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【Side:南村華恋】砕けた籠

「こんにちは。私は南村華恋、雪狐小隊の隊長、コードネームは白鳥の湖です。これより、隼小隊との交代を行います」


「お?君たちが噂の、任務達成率がやたら高いっていう雪狐小隊か?なんてこった……隊長さん、うちの娘と同じくらいの年じゃないか!?はじめまして、俺はマーヴィン。コードネームは錫の兵隊、そして隼小隊の隊長でもある。会えて嬉しいぜ、雪狐小隊のみんな」


今、私の目の前には、がっしりとした体格の金髪の外国人男性が立っていた。


マーヴィンさんは退役軍人だ。


異世界侵攻が発生した時、彼は家族と一緒に東京へ旅行に来ていた。


その時、彼は妻と娘を守るために斧で斬られ、重傷を負った。


幸い、【アーク】の救援部隊が間一髪で現場に駆けつけたことで、彼は一命を取り留め、妻と娘の二人も無事だった。


その後、彼は家族と共に【アーク】に加わった。


同時に、ママが当時呼びかけて結成した特殊部隊にも参加し、地球(人類)の未来のために、自分にできることを捧げるようになった。


「え?娘さんは今年、おいくつですか?」


「十四歳だよ。俺に会うたびにくっついてきて、パパって呼んでくれるんだ。めちゃくちゃ可愛い子だぜ」


「おお~それなら、私は彼女のお姉さんみたいなものですね。あと数か月で、ちょうど十六歳になります」


「すごいな。そんな若さで隊長だなんて」


「ふふ、そんなことはありません……」


その後、私は隼小隊の他の隊員たちとも、簡単に言葉を交わした。


しばらくすると、彼らは自分たちの荷物をまとめ始め、地図に記された安全な撤退地点へ向かい、そこから【アーク】へ戻る準備を整えた。


「では、俺たちは先に行かせてもらう。元気でな、雪狐小隊のみんな!また一か月後に会おう!」


「はい。皆様の道中のご無事をお祈りしています!」


彼らはそれぞれの荷物を背負い、私たちに手を振ってから去っていった。


「ふあぁ……これから一か月、ここで過ごすんだよね?ふふん、アタシが何を持ってきたか見てよ」


水晶の球は自分のリュックの中をごそごそと探ったあと、トランプと「UWU」と書かれたカードを取り出し、拠点内のテーブルの上に置いた。


「えっと……UWUカード?何これ?」


「え?これは友情破壊カードをベースに改良して、それから研究開発部門に頼んで、空き時間に作ってもらった独☆創☆性カードだよ?」


「何が独創性よ……このカード、結局は赤、青、黄、緑の四色に分かれてて、その上に数字まで印刷されてるじゃん。これ、どう見てもパクリなんだけど……」


「へへん、それはまだ全部のカードを見ていないからそう言えるんだよ。ドローカードは全部、罰ゲームカードに変えてあるの。罰ゲームカードを出したら、次の人はカードに書かれていることをしなきゃいけないんだよ」


「次の人の頭を撫でる、変顔をする、水晶の球にお菓子をあげる……?最後のやつ、どういうこと!?」


陽葵は水晶の球が持ってきたUWUカードを広げて確認したあと、何とも言えない顔で、隣でにへらにへらと笑っている本人を見た。


……私はあとでトランプだけにしておこう。


「白鳥の湖、お前は何を持ってきたんだ?」


「私は枕と、着替えを少し持ってきただけです」


「ん?思ったより荷物が少ないんだな」


「足りない物があっても、下の階にある廃墟になった店を探せば、まだ多少は使える物が見つかるでしょう?」


そう言う影だったが、彼が持ってきた荷物の量も、私とほとんど変わらなかった。


ただ、袋の一つにはなぜか、ビールと煙草がたくさん詰め込まれていた……


「お酒はほどほどにしてくださいね?私たちは休暇に来たわけではありませんから」


「了解~ちゃんと気をつける。任務に支障は出さないから、心配しなくていい」


私たちの拠点は、都心にある百貨店の最上階に設けられている。


ここは風が少し強いことを除けば、拠点としては申し分ない場所だった。


見渡せば、東京の大半の建物を見下ろすことができ、少し離れた場所にある球体状の巨大な建物も見える。


【鳥かご】。


普段、私たちは人類最後の希望とも言えるあの遊園地を、【鳥かご】と呼んでいる。


中に閉じ込められている人たちを皮肉って、そう呼んでいるわけではありませんよ?


