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第4章 未来のために

「では、入りましょう」


ギィィ——


指導者さんがBoss部屋の扉を押し開けると、壁に並んだ篝火が一つ、また一つと灯り、Boss部屋の中を照らし出した。


「——————……」


そして、部屋の中央にいた第三十層のオークBossは、俺たちの到来に気づくと、獣骨の湾刀を振り回しながら、こちらへ凶悪な視線を向けてきた。


「嘘だろ?どこの猪があんなにでかくなるんだよ!?」


指導者さん以外の全員が驚いていた。なぜなら、俺たちの目の前にいる猪――その騎獣は……


——成人男性二人分ほどの高さがあったからだ。


「私はここで見ています。あなたたちは思いきり戦いなさい。誰かが危機に陥れば、すぐに手を貸しますから、心配はいりません。エミール、あなたには隊長として、戦闘中に他の人へ指示を出してもらいます。隊長としての動き方を学ばせたいのです」


「わかりました」


今回も、指導者さんは戦闘に参加するつもりはないのか……


まあいい。


この程度のBossなら、俺たち七人だけでも十分すぎるくらいだ。


「——————————————————!」


「来た!あとは任せたよ、カエルくん!」


レイたちも、それぞれ戦闘態勢に入った。


遠くの猪も、俺たちに向かって突撃を始めている。


よし……!


「レイ、『針糸魔法』であいつを引っかけて、動きを止めてくれ!」


この数日間の共闘で、俺はレイが二丁拳銃を使って、破劇者と距離を取りながら戦うのが得意だとわかった。


それだけじゃない。彼女は密かに罠を仕掛け、自分に有利な戦場を作り出すこともできる、距離の支配に長けたアタッカーだ。


彼女が紡いだ物語は【勇ましいちびの仕立て屋(Brave Little Tailor)】。周囲の物体を利用して罠を作り、戦闘を補助することに特化した能力を持っている。


「了解!『針糸・足止め罠』!」


「——————!?」


床のレンガが、びっしりと張り巡らされた糸へと変わり、猪が突っ込んでくる進路上でその脚を引っかけた。


結果は予想どおりだった。


猛スピードで突っ込んできた猪は慣性に引きずられるように、そのまま盛大に転倒し、上に乗っていたオークまで振り落とされた。


「——————————————————!」


オークは凄まじい咆哮を上げ、それによって俺たちへ怒りを示した。


さらに手にした湾刀を振るい、地面の上で猪の騎獣を転ばせた糸を斬り払った。


あの糸は本質的にはレンガのはずだから、それなりの強度はあるはずだ。


それなのに、あいつはまるでバターでも切るみたいに、あっさりと糸を断ち切ってしまった。


あの湾刀……危険だ!


「オークBossが猪の騎獣に乗り直そうとしています!」


アイリーンはオークBossを指差し、慌てた様子で全員に知らせた。


「マリー、あいつを爆破して叩き落としてくれ!アイリーンは猪の動きを抑えてくれ!コリン、オークの武器を奪え!リン、リヤ、俺たちも行くぞ!」


「わかりました!『人畜無害のサプライズ』!」


「うん!『睡眠』!」


「了解!『強奪』!」


「その言葉を待ってたよ、ダーリン!『時間・加速』!」


「ようやく私たちの出番ですね。『体力剥奪』、『狂乱荊棘』!」


Bossの手にあった湾刀が突然消え、次の瞬間にはコリンの手の中に現れた。そのせいで、Bossは思わず面食らったようだった。


コリンが編み上げた物語は【強盗の花婿(The Robber Bridegroom)】。


彼は以前、退屈だからという理由で、あらゆる武器の扱い方を一通り学ぼうとしたことがある。


そのため、さまざまな武器の扱いに長けている彼は、相手の武器を奪ったあと、すぐにその武器を利用して反撃に転じることができる。


「コリンのおかげで、オークBossは私たちの攻撃にまったく対応できていませんね」


Bossは突然武器を失ったことで、両手で顔を庇いながら、必死に自分の騎獣のほうへ後退するしかなかった。


そのおかげで、リヤは安心して荊棘で攻撃できるようになり、満足そうだった。


「ふふん、どうだ?すごいだろ、セレイアちゃん?」


「その呼び方はやめてください。少し気持ち悪いです……」


「ひでえ……」


はは。


コリンなりにリヤとの距離を縮めようとした絡みは、ちゃんと効果があった。


ただし、逆効果だ!


