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第8章 予期せぬ援軍

「あなたたちは……?」


「失礼します。私たちは地球自衛軍所属、雪狐小隊です。私は小隊長、南村華恋。コードネームは白鳥の湖。初めまして、リリスさん。首領の指示により、私たちはこれまで遊園地周辺の警戒任務に就いていました」


アルカディアの外にも、生き残った人類の援軍がいたのか……!


「また、外壁が開放された際、内部の人員と接触し、リリスさんを支援することが私たちの任務です。つまり……あなたに協力します」


「えっと……では、あなたたちは私たちがこの戦いに勝利するため、協力してくれますか?敵は数百名に及びます。それに、全員が普通の敵ではありません」


リリスでさえ、この状況を前にしてその場に立ち尽くし、言葉も少しだけたどたどしくなっていた。


それでも、彼女はすぐに気を取り直し、相手に協力を求めた。


「承知しました。雪狐小隊はこれより、現場にいる人員を護衛し、安全を確保したうえで任務を完遂します」


「ま、待って……どうか無理はしないでください。あなたたち地球人にとって、敵は非常に強大な相手です。ですから、必ず安全には注意してください……」


「問題ありません、リリスさん。私たちは異世界人との戦い方を理解しています。加えて、現場の戦力を考慮すれば、この戦闘の勝利は困難ではないと判断します」


南村は、俺より数歳ほど年下に見えた。


純白のバレエ衣装のような服を身にまとった彼女の立ち居振る舞いは、どこか……弱々しくさえ見えた。


挿絵(By みてみん)


けれど、最後の一言を口にした時だけは、彼女が決して冗談を言っているわけではないのだと感じさせられた。


彼女を含めても、雪狐小隊は十人にも満たない。


それでも彼らは、黒々と押し寄せる敵軍を前にしても冷静に武器を抜き、構えを取った。その胆力には、俺の隣にいた父さんでさえ驚きを隠せない様子だった。


彼女の年齢は……本当に俺より下なのか?


「醜いアヒル、二人を選んで左翼の援護を担当。小夜啼鳥、あなたは残りの隊員と右翼、ならびに治療支援を担当。中央は私一人で構いません」


「「了解」」


彼女の下した指示は、実に明確だった。


それだけではない。全身から漂う雰囲気も、どこかリリスとよく似ている。


まるで……戦場のために生まれてきたかのような印象だった。


「敵が接近しています!全員、備えてください!」


リリスが緊張した面持ちで命令を下すのと同時に、南村はまるでこの状況に慣れきっているかのように、静かに俺たち全員の前へ歩み出ていた。


「白鳥の湖、出撃。『羽毛の抱擁』」


彼女の背中から、一対の純白の翼が広がる。


次の瞬間、南村は白鳥のように優雅に宙へ舞い上がり、雪狐小隊の仲間たちとともに俺たちの前方へ飛び出し、俺たちのために道を切り拓いた。


「『羽根の舞』」


翼から無数の羽根が、正面から迫り来る敵へ向かって射出され、弾丸のように敵を撃ち抜いた。


たとえ奴らが防御系スキルを使っても、彼女の攻撃を防ぐことはできない。


次の瞬間、彼女はそっと手を上げた。


すると、その羽根たちは南村の指示に従うように再び彼女のもとへ舞い戻り、その軌道上にいた敵までも巻き込むように仕留めていった。


強い……!


