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第4章 長き道のり

「本当は第五十層を攻略するつもりだったのに、気づけば数日経ってたな……」


「まあまあ、遠くまで進むためには、休むことも必要って言うでしょ〜。それはそれとして、この芋虫ボス、気持ち悪っ!」


気持ち悪いと言いながらも、リンは芋虫ボスの体内から綺麗な宝玉を取り出した。


うげぇ……まだ糸引いてるんだけど……


「それじゃ、お願いね、ダーリン〜☆」


「はいよ。後ろ向いてくれ」


「〜♪」


リンはもう、俺の視線にはすっかり慣れている。


周りに誰もいないのを見計らって、彼女はそっと背を向けると、自分のポニーテールをかき上げた。


それから襟元を後ろから軽く引き下ろし、白い背中と首筋を覗かせる。


……


そんなに無防備で、本当に大丈夫なのか!?


「うっ……急にそういうことをされると、こっちが少し恥ずかしくなるんだけど……」


「相手がダーリンなら、ついでにちょっとえっちなことをされても別にいいけどね。むしろ、もっと積極的になってくれてもいいくらいだし」


「もうやめてくれ。このままだと、俺の心が持たない。前にお前が初めて俺の部屋に泊まりに来た時、俺がどれだけ必死に寝ようとしていたと思ってるんだよ。まったく……」


俺は慎重に彼女の服の中へ手を差し入れ、宝玉を背中にある紋章へそっと触れさせた。


それだけで、もう十分すぎるほど俺の理性が試されている。


シュン――


いつものように、彼女の背中の紋章が宝玉に触れた次の瞬間、まばゆい光を放ち、宝玉は俺の手の中から消えた。


「えへへ、ありがと。私はいつでも準備できてるからね?夜這いならいつでも大歓迎だよ!」


俺たちはまだ学生だ!


学生!


はぁ……前に家でキスした時もそうだった。


彼女は自分から何度も距離を詰めてきて、そのあともまだ物足りなさそうな目で俺を見ていた。


結局、そのあとも何度も俺にキスしてきたし。


やっぱり、一緒に過ごす時間が長くなるにつれて、彼女の甘え方も少しずつ大胆になってきているのだろう。


だからこそ、俺の理性はずっと崩壊寸前の状態にある。


卒業後の未来なんて、正直、想像するのが怖い……


「ふふ、私も準備はできているわよ、エミ?」


「私も!」


……


リヤとアイリーンも、まるでタイミングを見計らっていたかのように、大きな木の陰からひょこっと飛び出してきた。


「お前たち、いつからそこにいたんだ……?」


「キャロリンが芋虫ボスを気持ち悪いと言ったあたりからよ」


「リンリンが芋虫ボスの体内から宝玉を掘り出したところから!」


それ、ほとんど最初からいたってことじゃないか!?


「はぁ……本当に、お前たちにはかなわないな。それで?今回はどんなスキルを手に入れたんだ?」


「ふふん、それじゃあ今すぐ見せてあげるね!次にこの草むらから破劇者が飛び出してくるから……それっ!」


リンは言い終わるよりも先に、右足で地面を軽く踏んだ。


すると、草むらの前の地面から、金色に輝く光の槍が何本も突き出した。


偶然なのかどうかはわからないが、光の槍が突き出したその瞬間、ローリングブルという牛型の破劇者が草むらから飛び出してきた。


結果は言うまでもない。


そいつはその場で串刺しになった。


「「!?」」


目の前の光景に、俺とアイリーンは思わず目を見開いた。


けれど、本当に一番驚いていたのは……


「え?私と同じ……?」


リヤだった。


リンの新しいスキルは、なんと彼女の特殊能力と少し似た性質を持っていた。


それが、彼女にはどうしても信じられなかったらしい。


「えっ!?どうりでセレイアっちがあんなに強いわけだ……もしかして、前から『危機感知』ってスキルを持ってたの?」


「『危機感知』……?あ……あははは……違うわ。ただ、あなたの勘が私と同じくらい正確だったから、少し驚いただけよ。それがあなたの新しいスキルなのね?」


リヤは納得したようにぽんと手のひらを叩き、まったく感情のこもっていない声で話を合わせた。


ぷっ……


彼女はきっと、リンのスキルを未来視だと勘違いしたから、あんなに驚いたのだろう。


そして、自分のキャラとしての特徴がまだ残っているとわかったことで、少し安心したようだった。


「ふふふん……これで、私に敵意を向けるものがいれば、真っ先に反応できるようになったってわけ。残念ながら、このスキルの効果であなたたちまで敵意を感知できるようになるわけじゃないみたいだから、そこはごめんね……」