ただ呼びやすいように、ママがあの遊園地を【鳥かご】と呼ぶことにしただけです。


「あとで下の階に行って、夕飯にできそうなもの探してみよっか」


「いいね~おいしいカップ麺が見つかるといいな」


本当に……


千夏姉も星の銀貨も、すっかり休暇モードに入っていた。


でも、気持ちは分からなくもない……


だって、私たちは百貨店に泊まっているのだから。


ここにある物は、腐ってさえいなければ、基本的に何でも自由に使える。


だからみんながいつもより少し浮かれてしまうのも、無理はなかった。


——————


「あはははは!飛ばすよ、しっかり掴まってて!ひゅ~」


「あああ、ちょっと、スピード落として!前に柱があるってば!」


陽葵はショッピングカートの中に座り、水晶の球に押してもらいながら、広々としたフロアの中ではしゃいでいた。


時間が経つにつれて、陽葵からも最初の頃のような遠慮がちな様子はなくなり、水晶の球ともすっかり打ち解けて遊ぶようになった。


二人はほとんど毎日のように集まって、今日は何をして遊ぶか相談している。


そして今日の遊びは、ショッピングカートだった。


「若いっていいな」


「鉄のストーブ、何をしているのですか?」


「別に。個人的な趣味みたいなもんだ」


鉄のストーブは暇さえあれば、百貨店の中からかき集めてきたさまざまな工具や材料を取り出し、新しい武器作りに没頭している。


ほとんど毎日のように、休むことなく手を動かしていた。


大地の小人も普段から、今日のように彼の隣に静かに座り、鉄のストーブが新しい武器を作る様子を眺めながら、時折感心したような声を漏らしている。


ドォォォン――!


「「「「「「「「……!?」」」」」」」」


突然響いた激しい爆発音に驚き、私たちは全員、思わず肩を跳ねさせた。


「今の爆発音、どこから聞こえましたか!?」


「【鳥かご】の方から聞こえたっぽい!恋ちゃん、急いで屋上まで行って、何が起きたか確認しよ。何か見えるかもしれないし」


「その通りです。急ぎましょう!」


千夏姉が真っ先に階段へ向かって走り出すと、他のみんなもすぐにその後を追った。


「あ……外壁が……」


「見間違いだよね?【鳥かご】の外壁が崩れてる……?Bossは、外壁はすごく頑丈だって言ってたんじゃなかったの!?」


目の前の光景に、私も陽葵も言葉を失った。


【鳥かご】の外壁の一部で連鎖爆発のようなものが起きたらしく、外壁の大半が爆発に巻き込まれるようにして次々と崩れ落ち、上部には大きな穴が開いていた。


違う……


それだけじゃない!


亀裂はさらに下へと伸びていて、内部から大量の水が溢れ出していた。


「それより、あっちを見ろ!」


影は私たちがいる百貨店の近くを流れる川の方を指さして叫ぶと、双眼鏡を私の前に差し出し、そちらを確認するよう促した。


「……!」


そこには、人狼とコボルトで構成された混成部隊がいた。


双眼鏡越しに見ると、彼らは全員【鳥かご】の方を向いており、そのうちの何体かは顔を寄せ合って、何かを話しているようだった。


まずい……


「【アーク】、応答願います。こちら雪狐小隊、聞こえますか!?【アーク】、至急応答してください!」


「こちら【アーク】。白鳥の湖、何かありましたか?」


「【鳥かご】の外壁で、先ほど激しい爆発と崩落が発生しました。ただし、内部の状況は確認できていません!それと、付近にはコボルトと人狼の混成部隊が駐留しており、彼らもすでに【鳥かご】の爆発に気づいています!」


