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第10章 俺たちは……ここにいる

指導者さんが、ようやく微笑んでくれた。


彼女をここまで傷つけるなんて……


アズライル、お前には必ず代償を払わせてやる!


「マリー、指導者さんの治療を頼む。みんな、これが最後の戦いだ。行くぞ!」


「「「「「はい!」」」」」


「僕の誘いを断っておきながら、まだ僕に逆らうつもりか……?身の程を知れ!『肉体強化』、『弾性』!」


アズライルの体から凄まじい圧迫感が噴き出し、次の瞬間、弾丸のように俺たちへ向かって飛び込んできた。


正面から受けるのは……少し厳しそうだ。


それに、こいつは自分の近接戦闘能力によほど自信があるらしい。


ガァン――!


漆黒の爪と俺の剣がぶつかり合い、火花が散った。


力で劣る俺は、じりじりと押し戻されていく。


けれど、こいつの最初の標的が俺なら、それで安心だ。


「はあああっ!『時間・加速』、『光魔法・閃撃』!私が援護する!」


「遅すぎるよ!」


リンは、指導者さんがあそこまで重傷を負わされたのを見て、怒りで頭に血が上ってしまったのだろう。


側面からアズライルへ突っ込み、そのまま攻撃を仕掛けた。


だが、あいつは彼女の速度に追いついてみせた。


すぐさま振り返り、その爪を振り抜く。


「リン、危ない!『交換』!」


「くっ……ダーリン、ありがとう。『光魔法・光矢』!」


ぐっ……!


重い一撃だ!


ギリギリでリンと位置を入れ替え、彼女の代わりに致命的な一撃を受け止めることができた。


「背中ががら空きだとわかれば、必ず後ろから奇襲を仕掛けようとする馬鹿が出てくるんだよねぇ。そんなこと、僕はとっくに読んでいたんだよ〜。この程度の矢で、誰を相手にしているつもりだい?」


「あなたこそ、どこを見てるの?」


「……!」


リンにそう言われて、アズライルはようやく、反対側から自分へ突っ込んでくる影に気づいた。


「コリン!」


「おう!」


俺は体に残る鈍い痛みが再生しきるのも待たず、無理やり立ち上がった。


そして、反対側から駆け込んできたコリンとともに、左右から同時にアズライルへ挟撃を仕掛ける。


だが、人狼は避けることすらせず、、両腕を交差させて、俺たちの武器を真正面から受け止めた。


こいつ……


「目障りだ……『振動波』!」


「うわっ!」


「ぐっ……四つ目のスキル!?」


コリンはすぐさま吹き飛ばされ、俺はどうにか体勢を低くして、その振動波に耐えきった。


その時、俺は何かがおかしいことに気づいた。


さっきこいつは、俺に『精神操作』も使っていたはずだ。つまり、こいつは四つもスキルを持っていることになるんじゃないか!?


「エ……ごほっ、ごほごほ……!」


「先生、今は無理に動かないでください!」


「マリー、私は平気です。エミール!その男は三つ以上のスキルを持っています。だから十分に注意してください!それらのスキルはすべて、彼が過去に人を殺し、その相手から喰らい奪ったものです!」


何だって……


こいつは、他人のスキルを喰らうことができるのか?


だとしたら、こいつはいったい何人殺してきたんだ!?


