウルさんで言うところの進化みたいなものですわ。」
「なるほど。」
「ちなみにウルさんが見たことがあるのは下級精霊ですから。さらに強くなりましたのよ?」
「え?」
「楽しみにしていてくださいな?」
そういうとティニーはニコニコした顔でセーフティエリアから出るのだった。
「こ、怖いですね。」
「大丈夫ですわ。わたくしたちは適正よりだいぶ上ですから。何回もミスしても倒せるレベルですの。」
ウルが怖がるのは無理もない。1メートルより大きいサイズの蝶である。鑑定結果はビックバタフライ、他の情報はない。
アルデがウルたちの前に立ち、後ろにいたウルスラが先頭で思い切り威嚇している。
ビックバタフライの最初の攻撃は風魔法だ。旋風のようなものを数個生み出すと、こちらに飛ばしてくる。
アルデが旋風に自慢の角でカウンターをしながら、全部引き受ける。
ウルは最初はアルデにポーションを振りかける回復役として活動する。
旋風が終わるとおちゅんさんが聖砲を羽にぶつける。ワン太も飛びかかると爪で羽を攻撃する。羽にダメージが溜まったのか、ビックバタフライはゆっくり地面に落ちる。
チャンスにめざといウルスラが爪やパンチで連続攻撃をしていく。チラリンも大きい岩や火を出す魔法でダメージを重ねていく。
ビックバタフライの体力が半分を切ったのだろう。上空に飛び上がり風の鎧を纏うと、ウルたちに小さな風の刃を連続で飛ばしてくる。
慌ててウルとおちゅんさんとチラリンとウルスラがアルデの後ろに回るとポーションを掛け続ける。
「アルデ! 頑張って!」
「モー!」
アルデが耐えている頃、ティニーはずっと小さな火の塊に話しかけていた、戦闘が始まってからずっと話しているのだ。
ようやく話が終わったのだろう。ティニーは
「顕現してくださいまし! サラマンダー!」
火の塊が急に大きくなると、ビックバタフライよりは小さいが、火でできたトカゲが現れた。宙に浮かんでおり、真っ赤な身体がその身の暑さを物語っていた。大きな尻尾は熱を蓄えているのだろう。
「え? え?」
「これがわたくしの相棒! サラマンダーですわ! さてサラマンダー! 蝶を燃やし尽くしてくださいな?」
「ガー!!」
そこから先は一方的だった。ビックバタフライが纏っている風にも火がつき、すぐに解くしかなくなったのだ。後はサラマンダーの口から出た火炎放射で羽がズタズタになり、大きな尻尾で振り下ろして地面に叩き落とすのだ。
動けない蝶に容赦なく火炎放射を続けると、ドロップアイテムが手に入った。倒したのだ。
「つ、強い。」
「色々制限がありまして。今回はウルさんにかっこいいところを見せたくて最強にしたんです。」
「そうなんですか。かっこよかったです!」
「照れますわね。」
顔を赤くしたティニーは、思い出したかのように。
「これで第3の町に行けますわね!」
「そうですね。どんな町かなー。気になるね?」
「わん!」「ちら!」「くあ!」
「モー」「ちゅん。」
乗り気なワン太とチラリン、ウルスラに対し、アルデとおちゅんさんはあまり裁縫には興味がないみたいだ。
「でもアルデ? おちゅんさん? サクラちゃんが買ってきた果物もここで売っているんだよ?」
「モー…モー!」「ちゅんちゅんちゅん!」
興味ないと言おうとしたが、食いつきぶりを見られていたのを思い出し、諦めたアルデと果物大好きなおちゅんさんのテンションが上がったところで、みんなとリンネルの町に向かうのだった。




