#04花になる前に
首の後ろに現れた赤い星。
朝になっても、それは消えることはなかった。
リビアは誰かに相談しなければと思いながらも、言葉にすることができない。
学校ではいつも通りの日常が流れている。
けれど、リビアだけは昨日までとは違う世界を見ていた。
そんな中、ある出来事をきっかけに、彼女は家族へ自分の変化を伝える決意をする。
赤い種を巡る選択は、少しずつ彼女の日常を変えていく。
第四章
朝になっても。
首の後ろの赤い星は、消えていなかった。
でも、夜に見た時とは明らかに違っていた。
暗闇の中で見た光は、なんだかとても怖かった。
何かが始まってしまったように感じた。
でも、朝の光の中では。
それは、静かにやわらかく揺れていた。
まるで、ただそこにあるだけのように。
私は鏡を見る。
「……」
昨日、決めたはずだった。
朝になったら話す。
必ず話す。
でも、まったく言葉が出てこなかった。
「リビア?」
母の声。
「なに?」
「学校、遅れるわよ。」
時計を見る。
いつの間にか時間が過ぎていた。
「あっ。」
私は慌てて準備をした。
(今夜こそ、話そう。)
そう思いながら。
学校では、いつも通りの日常が流れていた。
笑い声。
教室の音。
先生の声。
何も、変わっていない。
でも、私だけが昨日までとは違っていた。
首の後ろに触れそうになって、何度も手を止めた。
誰にも見せられない。
今日は、念のため髪を下していた。
やわらかくなったとは言え、赤い光を見せるわけにはいかないから。
(きっと、私よりもこの灯を宿したものの近くに来る方が怖いだろうし….。)
誰にも言えない。
言ったら、周りと距離が出来て、きっと関係性も変わってしまうのだろう。
周りの急激な変化に対して、その時私は、それを受け入れられるだろうか?
そんな時だった。
「リビア。」
振り返る。
ミカエルだった。
「昨日、休んでた子いたでしょ?」
「うん。」
「手術、したんだって。」
その言葉に、胸が少し苦しくなる。
「昨日までは、普通だったのにね。」
ミカエルは小さく言った。
「なんか…変な感じするよね。」
私は何も言えなかった。
手術をしたら。
その人は、その人のままなのだろうか。
それとも。
何か大切なものを置いてきてしまうのだろうか。
ミカエルも、私の首の後ろの変化を話してしまったら、私たちは今までとは変わってしまうのだろうか。
帰り道。
私はいつものバス停に立っていた。
夕方の光。
人の声。
車の音。
いつもの場所。
でも、そこに、またあの人がいた。
老婆。
「芽生いたみたいだね。」
私は息を止めた。
「……どうして分かるんですか?」
老婆は静かに私を見る。
「分かるよ。」
私は首の後ろに手を置いた。
「この間の言葉…」
「どういう意味だったんですか?」
「私の種は、このままでも大丈夫ってことなんですか?」
老婆は、少しだけ空を仰いだ。
「さあ?どうだろうね。」
「選択は、あなた次第だよ。」
「でも……」
聞きたいことはたくさんあった。
どうして知っていたのか。
なぜ、私には必要ないと言ったのか。
でも、言葉にならなかった。
気づいた時には。
老婆の姿は、忽然と消えていた。
家に帰る。
夕食の時間。
今日は、ボルシチだった。
赤い色のスープ。
いつもの食卓。
父と母の声。
昨日までと同じ時間。
でも、私だけは違った。
私は、箸を置いた。
「……見てほしいものがあるの。」
母が、顔を上げる。
私は、思い切ってしかしゆっくりと慎重に髪を上げた。
首の後ろ。
赤い光。
父も母も、言葉を失った。
「……これは!?」
父の声が、震えてた。
父は、種を取り除いた人だった。
だから、種は、取り除けば終わる。
そう信じていた。
でも、目の前にあるものは、その考えでは説明できなかった。
(どうして昨日言わなかったんだ。)父は、そう思った。
でも、その言葉は口には出なかった。
言えるはずがなかった。
私が怖くて言えなかったことを、父も分かっていたから。
「私も…初めて見るわ。」
母が、静かに言った。
「こういう人がいるとは、聞いたことがある。」
「でも、実際に見るのは初めて。」
母は、少しだけ目を伏せた。
その瞳は、微かに潤んでいた。
「私は、二十歳まで光を宿さなかった。」
「でも、あなたはまだ十五歳。」
「少しだけ、心配ね。」
その言葉で、胸が締めつけられた。
「明日、病院に行きましょう。」
母は強くしかし包み込むような声で、そう言った。
その夜。
私は眠れなかった。
首の後ろの赤い光。
老婆の言葉。
父と母の表情。
全部が頭から離れなかった。
そして、あの場所に。
また、誰かがいる気がした。
窓の外を見る。
暗い道。
静かな夜。
そこには、誰もいない。
でも、遠くから声が聞こえた気がした。
「やっぱり、始まったね。」
私は振り返った。
そこには。
誰も、いなかった。
※本作品は、AIを創作パートナーとして迎え、対話を重ねながら制作しています。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
『夜光種』第四章となります。
今回は、リビアが自分の中に起きている変化と向き合い、そして家族へ伝える回となりました。
種とは何なのか。
それは本当に恐ろしいものなのか。
失うことと、受け入れること。
少しずつ物語の中で描いていければと思っています。
引き続き、リビアたちの物語を楽しんでいただけましたら幸いです。