彼女が中央の敵を一人で処理できると自信を持っていたのも、当然だった。


戦闘経験があるというのは、決して口先だけではないらしい……


彼女以外の隊員たちもまた、戦場で互いに連携しながら、敵を一体、また一体と確実に仕留めていく。


敵は彼らに攻撃を当てることすらできていなかった……


「——————!」


「なっ……!」


戦っていたコリンは、どこからともなく伸びてきた触手に不意を突かれ、そのまま足を取られて地面に倒れ込んだ。


それを見た周囲の犬頭人たちは、斧を手に一斉に彼へと駆け出す。


「白鳥の湖、八時方向に要救助者あり」


「了解」


ヒュン——————


小夜啼鳥というコードネームの隊員から報告を受けても、彼女は空中で軽く身を翻しただけだった。そして、コリンのほうへ向けて、周囲に浮かぶ羽根を射出する。


羽根はまず、攻撃に気づいていなかった犬頭人の胸を貫き、続けてその心臓から飛び出すと、さらにもう一体の犬頭人を貫いた。


二体の犬頭人は、ほとんど間を置かずにその場に倒れ込む。


「あ、ありがとな……」


「些事です。まずは生き延びてください」


彼女は冷徹で、凛としていて、まるでバレエダンサーのように優雅に戦場を駆け抜けていた。母さんをも上回る速度で隊員たちと連携し、敵の大半を次々と仕留めていく。


たとえ敵が反撃しようとしても、彼女はその機動力を活かし、矢や魔法を巧みにかわしてみせた。


「任務完了。続いて、何かほかにできることはありますか?」


最後に俺たちへ襲いかかってきた敵が倒れると、南村は任務の終了を確認するかのように、静かに地面に降り立った。


背中の翼も、それに合わせて光の粒となって消えていく。


「あなたたちは、これから少し休んだ方がいいのではありませんか?この敵の波を退けた以上、しばらくは大丈夫だと思いますが……」


「了解。これより雪狐小隊は待機に移行します。リリスさん、支援が必要な場合はお申し付けください。後ほど本艦に連絡し、こちらへ合流するよう通達します」


「はい、お疲れさまでした」


「問題ありません。任務の一環です。私たちは、成すべきことをしただけです。これより別地点にて待機します。失礼します」


そう言うと、南村は自分の隊へと戻り、隊員たちとともに無駄のない動きでその場を離れていった。


「リリス、あんなに強い編織者を知っているなら、先に言っておいてくれよ……さっきの、何なんだよ?十人にも満たない小隊が数百名の敵を相手にして、それでも慌てず騒がず戦えるなんて、怖すぎるだろ!?しかも正面戦闘だけじゃなく、環境を利用した奇襲までこなしていたし……本当にとんでもないな」


「えっと……実は、私も困惑しています。彼女のことを知っている覚えはありません……」


「じゃあ、どうして彼女は君のところに来たんだ?聞いた感じ、君が彼らの任務目標だったみたいだけど?」


「それは、その通りです。ただ、彼女の姓は、まさか……!エミール、あなたたちも先に休んでください。あとのことは私に任せてもらえれば大丈夫です。私は負傷者の数を確認してきます」


姓?


南村か?


その姓に気づいてから、リリスの顔色は先ほどよりいくらかましになっていた。


もしかすると、あの子の両親はリリスの知り合いなのかもしれない。


「君もあまり無理するなよ」


「わかっています。あまり心配しないでください。早く休んできなさい。ほら、行って」


     ◇


「というわけで、俺も戻ってきた」


「リリスっちも、あの人たちのことは知らなかったんだ……」


今、俺はテントの下に戻り、父さん、母さん、それからリンたちと合流していた。


皆も、雪狐小隊とリリスがどういう関係なのか気になっていたらしい。


だからこそ、さっき皆は俺だけをその場に残し、一足先に戻って休んでいたのだ。


「あの子、私より速かったね……自分で一番自信があった機動力で、まさか年下の子に負ける日が来るなんて思わなかったよ……」


「気にしないでよ、母さん。彼女たちは、アルカディアで育った地球人じゃない。たぶん……今までずっと、相当過酷な日々を送ってきたんだと思う。戦闘経験が豊富でも、不思議じゃないよ。たぶん……」


