第10話 老婆
「それはそうと。ウルさんは凄い方ですね。」
「え? どういうことですか?」
テイマーギルドから出たらすぐにティニーはウルのことを褒めていた。ウルは意味も分からずポカンとしていた。
「聖獣や神獣のことはわたくしでもわかりますが、色々な情報を初めて会った方からあれほど聞けるとは。」
「ムイさんがテイマーだからじゃないですか? 私の仲間を気に入ってくれたので。」
「それも凄いですわ。わたくしは普通の雀さんだと思っていたので! 聖獣見習いばかりだとか。」
「そうみたいですね。私自身がまったく戦闘に貢献できていないのでみんなに頑張ってもらっていますよ。」
「それは当然ですわ。苦手なものをお互い支え合うのがパーティーですわ。わたくしたちのパーティーも全員が全員苦手なものがあるんです。」
「そうなんですか? みんな完ぺきな人って感じがしましたけど。」
「とんでもないですわ。わたくし含めてみんな苦手なものが多いんです。ちなみにわたくしは料理が凄く苦手ですわ。」
「え? 意外ですね。」
「よく言われますわ。何度練習しても上手く行くことはなかったです。なので諦めていますのよ?」
「そうなんですね。」
「ええ。それでは次の場所に行きますけど。ムイ様が教えてくれた場所はいつ行きますか?」
「どうしましょう。先に行っておきますか?」
「そのほうが良いですわ。先ほど教えてもらったところは…少し離れたところですが。普通のお家ばかり並んでいた気がしますが。こういう場所に穴場があるものですから楽しみですわ。」
「そうですね。でもアクセサリーってなんですか?」
「装備欄に出てくるアクセサリーですわ。ウルさんも何かつけてないんですか?」
「花冠ですかね? 孤児院の子供達に貰ったんです。」
「孤児院の子供達と仲が良いんですの?」
「そうですね。男の子たちは牧場で働いてもらってますし。女の子は神社で巫女の見習いになってもらってます。」
「なるほど…わたくしたちが孤児院に行った時にはみんな警戒心が高く、アーサー様とカエデしか打ち解けられませんでしたわ。」
「私も最初は全くでしたけど、クエストで孤児院のみんなと歌って踊ったり、私のクエストでの成功と失敗を話したりして段々と仲良くなりました。」
「大事ですわね。わたくしも住民の皆様と打ち解けたいですわ。」
「良いですね。それでここですね。」
ウルたちが雑談をしながら歩いていくと、古い民家に着いたのだ。テイマーギルドのように看板も何もないのでウルは右往左往していた。入る勇気が出来ないのだ。
「こう言う時は思い切るべきですわ。間違えたらしっかり謝ればいいんですの!」
ティニーはそういうと、数回ノックして入ってしまった。ウルも後を追うように入っていった。
部屋に入ると普通の一軒家であり、カウンターすらないのだ。中央にテーブルがあり、椅子に座った老婆がこちらを鋭い目つきで睨みつけていた。
「なんだいあんたら。」
「あ、あ、あの。」
「失礼いたしますわ。わたくしたちはテイマーギルドのムイ様にアクセサリーを作ってもらうと良いと言われたので来ましたわ。」
「あいつがね〜。本当かね?」
「ウルさんが手紙を貰っていますわ。」
「あの…これです。」
「ふ〜ん…こ、こいつは?」
老婆が手紙を最後まで見ると、驚いた顔でウルをしばし見つめる。目は軽く光っているが、何をしているのかわからない。
(あ、あの?これって何されているんですか?)
(多分鑑定かそれに似た何かですわ。プレイヤー同士ならマナー違反ですが、住民にされた場合は受け入れておくのが吉ですわ。犯罪者以外は。)
(わかりました。)
しばらく見つめていたと思ったら。
「あんたの名前は?」
「ウルです。」
「ティニーですわ。」
「それでウル…あんたは巫女だろ?将来は大巫女や神巫女になりたいのか?」
「え? 職業については特に考えていないですけど…でもアルテミス様を祀りたいです。」
「そうかい…これからも仲間の聖獣と共に行きたいかい?」
「もちろんです。」
「そうかいそうかい…二週間後にここに来な。あんたに渡したいものがある。」
「えっと〜…」
(ウルさん、ひとまず受け入れてみては?貰う時に断ることもできますわ。)
「はい。わかりました。」
「じゃあ準備するなら出ていきな。話すことはもうないよ。」
老婆に追い出される形でウルとティニー、そしてようやく目を開けたおちゅんさんはダンケルの町案内という本題に戻るのだった。




