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夜光種  作者: 朝裏 刻


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3/11

#03赤い種

発芽を前に、リビアの心は揺れていた。


種は危険なものなのか。


それとも、まだ知られていない何かがあるのか。


家族との会話の中で、彼女は改めて「種を取り除く」という選択と向き合うことになる。


そんな中、首の後ろの赤い星に変化が起きる。


満月でもない夜。


まだ発芽の日ではないはずなのに。


リビアは初めて、自分の中にあるものと向き合うことになる。


第三章 




あの老婆と出会った日の夜。


私は、自分の部屋にいた。


何も変わらない夜の時間。


家族の声が、聞こえる。


夕食の片付けをする音。


食器が触れ合う音。


父と母の会話。


何も、変わらないはずだった。


なのに、私の意識は、そこになかった。


「もうすぐ発芽だね…」


その言葉が、何度も頭の中でこだましていた。


もうすぐ。


その言葉だけが、離れなかった。


(もうすぐって……いつ?)


私は、何度も首の後ろに触れた。


小さな赤い星。


昨日までと、同じはずなのに。


今日は、なんだか違って見えた。


これは、一体何なのだろう。


綺麗なものなのか。


恐ろしいものなのか。


今の私には、まったく分からなかった。


「リビア!」


母の声がした。


返事をしていなかった。


「リビア?」


もう一度呼ばれる。


「…え?」


顔を上げた。


「何?」


少し困ったように笑った。


「何って…さっきから何度も呼んでるのに。」


「聞こえてなかった…」


自分でも驚くほど、小さな声だった。


父が、静かに言った。


「手術の予約を取ったらしいぞ。」


胸が、少しだけ苦しくなった。


「……手術。」


「そうだ。」


父は、迷いなく続けた。


「発芽する前なら、問題ない。取ってしまえば、大丈夫だ。」


その言葉に、なぜか違和感があった。


(大丈夫? 何が大丈夫なの?)


簡単な言葉だった。


でも、私の中では、そんなに簡単なことではなかった。


母が、父を見る。


「あなた。」


「何だ?」


「リビアに、今それを言っても不安になるだけよ。」


父は少し黙った。


「でも、事実だ。」


「分かってる。」


母は静かに続けた。


「でも、この子が怖がっているものは、種だけじゃないと思う。」


私は、顔を上げた。


父は、何も言わなかった。


母は、続ける。


「失うかもしれないもののことも、考えているんだと思う。」


その言葉に、胸がざわついた。


どうして分かるのだろう。


母は、種を持ったまま生きている。


父は、種を取り除いた。


二人は、同じ場所に立っていない。


だからこそ。


私は、余計に分からなくなった。


部屋に戻ると、また考え始めた。


あの老婆は、何だったのだろう。


「一度取り出したんだよ。」


「でも、取り戻したんだよ。」


そんなことが、本当にあるのだろうか。


学校でも。


病院でも。


誰も、そんな話はしていなかった。


でも、あの人の言葉は嘘には思えなかった。


もし本当なら。


今まで聞いてきた話は、何なのだろう。


種は、本当に危険なものなのか。


それとも、危険だと思われているだけなのか。


大人たちは、本当に全部知っているのか。


それとも、大人たちも、誰かが決めたことを信じているだけなのか。


そんなことを考えている自分が、一番怖かった。


まるで、世界の全部を疑っているみたいだった。


私は、首を横に振った。


(違う…。)


これは、ただの恐怖だ。


発芽するかもしれないという恐怖で、私は、きっとおかしくなっているだけなんだ。


そう思った。


でも、すぐに別の考えが浮かんだ。


もし、この考えそのものが、種の影響だったら?


私が今、疑っていることも。


怖がっていることも。


全部、種が見せているものだったら?


私は、今の自分の考えすら信じられなくなっていた。


何が正しいのか分からない。


種なのか。


思春期だからなのか。


恐怖のせいなのか。


それとも…。本当に、何かがおかしいのか。


その時だった。


首の後ろが急に、熱を持った。


「……えっ?」


私は、急いで鏡の前に立った。


髪を、上げる。


そこには….小さな赤い星があった。


でも、それは昨日までとは、明らかに違っていた。


そこには確かに、淡い光が揺れていた。


私は、息を飲んだ。


窓の外を見る。


月は、まだ出ていない。


紅い月ではない。


満月でもない。


発芽が起こるはずの日ではない。


(なのに、どうして?)


種は、明らかに光っていた。


「嘘……?!」


指先が、震えた。


老婆の言葉が、頭の中によみがえる。


「もうすぐ発芽だね…」


本当だった。


あの人は知っていた。


でも、それなら…私は、これから一体何を信じればいいのだろう。


今まで教えられてきたことは、本当に正しかったのだろうか。


それとも、まだ誰も知らない何かがあるのだろうか。


鏡の中の赤い光を見る。


とても綺麗だった。


まるで、宝石みたいだった。


そこには、確かに赤い光を宿したそれがあった。


失いたくないと、なぜか思った。


でも、同時に怖かった。


もし花が咲いたら。


私は、どうなってしまうのだろう。


私は、私のままでいられるのだろうか。


むしろ私とは何なのだろうか。


最早わからなくなっていた。


その夜、私は初めて、自分の中にあるものを恐れた。


家族を起こそうと思った。


何度も扉の前まで行った。


でも、できなかった。


父と母の眠る部屋を見る。


まだ知らない、この赤い光のことを。


私は、そっと部屋に戻った。


明日の朝、必ず話そう。


そう決めて、灯りを消した。


暗闇の中で、ただ首の後ろの赤い星だけが、静かに光っていた。






※本作品は、AIを創作パートナーとして迎え、対話を重ねながら制作しています。



読んでいただきありがとうございます。


『夜光種』第3話です。


今回は、リビアが「種」について、そして自分自身について悩むお話でした。


当たり前だと思っていたこと。

誰も疑わなかったこと。


でも、本当にそれが正しいのか。


少しずつ見えてくるもの、そしてまだ分からないものを楽しんでいただけたら嬉しいです。


それでは、また次のお話でお会いしましょう。

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