「大丈夫よ。ほかのみんなの背中は、私に任せて。私の直感(未来視)は、よく当たるもの」


「それじゃ、よろしくね、セレイアっち!」


書いて直感、読んで未来視ってことか……


「カエルくん、次はこのまま攻略を続ける?それとも、いったん休憩する?」


レイ、マリー、そしてコリンがボスのドロップ品を回収し終えると、三人も一緒に俺たちのそばへ集まってきた。


みんなの表情を見る限り、まだかなり元気そうだな……


よし。


それなら、このまま進もう。


「このまま【仙境】の奥へ進もう。みんなまだ余裕がありそうだし、もう少し先まで行けるはずだ」


「うん、それもいいね。カエルくん、だんだん隊長らしくなってきたんじゃない?判断も早いし、ぐずぐずしないし。どこかの誰かさんと違って……」


「悪かったって……」


レイがとある鈍感男をじろりと睨むと、その相手は後ろめたそうにびくっと肩を震わせた。


あはははは……


こうして見ると、もう完全にレイのほうが主導権を握っているな。


これも、コリンがレイを大切にするようになってからの、一番わかりやすい変化なのかもしれない。


けど……


マリー、どうしてお前まで一瞬固まったんだ?


今のレイ、たぶんお前のことを言ったわけじゃないぞ?


——————


「その……私の気のせいでしょうか?周りの景色が、だんだんおかしくなってきているような気がするんですけど……」


マリーの感覚は正しい。


第五十五層に入ってから、俺たちは一層進むごとに、階層の景色がどんどん陰気さを増していくのを感じていた。


最初は穏やかな草原や雪原、あるいは森のような景色だったはずなのに……


今ではその自然の景色もすっかり枯れ果て、まるで命が少しずつ朽ちていくかのような、ひどく寂れた印象を与えてくる。


現在、俺たちがいるのは第五十九層。


周囲の森は、すでに葉の一枚も残らないほど丸裸になっていた。


地面には背の高い枯れ草が生い茂り、移動しにくいだけでなく、視界もかなり悪い。


「いっそマリーちゃんに、この枯れ草を全部燃やしてもらうのはどうだ?」


「もし指導者さんがここにいたら、『大火事に巻き込まれて焼け死にたいのなら、私は止めませんが』と言っていたと思うわ」


「言ってみただけだって、あはははは……」


リヤはその場にいない指導者さんの代わりに、容赦のない鋭いツッコミを放った。


そのせいでコリンは気まずそうに、小さな冗談のつもりだったとぼそぼそ呟きながら、大人しくレイのそばへ戻っていった。


「とはいえ、この枯れ草が本当に邪魔なのは確かだな……」


「みんな気をつけて!十一時の方向、枯れ草の中から破劇者が二体飛び出してくるよ!」


「「「「「「……!」」」」」」


リンがそう言い終えた直後、一つのティーカップが十一時の方向にある枯れ草の中から飛び出してきた。


それは陶器同士がぶつかり合うような耳障りな音を立てながら、一番近くにいたリンへと飛びかかってくる。


そのすぐ後ろには、空中を飛ぶ皿型の破劇者も続いていた。


バシャッ――


ある程度の距離まで近づいた瞬間、ティーカップ型の破劇者は隙を突くように、カップの中に入っていた紅茶を俺たちへ浴びせかけてきた。


「きゃっ……!」


あまりにも突然のことで、しかも視界もかなり悪かったせいで、避けきれなかったマリーはその紅茶をまともに浴びてしまった。


その直後、紅茶のような液体は急速に冷え固まり、マリーをその場に貼りつけた。


カァン――――!


「気をつけて!レイ、あのティーカップ型の破劇者を撃ち抜いて!」


「了解!」


この先の枯れ草の中に、まだ敵が潜んでいるかどうかわからない。


だからリヤは念のため、まずレイに銃でティーカップ型の破劇者を仕留めさせた。


すでに身構えていた彼女は、瞬時にマリーの前へ飛び込み、自分の剣で襲いかかってきた皿型の破劇者を受け流した。


その結果、それは俺の首筋のすぐそばをかすめて飛んでいった。


あ……首筋、少し切れてる……


今、俺の頭、危うく胴体とお別れするところだったんだけど!?


怖すぎるだろ……


そこで俺たちはようやく気づいた。


皿型の破劇者が飛んでいった軌道上の枯れ草が、すべて斬り裂かれていたのだ。


おいおいおい、あれは皿じゃなくて、暴走して飛んできた丸ノコだろ!?