絶対に放っておけない。


このまま放置すれば、いつか必ず取り返しのつかないことになる。


「『荊棘(Thorned)王座(Dominion)』」


荊棘に覆われた王座が、荊棘の中から姿を現し、リヤはそこへ優雅に腰を下ろした。


「荊棘の包囲の中で朽ちなさい。『体力剥奪』」


リヤはすべての荊棘に『体力剥奪』の効果を付与し、まるで女王のように王座へ腰掛けたまま、滑稽な悪狼が倒れるのを待っていた。


地面のあちこちから太い荊棘が伸び出し、アズライルへ襲いかかる。


突然の攻撃によってアズライルは受け身に回り、体力も一秒ごとにリヤへ奪われ続け、体の傷も少しずつ増えていった。


「クソガキが……!『肉体改造』……ん!?」


刃物の形へ変化していた彼の両手が、突然空中で静止した。


予想外の事態に、アズライルは困惑した表情を浮かべ、目を見開いた。


「『睡眠』」


「く……くそがあああああ!『無効化』!」


「私の制御が解除された……!?」


『睡眠』の効果が突然消え、アイリーンは思わず戸惑いの表情を浮かべた。


「この程度の植物で、僕を止められると思うな!」


「ちっ……」


荊棘が、再び動けるようになったアズライルにすべて斬り払われるのを見て、リヤは即座に自分の王座から離れた。


そしてアズライルの目の前まで駆け込むと、荊棘を絡ませた剣を振るった。


「これは……糸!?うわっ!」


レイはリヤの突撃に合わせて、無数の糸をアズライルが防御に使おうとしていた腕へ絡ませ、力ずくでその腕を引き剥がした。


その結果、防御が間に合わなかったアズライルは、リヤの斬撃を正面から受けることになった。


「くそ……おい、役立たず。何を待っているんだ?さっさと僕を治療しろ!」


アズライルが天を仰いで咆哮した直後、俺たちの間にある地面が……


ゴゴゴゴ————


「待て、何だあれ!?」


「みんな、そこから離れて!巨大な植物が来るわ!エミ、場所はあなたとレイの間の地面よ!」


「「「「……!」」」」


リヤの指示を聞いた俺、リン、レイ、コリンの四人は、すぐに回避行動を取った。


そして次の瞬間、地面が弾け飛び、さっきまで俺たちがいた場所から巨大な花が生えてきた。


こ……


これは何なんだあああ!?


敵はアズライル一人だけじゃなかったのか?


その時、花の蕾がゆっくりと開き、俺たちはようやく、蕾の中央で両脚を抱えて座る、仮面をつけた女がいることに気づいた。


ここに、もう一人堕ちた者がいたのか!


「何ですって!?」


背後にいた指導者さんが思わず声を上げた。


まるで、あり得ないものを見たかのように。


「——————『活性化』……」


「遅いぞ、役立たず!」


「……」


球状の液体が、アズライルの体に降りかかった。


次の瞬間、彼の傷が凄まじい速さで癒え始めた。


あの人は……


「ユリ!?」


「このクソ女には、あの破劇者どもに生命を付与してもらう必要があるんだ。そうでなければ、僕はとっくにこいつを殺していたよ」


あの人が、録音ペンの中で名前が出ていたユリさんなのか!?


まずい……


俺たちは、敵は一人だけだと思っていた。


だからこそ、五人の【武装化】した編織者を主戦力にすることで、(アズライル)と互角に渡り合えていたんだ。


それなのに、ここで堕ちた者となったユリさんが突然現れた。


これで勝利の天秤は、またアズライルのほうへ傾いてしまった。


それでも……


俺はもう、指導者さんと約束したんだ。


だったら、その約束は必ず守る!


まだ、戦いに勝つ方法はあるはずだ……


「マリー、離してください!ユリを助けに行きます!」


「待ってください!応急治療はもうすぐ終わりますから!そんなに無理に動いたら、肋骨がまた折れてしまいます!」


「今は私の傷なんて気にしている場合ではありません!『等価――」


待て、彼女は『等価交換』で何をするつもりなんだ?