「身の程をわきまえなよ。セレイアタンがあんたなんか相手にするわけないでしょ、あはははは!」


「うるせえ。他の男子だってお前なんか相手にしねえよ!いや、そもそも見えてねえか。小さすぎるからな!ははははは!」


「その頭に穴を開けられたいの?このバカ!」


この小さな夫婦漫才みたいなやり取り、もう完全に小学生の喧嘩だな……


「こら、今は戦闘中です。二人とも真面目にやりなさい!」


後方から指導者さんの叱責が飛んできて、二人はようやく大人しくなった。


「——————!!!」


「あ……まずい!」


「きゃっ!」


レイが一瞬気を抜いた隙に、オークBossはまず耳をつんざくような咆哮でみんなを怯ませた。


その直後、やつは一瞬でアイリーンの目の前まで突進し、彼女を吹き飛ばした。


全員がまだ呆然としている隙に、やつは瀕死になっていた猪の騎獣のもとへ素早く戻り、その身体に何らかの魔法術式をかけた。


アイリーン……!


あまりにも突然すぎて、俺は反応が間に合わなかった!


「まずい!皆さん、あれは猪の騎獣を治療しています!」


「ちっ……マリー、アイリーンの治療は任せた!リン、リヤ、コリン、俺たちは……」


「わかった!あなたたちは早く止めて!猪の騎獣の回復速度がすごく速い……!」


「「————————————!」」


俺たちが我に返った時には、もう遅かった。


オークBossはすでに自分の騎獣の治療を終えていた。


Bossがどっしりと猪にまたがると、猪の前脚がゆっくりと持ち上がり始めた……


あれは第二段階に入った時、指導者さんが言っていたあの技だ!


部屋全体を覆う、超広範囲の震地衝撃!


どうする……?


こういう時は……


うん……


「キャロリンの『大きさ変化』はBoss本体には通用しませんが、それ以外の破劇者には効果があります」


そういえば指導者さんが、前にこっそり俺とリンにそう教えてくれた気がする!


「リン、猪に『大きさ変化』を使って小さくしてくれ!」


「わかった!『大きさ変化・縮小』!」


「——!?」


その結果、猪の騎獣は震地衝撃を放つ直前に、突然小さくなってしまい、そのまま上に乗っていたオークBossの尻に押し潰された。


そのせいでオークBossも悲鳴を上げ、何が起きたのかまったく理解できていない様子だった。


「今だ!動ける人は、俺と一緒に総攻撃を仕掛けるぞ!」


「「「了解」」」


やつが我に返る前に、リンはその足元を高速で滑り抜け、短剣を抜いて両脚のアキレス腱を切り裂いた。


続いて、Bossの両脚から力が抜けて倒れ込んだ瞬間、リヤの荊棘による攻勢が襲いかかった。


その一撃は、オークBossの身体を貫いただけでなく、そのまま地面へしっかりと縫い止めた。


「ダーリン!」


「ああ、『交換』!」


俺はコリンの肩に手を置き、俺たち二人とリンを対象にして『交換』を発動し、一気に隊列の最後方からオークBossの目の前へ転移した。


「アイリーンを傷つけた罪は、お前の命で償ってもらうぞ」


「オラァ!地獄に落ちやがれ!」


俺の大剣がオークBossの左肩から真っ直ぐに振り下ろされ、コリンも手にした湾刀で横一文字に斬り払った。


ザシュッ——


真っ二つに斬られたオークBossは、地面の上でしばらく痙攣したあと、淡い青色の粉塵となって消え、その場には、美しい宝玉だけが残された。


「倒した!マリー、アイリーンの怪我はどうだ?」


「少し擦りむいただけです。もう完全に治療は終わっています」


「あははは……【武装化】のおかげで身体がかなり丈夫になっていたみたいで、重傷にはならずに済みました……ありがとうございます、エミールさん、マリーさん」


ふぅ……


それならよかった。


もしアイリーンに何かあったら、俺はきっと自分を許せなかった。


「ごめんなさい。さっき私があの筋肉バカと喧嘩したせいで、アイリーンちゃんに怪我をさせちゃった……」


「誰が筋肉バカだって?そもそも先に言い出したのはお前……いや、いい。今回だけは言い返さないでおいてやる」


おや?


コリンが引いた?