「何ですって!?【鳥かご】で爆発が……?そんなはずは……少々お待ちください。今すぐ首領と他の方々をお呼びしますので、通信は切らずにそのままお待ちください!」


どうやら【鳥かご】で爆発が起きたことは、【アーク】のハンドラーにとっても想定外の出来事だったらしい。


しばらくすると、無線機の向こうから、大勢の人が慌ただしく作戦指揮室へ駆け込んでくる音が聞こえてきた。


やがて、スピーカーからママの声が聞こえてきた。


「南村静です。白鳥の湖、状況を説明してください」


「はい。【鳥かご】の外壁で、先ほど大規模な爆発と崩落が連続して発生しました。さらに、その異変は周囲にいた多数の敵にも察知されています。彼らは原因を確認するため、現場へ向かおうとしているようです」


「爆発……彼らはいったい何をしているの……白鳥の湖、敵の数はおおよそどれくらいですか?」


「……一個中隊規模です。少なくとも、二百から三百体ほどの敵がいるように見えます」


「くっ、多すぎますね……!?」


無線越しに、ママが小さく舌打ちする音が聞こえた。


今の状況に、明らかに頭を悩ませているようだった。


「首領、雪狐小隊は現在待機中です。出撃の必要はありますか?」


「勝手な行動はやめなさい。一個中隊規模の敵は、あなたたち九人でどうにかできる数ではありません!死にますよ!今すぐ全小隊と隼小隊を出撃させます。あなたたちはひとまず、その場で待機してください。いいですね?絶対に独断で出撃してはいけません!」


プツン――


最後にもう一度念を押すと、ママは無線を切った。


絶対に、私がいるから待機を命じたんだ……


「私たちはここで一時待機します。首領はすでに全隊を招集しています。すぐに支援に来てくれるはずです……」


「やっぱりそうなるか……仕方ねぇな。俺たちはひとまずここで状況の観察を続けて、【アーク】にも情報を共有していこう」


「はい、そうしましょう。すみません、皆さん。皆さんも今すぐ動きたい気持ちは分かっています。ですが、命令は命令です……」


「分かってるよ、白鳥の湖。母親として、真っ先に自分の子供の安全を考えるのは当然だ」


「ですが、指揮官としては……」


鉄のストーブは首を横に振ってため息をつき、それ以上言わなくていいと私に示した。


はぁ……


「どうやら、先に一個小隊を偵察に出すつもりらしいな」


双眼鏡越しに、影が指した方向を確認すると、数体の人狼とコボルトが隊列から離れ、連れ立って別方向へ歩いていくのが見えた。


残りの敵はその場に留まり、彼らが戻って報告するのを待っているようだった。


これは不幸中の幸いと言うべきだろうか。


少なくとも、彼らは最初から全員で動き出したわけではない。


一個小隊分の敵……


【鳥かご】の中にいる人たちなら、何とか対処できるはずだ。


「【アーク】に報告してください。先ほど、敵が十体ほどの小隊を【鳥かご】へ向けて派遣しました」


「了解しました。情報は首領にも共有します。雪狐小隊は引き続き、その場で待機してください」


あはははは……


最後にハンドラーからも、待機するようもう一度念を押されてしまった……


私たちは、いったいどれだけ危なっかしく見えているのだろうか?


     ◇


結局、それからさらに数時間が経っても、あの敵の集団は何の動きも見せず、【アーク】からもなかなか新しい指示は届かなかった。


私たちはそのままここを守りながら、身動きも取れずに待ち続けるしかなかった。


「雪狐小隊、応答してください」


突然、無線から再びママの声が聞こえてきた。


来た!


「はい!こちら白鳥の湖です」


「先ほど、【アーク】所属の小隊を出撃させました。合計六個小隊です。彼らは二時間後に、あなたたちの拠点へ到着する予定です。他の小隊と合流後、直ちにすべての敵を殲滅し、敵本隊が【鳥かご】へ向かうのを阻止してください。また、異世界側へ支援を要請する手段も断ってください」


「了解しました!雪狐小隊はただちに準備を整えます!」


「ええ、それでお願いします。これからは、どうか必ず安全に気をつけてください。お願いします……」

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