まさか……


「やめろ、指導者さん!」


「うぅ……」


俺が初めてあそこまで大声で怒鳴ったからか、彼女の体がびくりと震えた。


けれど、そのおかげで、どうにか彼女の思考を遮ることができた。


「自分の命とユリさんの安全を交換しようなんて考えるなよ?今あなたが何をしようとしたのか、俺にはわかっています」


「そ……そんなこと……考えていません……」


目を逸らしている時点で、説得力ないですよ……


「わかっていますよ!本当にもう……ユリさんのことは俺たちに任せてください。いいですね?」


「でも、敵はユリ一人だけではありません!あなたたちが二人の敵を同時に相手取れるはずが……!」


「いや……俺たちなら、できるかもしれません」


こういう時こそ、リヤのスキルに輝いてもらう場面だ。


「リヤ」


「ええ、わかっているわ」


「自分の安全を最優先にするんだぞ?」


「わかっているわ。エミ、私の心配はしないで。あなたたちはアズライルに集中して」


頼れる仲間がそばにいるというのは、本当に心強い。


「『囚われの檻』」


「——————!?」


アズライルの治療をしていたユリさんは、その途中で突然、地面から伸び出した荊棘に絡め取られ、そのまま引きずられていった。


そして、悲鳴を上げる暇もないまま、リヤと一緒に荊棘の壁の中へ閉じ込められた。


「これは……ちっ、小賢しい真似ばかりを!」


もちろん、リヤが堕ちた者となったユリさんと戦えるのかどうか、俺も心配ではある。


けれど、彼女なら……


きっと、俺の期待に応えてくれるはずだ。


俺たちの中で、彼女は最強の単独戦闘能力を持つメンバーなのだから。


だから、きっと大丈夫。


今は俺がどうにかしてアズライルを片づければ、彼女のもとへ向かい、ユリさんへの対処を手伝える。


「まあいい。どのみち治療はもう終わったからね。うるさいクソガキが一人減るなら、それはそれで悪くない」


彼は荊棘の壁を眺めながら、気にも留めない様子で小さく笑った。


そして改めてこちらへ向き直り、俺たち六人に不気味な笑みを浮かべる。


「それじゃあ、狩りの時間を再開しようか〜」


こんなことをゲーム扱いするなんて、この人は本当に狂っているんじゃないのか……


「あおお——————————ん!」


彼が天を仰いで遠吠えを上げると、俺たちの前後左右から、がさがさと何かが蠢く音が聞こえ始めた。


「なんでこんなに破劇者がいるんだ!?」


数え切れないほどの破劇者が、津波のように俺たちへ押し寄せてくる。


その数を見ただけで、足元から力が抜けそうになった。


「カエルくん、どうするの!?」


「おいおい、エミール!これは冗談じゃ済まねえぞ!このとんでもない数と種類……まさか【仙境】中の破劇者が、この階層に集まってきてるんじゃねえのか!?」


ちっ……


落ち着け。


少しでいいから、冷静になれ。


「ダーリン、大丈夫だよ。私たちは勝手に逃げたりしない。あなたの考えを聞かせて」


目の前に広がる絶望的な戦況の中でも、リンはなお、強い意志を宿した目で俺のそばに立ってくれていた。


その信頼も、自分の命も、俺に預けると言わんばかりに。


よく考えろ。


こういう時、俺たちは……


「……はぁ。エミール、あの破劇者たちは私に任せてください」


「指導者さん?」


「あなたたちが私を信じてくれたように、私もあなたたちを信じたい。だから、安心して私に任せてください」


応急処置を終えたばかりの指導者さんは、凛とした佇まいで俺の隣に立ち、手際よく黒い手袋をはめ直した。


「それと、もう私のことを指導者さんと呼ばないでください。私の本名はリリスです。リリスと呼んでください。これは……亡くなった恩人が私につけてくれた名前です」


……!


彼女が、自分の名前を教えてくれた!


ブゥン————————!


左肩に刻まれた水色の紋章から大量の光の粒があふれ出し、そのすべてがリリスの体を覆っていく。


「ふふ、やっぱりそういうことだったんですね。私の【武装化】の条件は、やはり“心の底から誰かに心を開くこと”だったのですか……うぅ、自分で口にすると、本当に恥ずかしいですね……」


恥ずかしそうにしながらも、彼女は思わず俺のほうをちらりと見た。


そして次の瞬間、その顔に朝の光のように澄んだ、温かな笑みが咲いた。頬には、ほんのりと赤みが差していた。


この瞬間、リリスもまた、自分の【武装化(課題)】を達成した。


「私の紡いだ物語は【人魚姫(The Mermaid)】。そして、私は異世界から来た来訪者でもあります。改めて、これからよろしくお願いします。『無私奉献の(Mermaid’s)高潔なる魂(Devotion)』」


地面から、まるで無数の泡が湧き上がってくるかのように見えた。


俺の見間違いか?


「エミール、あの泡は……?」


「やっぱりアイリーンにも見えてるのか?」


「私たち、見間違いじゃありませんよね?」


これが【人魚姫】の【武装化】スキル。


綺麗だ……


リリスが右手をそっと持ち上げると、泡は彼女の意思に従うように、さらに勢いよく地面から浮かび上がり、俺たち一人ひとりのそばへと漂ってきた。


「さあ、思い切り攻めてください!この泡は、あなたたちへの攻撃を何度か防いでくれます。だから恐れないで!私たちは必ず、みんなで無事に帰ります。もちろん、ユリも含めてです!」


周囲の空気は、まるで海へと変わったかのようだった。


リリスは軽やかに宙へ浮かび上がり、俺たちを鼓舞しながら、四方八方から潮のように押し寄せる破劇者の大軍を食い止めてくれた。


その姿は……


――まるで童話に登場する導きの聖女のように、眩しいほど輝いていた。


挿絵(By みてみん)