もしかすると、レイがかなり責任を感じているのを見て、今はこれ以上言い合う場面じゃないとわかったのかもしれない。


「よくやりました、皆さん。エミール、あなたの指揮も悪くありませんでした。ただ、先ほどアイリーンが負傷し、状況があなたの想定から外れた時、あなたは動揺しましたよね?」


「はい……やっぱり、見抜かれてましたか……」


「よく聞きなさい。もしあなたが指揮官であるなら、あなたは小隊の中で最も冷静で落ち着いた存在でなければなりません。状況が自分の掌握から外れた時、仲間より先に慌てることだけは絶対に避けなさい。戦場では、様々な事態が起こります。だからこそ、あなたは冷静に状況へ向き合う必要があります。わかりましたか?」


「わかりました……頑張ります。ご指導、ありがとうございます!」


「ええ、お疲れ様でした。先に自分の用事を済ませてきなさい」


少し説教くさく聞こえるけれど、彼女の言っていることは全部正しい。


彼女は俺が指揮を担当した時の欠点を、一つ一つ丁寧に挙げてくれた。


「指導者さん、エミに対して少し……厳しすぎませんか?」


隣にいたリヤは俺たちの会話を聞いて、思わず口を挟み、俺のために不満を言ってくれた。


「リヤ、大丈夫だ。俺が自分から、彼女の責任を少しでも分担したいと思っているだけだから。彼女が少し厳しくしてくれるのも、むしろいいことだよ。そのほうが、俺ももっと頼れるようになれるだろ?」


「あなたは……はぁ。あなたたち二人とも、あまり無理をしないでください。あなたも彼女と同じで、いつも黙って責任を背負い込もうとするから、私は少しだけでも肩の力を抜いてほしいと思っているのです」


「わかってる。俺たちのことを心配してくれて、ありがとう」


リヤはずっと、俺と指導者さんのことをよく見てくれていたんだな……


というか、いつも黙って責任を背負い込むって意味では、君も同じだろ!?


「私は余裕があるうちに、隊の中でもう一人、指揮官を育てておきたいのです。副指揮官として動かすにせよ、指揮官がその場にいない時に隊を任せるにせよ、指揮能力を持つ者が一人増えることは、皆にとって決して悪いことではありません。私の意図は理解できましたか、セレイア?」


「なるほど……理解しました。これ以上は何も言いません」


指導者さんはリヤを納得させると、身体の向きを戻し、マリーから差し出された宝玉を受け取って、それを手のひらの上で静かに眺めた。


「ようやく……半分回収できましたね……」


ん?


半分?


「つまり、リンは未来で、あと四つも新しいスキルを手に入れるってことですか?うわぁ……」


「本当!?これからのスキルは全部戦闘用のスキルだといいなぁ。もう『探し物』みたいなスキルは来ないでほしいんだけど……」


リンは腕を組み、片手を顎に添えながら、不安そうな苦笑を浮かべた。


「たしか、あなたにはあと一つ補助系のスキルがあったはずです。ただ、残りはすべて戦闘で使えるスキルですから、新しいスキルが役に立たない心配はしなくて構いません」


指導者さんはそれ以上詳しく話さず、リンの背後へ回ると、宝玉を編織者の紋章に当て、紋章に宝玉を吸収させた。


「では、今回はどのスキルを取り戻しましたか?」


「えっとね……『幻影輪舞』だって」


「それが先ほど言った補助系スキルです。大量の分身を作り出すことができるスキルで、相手を惑わせるには非常に有効でしょう」


指導者さんはそのスキルまで知っているのか?


「ああああ!結局、本当にまた補助系スキルが来ちゃった……」


あらら、うちの小さなお姫様は少し落ち込んでいるみたいだ。


「リン、もしかしたら、これから先に強力なスキルがいくつも控えているから、その分、補助系スキルも加えてスキル構成のバランスを取っているのかもしれないぞ?」


「それもそうだね……戦闘で役に立つなら、まあいっか。もしダーリンが少しエネルギーを補充させてくれたら、私、また元気を出せるかも?」


そんな期待するような目で見られても……


ここには他のみんなもいるんだけど?


俺がこっそり他の人たちへ視線を向けると、彼らはなぜか息ぴったりに顔を背け、ドロップ品の整理を始めた。


お前ら……


「ほら、抱っこするか?」


「する!」


俺が両腕を広げた次の瞬間、リンはすぐに俺の胸の中へ飛び込んできて、柔らかい頬を俺の胸元にすりすりと擦りつけた。


ああ……


本当に可愛いなああああ!


「ちっ、リア充は爆発しろ」


少し離れた場所から、どこかの孤独な男の声も聞こえてきた。


おい、聞こえてるぞ?

【キャロリン – プロフィール更新】


キャロリン


紡がれた物語 - アリス(Alice)


編織者スキル

——————

『時間魔法』

『大きさ変化』

『無害化』

『探し物』

『幻影輪舞』*New!


【武装化】発動条件 - 愛する人を守りたいという想い & 愛する人を守るための勇気


【武装化】スキル -『愛と希望の物語(Alice’s Last Wonder)』

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