「だからこそ、あの子のことが心配なんだよ。子供の頃から戦って、敵を殺すことばかりだったなんて、あまりにも……」


……


確かに。


外の世界で生まれた彼らは、逃亡と戦いの中で育ってきた人たちなのだろう。


アルカディアの中で安穏と成長し、学校に通い、休日には映画を見たり買い物に出かけたりできた俺たちとは違う。


彼らにとって、戦いはとっくに生活の一部だった。


南村もきっと、幼い頃から戦い方や敵の殺し方を学ぶことを強いられてきたからこそ、俺たちよりも強くなったのだろう。


「なあ、ニッキー、シェフィ。あとで時間を見つけて、彼らと少し話してみるのはどうだろう?一人の編織者として、彼らの実力には興味がある」


「けど、それって本当に大丈夫なのか?調子に乗って、彼らの境遇を嘲笑っているように受け取られたりしないか?」


「そこは、雪狐小隊がどう受け止めるか次第だな……」


クレモンおじさんと父さんも、どうやら彼らのことが気になっているらしい。


ブゥゥゥン——————


何だ!?


強風が吹き荒れ、空に突然、巨大な空中戦艦が姿を現した。そして、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。


周囲の多くの人たちは戦艦を指さし、そばにいる仲間とざわめき合っていた。これが敵による再度の襲撃なのではないかと、誰もが警戒している。


しばらく旋回したあと、戦艦は近くの空き地へゆっくりと着陸し、全員の警戒心を一気に最大まで引き上げた。


「みんな!あれは地球自衛軍の戦艦だよ!警戒しなくて大丈夫だから、早く武器を下ろして!」


ユリは慌てて俺たちのほうへ駆け寄り、何度も手を振りながら、手にした武器を早く下ろすよう促してきた。


あれが、地球自衛軍の戦艦なのか……?


これがスター・〇ォーズの続編の撮影だと言われても、普通に信じてしまいそうなんだけど?


——————


ガコン——————


俺たち一行が様子を見に戦艦の前まで行くと、ハッチが機械音を響かせながら、ゆっくりと開いていった。


義肢をつけた一人の女性が、その奥から姿を現す。


リリスとユリはその女性の姿を見るなり、すぐさま駆け寄って抱きしめた。


三人はそのまま、再会の喜びに涙を流しながら、固く抱き合う。


やっぱり、二人はあの人のことを知っているのか?


「皆さん!地球自衛軍の首領を紹介します。彼女は南村静です。かつて私が地球に来た時、彼女は真っ先に私を信じてくれた数少ない人の一人であり、私にとって大切な友人であり、同僚でもありました。その後、地球がエスギルに侵略された際、彼女はアルカディアへ逃げ込むことができず、私たちとの連絡は途絶えてしまいました。そして今、ようやく再会できたのです」


リリスは南村さんの手を引き、彼女を俺たちの前まで連れてくると、そう紹介してくれた。


あんなに興奮しているリリスは、かなり珍しいな。


「ふふ……アルカディアの皆さん、こんにちは。初めまして、南村静です。これからどうぞ、よろしくお願いしますね」


リリスの紹介が終わると、彼女も穏やかに俺たちに挨拶し、その場にいた俺たち若い編織者に慈愛のこもった笑みを向けてくれた。


そういえば……


彼女も南村という姓だ。


まさか……


「ねえ、静。あなた、いつ娘なんて産んでたの?」


「ん?華恋のこと?」


「そうだよ。あの子、すっごく可愛いじゃん。思わず飛びついて撫で回したくなるくらい!」


えっと……


飛びつく……?