「行くぞ、みんな!」


「「「「「はい!」」」」」


彼女に導かれ、俺たちの胸の奥には温かなものが湧き上がっていた。


彼女がもたらしてくれた希望が、全員をもう一度立ち上がらせてくれたのだ。


心が、ずいぶんと落ち着いた。


本当に、不思議な人だ。


やっぱりこの小隊にとって、彼女は欠かせない仲間なんだ。


「——————!」


「まだ不意打ちするつもりかよ?俺の女に触ろうなんざ、百年早ぇ!」


ガキィン――


レイへ振り下ろされた爪は、途中でコリンの曲刀に受け止められた。


「ふん。戦闘中に勝手にお喋りしていたのは君たちだろう?戦いは待ってくれないんだよ!ひゃはははは!」


ガガガガガガ——————!


嵐のような連撃がコリンへ叩き込まれる。


だが、彼はどうにかその攻撃を弾き続けた。


何発かはコリンに命中したものの、彼の周囲を漂っていた泡が代わりに攻撃を受け止め、弾けて消えた。


相手が拳を振り抜いた勢いで体勢を崩した、その一瞬の隙を突き、コリンはすかさず左腕へ一太刀浴びせた。


「どこ狙ってんだ?目ぇ腐ってんのか?」


「調子に乗るな!」


「ねえ、うちの男ばかり見てちゃダメよ?」


その言葉が放たれた直後、アズライルは数メートル先まで吹き飛ばされ、何本もの木をなぎ倒してようやく止まった。


「レイ!?それは……」


「ふふん。今、この小隊には近接担当が一人足りないでしょ?セレイアの穴は、私が埋めてあげるわ」


レイの腕と両足には、糸で編み上げられた筋肉のような組織がびっしりと巻きついていた。


拳銃を捨てた代わりに、彼女は極限まで高められた近距離戦闘能力を手に入れていた。


「『針糸・修羅戦法』。私の拳をまともに食らったら、ちょっとまずいかもよ?」


まずいどころじゃないだろ。今の彼女の拳は、かすっただけでも骨が折れそうなんだけど?


それなら、アズライルは……


「ごほっ……『軟化』が間に合って助かったよ」


人狼は体の上に積もっていた石と木の幹を押しのけ、再び立ち上がった。


毛に覆われた肌には、石にぶつかった時の擦り傷が少し増えているだけだった。


どうやら、さっきのレイの一撃は明確な効果を与えられていないらしい。


あいつ……


『軟化』で衝撃をすべて吸収し、そのまま後方へ吹き飛ぶことで、俺たちとの距離を取ったのか。


「お?それなら、もう何発か叩き込んであげようか?」


「ぐっ……」


レイは糸を編んで縄にし、そばの木へ巻きつけると、そのままアズライルへ向かって宙を舞い、彼の頭めがけて拳を振り抜いた。


惜しくも、拳が命中する寸前、アズライルは恐るべき身体能力でどうにかそれを躱した。


「これで捕まえたよ」


「くそっ!」


攻撃を避けた直後に、そのまま反撃でレイの足を掴んだだと!?


助けに行かないと……!


「『交換』!」


「ダーリン、私が援護する!」


俺とレイの位置が入れ替わった次の瞬間、リンも一瞬でアズライルの目の前まで踏み込んでいた。


その手には光球が握られており、今まさに彼の顔面へ叩きつけようとしていた。


「『肉体改造』」


なっ……!?


俺の斬撃を両手で受け止めた直後、やつの腰から、さらにもう一本の腕が生え、リンへ向かって伸びていった。


「うぐっ……もう!これ、すっごく痛いんだけど!」


リンはどうにか躱したものの、それでも左腕を爪で引き裂かれてしまった。


腕からは血が流れ、傷口もかなり深い。


「『黒霧』」


「『空気・噴流』!待ってください、どうして吹き飛ばせないのですか!?」


直後、アズライルの体から黒い煙が噴き出し、俺たちを覆い尽くした。


リリスの『空気魔法』でさえ、それを吹き散らすことができない。


黒霧はまるで生きているかのように微動だにせず、周囲には、慌ただしく動き回るリリスの焦った声だけが響いていた。


「キャロリン、早く傷を治療させてください!」


「っ……お願い、マリーっち」


——————……


「リン、マリー!」


バキッ――


「ああっ……エミールくん!!!」


「ダーリン!?」


「ぐっ……」


黒霧の奥から、マリーの不意を突き、背後から襲いかかろうとする爪が伸びていた。


あいつ、治療能力を持つ人間から先に潰すつもりか!