待てよ、丸ノコ……?


「リヤ、皿型の破劇者が次にどの方向から飛んでくるかわかるか?」


「次は……四時の方向!」


「まだ倒すな!飛ぶ方向だけ変えればいい!」


「……?ああ、なるほど!わかったわ!」


リヤの未来視は、だんだん扱いが上手くなってきているようだった。


それだけじゃない。


彼女は俺の意図にもすぐ気づいたらしく、俺と視線を交わすと、小さく頷いた。


そして剣を構え、俺の言った通り、再び襲いかかってきた皿型の破劇者を弾き飛ばした。


ザシュ――!


「やるじゃねえか、お前!あいつを草刈り機代わりに使うつもりか?」


「ふふん、すごいだろ?」


さっき実際に飛行ルートを変えたのは俺じゃないけど、ここは少しくらい厚かましく得意げになっておこう。


ザシュザシュザシュ――――!


その後、俺とリヤは皿型の破劇者を何度も何度も受け流し続けた。


けれど、その途中で飛んでくる皿型の破劇者の数がどんどん増えていき、俺たちにかかる負担も少しずつ大きくなっていく。


「反対側は私に任せて!」


リンは自分の短剣を握り、俺とリヤの防衛線に加わった。


ほかのみんなが襲いかかってくるティーカップ型の破劇者を片づけている間、俺たち三人は皿型の破劇者の鋭さを利用し、周囲の枯れ草を少しずつ刈り取っていった。


「そろそろ十分だろ……今なら、あの破劇者たちを砕いていい!」


「「了解!」」


目の前の視界は、すでにかなり開けていた。


俺たちが今いるのは、巨大な城のすぐそばだった。


その城の窓からは、あの二種類の食器型破劇者が次々と湧き出している。


「なんだこれ?破劇者の数、どんどん増えてないか?」


しかも、俺たちは気づいてしまった。


いくら倒しても、湧き出す勢いがまるで衰えない。


このままでは、いずれ俺たち全員がじわじわと削り殺される……


「みんな、お互いに援護し合って!私は次の階層へ続く階段を探してくる!『時間・加速』!」


状況が悪いと見たリンは、すぐに行動へ移った。


俺たちが次の階層へ逃げ込むための道を、探しに行くつもりなのだ。


「リン!くそ、もう行ったか……!みんな、自分と仲間の安全を最優先にしろ!」


リン一人を危険な場所へ向かわせるのは、本当なら避けたかった。


けれど、目の前の混乱した状況では、もうそんなことを言っていられなかった。


「アイリーン、頼む!」


「わかりました!【武装化】スキルを使います!『願い叶(Dreams)う美(Come)しき夢(True)』!」


俺たちが新しく手に入れたこれらの【武装化】スキルは、使用すると基本的に、使用者の体へ大きな負担をかける。


そのため、俺たちはこれを自分たちの切り札として扱い、どうしても必要な時にだけ使うようにしていた。


今のアイリーンは、物語の中に沈んでいた時とは違う。


彼女の【武装化】スキルは、すでに『願い叶(Dreams)う美(Come)しき夢(True)』へと置き換わっている。


その効果は……


「ここからは、私がみんなを守ります!」


アイリーンの周囲に、本来ならここに存在するはずのないものが次々と現れた。


鉄筋、車両、さらには無数の剣までもが、食器型の破劇者たちへ向かって飛んでいく。


彼女は一人で戦闘の負担の大部分を引き受け、俺たちにわずかな息つく暇を作ってくれた。


「アイリーンの【武装化】スキル、やっぱりめちゃくちゃ強いな!一定範囲内に、自分が想像した物体を何もないところから作り出せるなんて……これ、ほとんど無敵だろ!」


けれど、アイリーンの【武装化】スキルも、コリンが言うほど完璧なものではない。


桁外れの戦闘力には、それ相応に重い副作用がついてくる。


アイリーンが【武装化】スキルを使用している間、彼女の体力と精神力の消耗速度は、普段の何倍にも跳ね上がる。


物体を作り出すこと自体が、使用者の集中力を大きく削る行為だ。


ましてや、彼女はそれと同時にスキルを維持し続けなければならない。


当然、体への負担もかなり大きい。


つまり、彼女は長く持たない!


「うっ……」


「アイリーン、まだいけるか?無理はするな!」


「大丈夫です。もう少しなら、きっと持ちます!」


見る限り、彼女が持ちこたえられるのはせいぜいあと五分。


あるいは歯を食いしばって、無理やり十分といったところか……


「えいっ……!『人畜無害なサプライズ』!キャロリンはまだ戻ってこないんですか?」


ドォォォン――――!