「ユリ、少しは自重した方がいいと思いますよ?」


「見た感じ、あの子ってエミールたちより年下だよね?それなのに、あの年であのスタイルって……はぁ……はぁ……」


「今でも警察が存在していたなら、私は間違いなく即通報していました。はぁ……その救いようのないロリコン気質は、今も変わっていないのですね」


リリスは、暴走して問題発言を連発するユリを無言で見つめ、思わず顔を覆いながら、隣で何度もため息をついていた。


「はははは……あなたたちも変わらないわね」


二人のやり取りを見て、南村さんも思わず笑い声を漏らした。


「あの子はね……昔、私が戦場で拾った赤ん坊なの。その後、そのまま私が養母になることにしたのよ」


「自分があなたの実の娘じゃないってこと、あの子は知ってるの?」


「それがね……最近、偶然そのことを知られてしまって。それ以来、ずっと私を避けているの。きっと、私が本当のことを正直に話さなかったことを怒っているんでしょうね……」


南村さんはそこまで言うと、少し悲しそうに俯いた。


そのせいで、ユリとリリスもどう反応すればいいのかわからず、少し戸惑っているようだった。


おそらく彼女は、まだその時ではないと思っていたからこそ、華恋にそのことを話していなかったのだろう。


「私のほうから機会を見つけて、彼女と話してみます。だから、そんなに思い詰めないでください、静……」


「うん……あの子のこと、お願いね、リリス?あの子は……異世界の侵略者に実の両親を奪われたと知ってから、毎日のように復讐にのめり込むようになってしまったの。目に入る異世界の侵略者を、一人、また一人と殺し続ける日々を送っている。母親として、本当に心配なのよ……」


「あ、そうです!話を聞くということなら、この件はエミールに任せてみるのはどうでしょう?」


なんで急に俺の話になるんだ!?


リリス、頼むから俺を巻き込まないでくれ……


「あら、この子はもしかして……?」


ほら、やっぱり南村さんまで、興味深そうな視線を俺に向けてきた。


これは絶対に誤解された……


「ふふ……今のところ、私と彼は家族のような関係ですからね。彼は女の子と仲良くなるのがとても上手なんです。話を聞く役としては、彼以上に適任な人はいないでしょう」


リリスぅぅぅぅぅ!!!


彼女がそう言い終えた瞬間……


リン、リヤ、アイリーン、マリー、マナ、それに父さんと母さんまで、一斉に俺の方を振り向いた。


これはもう、公開処刑と変わらない。


嘘だろ、リリス……


そんな言い方をしたら、俺がまるで少女の感情を弄ぶのが得意な最低男みたいじゃないか!?


みんなの視線が痛い……


けれど、父さんと母さんが驚愕の表情を浮かべている一方で、小隊のほかの四人は比較的落ち着いていて、どこか幸せそうに笑っているようにも見えた。


ただし、マナだけは違う。


彼女の目は、今にも人を殺しそうだった……


ひぃっ!


マナがまた俺を睨んだ!


「そう……エミールくん、華恋のことをお願いしてもいいかしら。時間がある時で構わないから、あの子とちゃんと話してあげて」


「えっと……承知しました、南村さん」


あとで絶対に、君とはじっくり話をするからな、リリス!


自分が何をしたのか、ちゃんとわかっているんだろうな!


「静でいいわよ。姓で呼ぶと、私と華恋のどちらかわからなくなってしまうでしょう?」


「そ、そうですね。わかりました、静さん」


俺はそう頷くと、こっそり責めるような視線をリリスへ向けた。


すると……


あいつは、不思議そうに小首を傾げてみせた。


首を傾げるな!


確かに、その仕草を君がするのは新鮮だけど。


だからって、可愛さでごまかそうとするんじゃないぞ!?


「とりあえず、まずはテントの中に入りましょう?この無駄にイカした戦艦が一体どういうものなのか、すっごく気になるし!ついでに、ちょっとした会議を開いて、あなたたちにも情報を共有しておきたいの」


「構わないわ。私もちょうど、そのあたりの事情をあなたたちに説明したいと思っていたところよ。行きましょう」


ユリに案内され、俺たちも一緒にテントへ向かい、休憩を取りつつ、今後についての報告を聞くことになった。


こうして、今日という長い一日は、ようやく一時的に幕を下ろした。


一時的に、うん……

【設定や用語の概要】を更新しましたよ!

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