最後の最後で間に合ってよかった。


その代わり、俺の腹は貫かれてしまった。


「エミール、大丈夫ですか!?ごめんなさい、ごめんなさい!私が一瞬油断したせいで……」


「マリー、落ち着いてくれ!ごほっ……俺は死なないから、頼むから先に落ち着いてくれ!」


とはいえ、やっぱり痛ぇぇぇ!


「ひひひ……狙いが逸れたかい?まあ、別にいいけどね。『精神操作』」


黒霧の中から陰湿な含み笑いが聞こえ、続けてアズライルがまずいスキル名を唱える声が耳に入った。


「エミールくん……!いや……私を置いていかないでください!お願い……」


「俺を見ろ、マリー!まだちゃんと生きてる!」


傷口は死ぬほど痛い。


けれど、ここでマリーを落ち着かせないと、俺たちは完全にアズライルの術中にはまってしまう!


俺が無理やり平気だと伝えても、彼女はすっかり恐慌状態に陥ってしまい、なかなか冷静さを取り戻せなかった。


「彼女一人の安全ばかり気にしていていいのかな?」


「リン!」


「え……?」


ぼろぼろの体を引きずりながら、俺はリンを突き飛ばした。


だが、自分自身はそこまで運がよくなかった。


周囲に浮かんでいた泡はすべて割れていたため、爪がそのまま俺の脇腹を引き裂いた。


今度の標的はリンだったのか!?


いや、違う。


あいつの狙いは彼女たち二人じゃない。


俺だ!


あいつは俺の体力を削り、さらに俺が彼女たちを守ろうとすることで負傷するように仕向けているんだ!


「大当たりだよ!ははははは!君なら必ず、あの愚かな女を守ろうとすると思っていたんだ!」


「いやああああ!エミールくん!だめ……」


ぱたり。


『精神操作』によってただでさえ脆くなっていたマリーは、俺が再び重傷を負ったのを見た瞬間、糸の切れた人形のように意識を失い、その場に倒れ込んだ。


状況は最悪だ!


「エミール、あの技を使う!」


「アイリーン、その技は負担が大きすぎる!今はまだ……」


「『願い叶(Dreams)う美(Come)しき夢(True)』!」


くそ!


遅かった!


今日はかなり多くの階層を連続で攻略してきたせいで、今のアイリーンは相当疲れているはずだ。


それでも彼女は、自分の【武装化】スキルにすべてを賭け、この切り札で俺たちの状況を打開しようとした。


「その間は私がアズライルを足止めします!みなさんは、早くマリーちゃんを起こす方法を考えてください!」


「ぐっ……これは何のスキルだ!?いや、効果がここまで強いなら、それ相応の弱点もあるはずだ」


霧は一瞬で消え去り、一面の花畑へと変わった。


姿を晒したアズライルは足を止め、アイリーンをじっと観察し始める。


「ふふ……君の弱点が何なのか、わかった気がするよ。ふふふふ……」


すぐに、彼はまた獲物を見るような目を浮かべ、静かにその場で待ち構えた。


あいつ……


もうアイリーンの【武装化】スキルが長時間使えないことに気づいたのか?


こんな短時間で、見抜いたっていうのか!?


「コリン、お前もアイリーンの援護に回ってくれ。ここは俺に任せろ」


「ああ、お前も気をつけろよ!」


リリスは破劇者の大軍を防ぎ、リヤはユリさんと一対一で戦っている。


マリーは意識を失って倒れたまま。


そして俺とリンも、それぞれ程度こそ違うが、傷を負っている。


こうなった以上、残った三人に時間を稼いでもらうしかない。


一分、一秒と時間が過ぎていく。


その時、突然……


ゴォォォ——————!


マリーの体が激しい炎に包まれ、その炎はゆっくりと彼女の顔の上で仮面の形を成していった。

【指導者 – プロフィール更新】


指導者 → リリス *New!


紡がれた物語 - 人魚姫(The Mermaid)


編織者スキル

——————

『等価交換』

『催眠術』

『空気魔法』


追加スキル -『言霊』


【武装化】発動条件 - 心の底から誰かを信じること *New!


【武装化】スキル - 『無私奉献の高潔なる魂(Mermaid’s Devotion)』


【武装化】スキルの効果 - 領域を展開し、泡を生成する。生成された泡は使用者が仲間と認識した対象に付着し、泡一つにつき、対象が受けるダメージを一度だけ肩代わりする。*New!

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