マリーはまるで爆弾魔のように、リンゴの形をした爆弾を周囲へばらまき、押し寄せてくるティーカップ型の破劇者たちをまとめて吹き飛ばした。


それでも破劇者が途切れることなく押し寄せてくるのを見て、彼女は額に汗を浮かべながら、思わずこちらを振り返って確認してきた。


「まだ戻ってきてない!悪いけど、もう少しだけ持ちこたえてくれ!あと少しでいい!」


リンのことが、本当に心配だった。


けれど、リヤが何も言わないことが、逆にリンが今も無事でいる証明になっていた。


「みんな、早くこっちに来て!次の階層へ続く階段は城の中にあるよ!」


リンが戻ってきた!


全身に汗を浮かべた彼女は、荒い息を吐きながらも足を止めなかった。


俺たちに手招きすると、すぐに背を向け、再び城のほうへ走り出して道案内を始める。


「アイリーン、俺が背負う!」


「うん、ありがとう!ちょうどもう、疲れて歩けなくなりそうだったの!」


「みんな、遅れるな!行くぞ!」


アイリーンは俺の背中にしがみついたまま、それでも一瞬たりとも気を抜かず、【武装化】スキルを維持して俺たちを守り続けた。


そして俺たちが第六十層に辿り着くまで、彼女は歯を食いしばり、無理やり耐え抜いてくれた。


——————


「「「「「「「はぁ……はぁ……」」」」」」」


息が切れる……!


「ごめんね、エミール……背負ってくれてありがとう……」


床に仰向けに倒れ込んで荒い息を吐いているアイリーンは、少し申し訳なさそうに苦笑した。


「気にするな。お前は軽いし、背負って走るくらいなら別に問題ない。ただ、この道のりが……長すぎた……」


第六十層へ続く階段は、これまでの階層よりもさらに長かった。


それだけじゃない。


移動している間も、襲いかかってくる破劇者たちをどうにか防がなければならなかったのだ。


この階層の攻略難度は、【仙境】を作った存在の頭がおかしいんじゃないかと疑いたくなるほどだった。


緊急通路の階段が使えればよかったんだけどな……


指導者さんの案内がない以上、俺たちだけでは緊急通路の場所を見つけることができない。


だから今みたいに、正規ルートを進むしかなかった。


「ふぅ……エミール、水を飲ませてもらってもいい……?」


「むせるなよ。ゆっくり飲め」


「あはは……生き返った。私、少しだけ……寝るね……」


俺が差し出した水を飲むと、アイリーンはそのまま力尽きたように眠ってしまった。


それも仕方ない。


彼女が【武装化】スキルを維持していた時間は、すでに十分を超えていた……


いや、今スマホを確認してみて、ようやく気づいた。


彼女はなんと、丸々十五分も維持し続けていたのだ。


そりゃ、体力を使い果たして倒れるわけだ……


本当に、よく頑張ってくれたな、アイリーン。


「今日はここで休もう。ボス部屋に入るのは明日にする」


「「「「「うん……」」」」」


どうにか気力を振り絞ってテントを張り終えると、みんなはすぐに中へ潜り込み、眠りについた。


臨時隊長である俺は、当然のように最初の見張りを引き受けることになった。


幸い、ここはボス階層だ。


ボス部屋以外はすべて安全区域になっていて、破劇者が襲ってくることもない。


この状態で戦闘を続けることになっていたら、間違いなく危険だった。

【キャロリン – プロフィール更新】


キャロリン


紡がれた物語 - アリス(Alice)


編織者スキル

——————

『時間魔法』

『大きさ変化』

『無害化』

『探し物』

『幻影輪舞』

『光魔法』

『危機感知』*New!


【武装化】発動条件 - 愛する人を守りたいという想い & 愛する人を守るための勇気


【武装化】スキル -『愛と希望の物語(Alice’s Last Wonder)』


——————————


【アイリーン – プロフィール更新】


アイリーン


紡がれた物語 - 眠り姫(Sleeping Beauty)


編織者スキル

——————

『睡眠』

『幸運』

『目覚め』


【武装化】発動条件 - 自分の怒りを表に出せるようになること


【武装化】スキル - 『願い叶う美しき夢(Dreams Come True)』*New!


【武装化】スキルの効果 - 集中力と体力を継続的に大きく消耗する代わりに、一定範囲内に領域を展開し、その領域内で使用者が頭の中で明確に思い描いた物体を一時的に具現化する。*New!

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