第13章 救われし者、ついに群星へ至る
「さあ、進もう。
果てしなく広がる、あの群星へ」
英雄。
今回の異世界侵略という脅威の中で、異世界から駆けつけ、俺たちに手を差し伸べてくれたオペレーターたちのように……
俺たちもまた、彼らのように別の世界を渡り歩き、ほかの世界を脅威から解放する英雄になれるのだろうか?
正直に言えば。
あまり現実味がない。
だって、異世界なんて本来は物語の中にしかない設定だったはずなのに、俺たちの日常が崩れ落ちてから、すべてが変わってしまったのだ。
異世界からの侵略。
そして、同じく異世界からの支援。
その二つが、ほとんど同時に起きた。
俺たちの世界を侵略したエスギルのように、異世界からやって来る存在はほかにもいる。
同じように、【群星の守護者】から来たオペレーターたちも、普段からさまざまな世界を渡り歩き、些細な異常から、世界を滅ぼしかねない脅威に至るまで、現地の人々がそれに対処できるよう手を貸している。
そして今、あの組織のリーダーたちは、俺たちに手を差し伸べ、その一員にならないかと誘ってくれている。
「もちろん、その前に、君たちにはきちんと説明しておかなければならない。この仕事が、非常に危険で、なおかつ判断の難しいものだということを理解してほしい。私たちは各世界で起きている異変を観測し、オペレーターが受注できる任務として掲示する。でも、任務中に何が起きても、その場でどう動くかは君たち自身で判断しなければならない」
「もし任務が、昨日みたいな世界規模の脅威に発展したらどうするんですか?俺たちはあなたたちほど強くないし、対応しきれない可能性もありますよね?」
「いい質問だよ、エミール」
ラミリスはぱちんと指を鳴らすと、すぐに俺へ説明し、同時にその場の全員にも分かるように話し始めた。
「もちろん、任務の難度がすでに小隊だけで対処できる範囲を超えている場合、君たちは本部に支援を申請することができる。その時は、本部が状況を見て、待機中のオペレーターや小隊に現地支援を要請するよ。ただし、任務完了後に得られる報酬ポイントは、君たちが四、支援側が六の割合で双方に分配されることになる」
なるほど。
助けに来る側のほうが、より多くの任務報酬をもらえるのか……?
どうやら【群星の守護者】も、絶望的な状況に直面した時は、所属するオペレーター同士で助け合うことを強く推奨しているらしい。
おそらく、その目的はさまざまな状況下でオペレーター同士を協力させ、生き残る可能性を少しでも高めるためなのだろう。
そこで、今度は唯さんが口を開いた。
「今の俺たちはまだ発展途上だから、オペレーターの人数は今のところ……うん、かなり少ない。俺が君たちに保証できるのは、招待を受け、俺たちの一員になった者たちは、決して仲間を見殺しにするような人間ではないということだけだ。だから本当に困難に直面した時は、迷わずすぐに支援を申請してほしい。どうだ?君たちはこれに興味があるか?」
招待の対象はこの場にいる全員のはずだ。
けれど、唯さんは明らかに俺へ向けてそう言っていた。
どうやら、彼は俺にかなり大きな期待を寄せているらしい。
「こほん……プレッシャーに感じる必要はないぞ、エミール。俺はあくまで君たちを誘っているだけで、こんな危険な仕事に必ず参加しろと強制しているわけじゃない。もし君たちが断ったとしても、俺は何も言わない」
「ダーリンは、あの人たちの一員になりたいの?」
「それは……」
俺が加入するべきかどうか考えていることに気づいたのだろう。
リンはすぐに俺のそばへ寄ってきた。
正直に言えば、俺は物語の中に出てくる“勇者”や“英雄”に、少なからず憧れていた。
強い力で弱い者を助け、苦しんでいる人々を救う……
なんだか格好いいと思わないか?
もちろん、それ以上に大きかったのは、【群星の守護者】が種族を問わず、エスギルの人々を守る姿を見たことだ。
どう言えばいいんだろう……
あの時、彼らの背中はどこまでも大きく見えて、まるで城壁のように頼もしく感じられた。
だから……
俺も、彼らのような英雄になりたい。
そして今、その機会はもう俺の目の前にある。
けれど、俺は軽々しくうなずくわけにはいかない。
なぜなら、この小隊には俺一人しかいないわけじゃないからだ。
もし俺が【群星の守護者】に加入すると決めたら、きっと……
みんなもついてきてくれるだろう。
俺は本当に、彼女たちが預けてくれる命を背負えるのだろうか?
……
「迷ってるんでしょ?」
「リリス?」
「あなたは、自分が正しいと思う決断をすればいい。残りは、あなたが考えるべき問題じゃない」
「でも、俺は君たちの安全が心配なんだ」
「ふっ……つまりあなたの目には、私たちは触れただけで割れるガラス細工にでも見えているってこと?」
リリスは珍しく軽い冗談を口にし、にやりと小さく笑った。
「そんなふうには思ってない。ただ、君たちに危険な目に遭ってほしくないだけだ」
「私たちだって同じ。あなたは、私たちがあなたに危険な目に遭ってほしいと思っているとでも?私たちも同じだよ、エミール。でも、私たちの恋人が決意したのなら、私たちは最後まであなたを支える」
「うぐっ……どうして急にそんなこと言うんだよ?」
「こういう時だからこそ言うの。そうしないと、あなたはきっと、私たちを過保護にしすぎて前に進めなくなる」
まずい。
泣きそうだ。
そうだ。
まだコリンとレイの意見を聞いていなかった。
「コリン、レイ、君たちは……」
「悪いな、兄弟。俺たち二人は少し別行動して、お前の父さんと母さんみたいなカップル小隊を組むつもりなんだ。先に言っておくぞ?別にお前たちと一緒にいたくないわけじゃない。ただ、俺たちは二人で任務を受ける時間を楽しみたいだけなんだ」
「そうか……」
「もちろん、お前たちが困った時は、俺たちが真っ先に駆けつけて支援する。俺たちは一生もんの親友だろ?」
うう……
俺の親友が、こんなに大人になっているなんて。
男子三日会わざれば刮目して見よとは、まさにこのことだ!!!
あの頃の馬鹿だったコリンは、もうどこにもいない。
「おい?お前、今かなり失礼なこと考えてただろ?」
「い……いや?考えてないぞ?」
「全部顔に出てんだよ!エミール、この野郎……!」
「うわあああ!」
コリンは俺に飛びかかってきて、俺の頬を引っ張った。
おい!
離せって!
めちゃくちゃ痛いんだけど!
「コリン、ほどほどにしておきなさいよ?」
「はいはい〜」
コリンはレイの冷たい視線と目が合い、ようやく俺を解放した。
ああ、頬が痛い……
あとでマリーナに『リンゴ療法』を一発お願いしよう。
今は……
「みんな、俺と一緒に小隊を組んでくれるか?」
「聞くまでもないでしょ?」
「やったー!私も入る!」
リリスとリンは、すぐに答えてくれた。
これからもみんなと一緒に冒険を続けられるからなのか、リンは特に元気そうに見えた。
「もちろん問題ありません。私はもう、あなたにどこまでもついていくと決めています。天国だろうと地獄だろうと、私はずっとあなたのそばにいます」
「私たちはどうせ夫婦予定ですし、もちろん一緒についていきます」
リヤの少し重い発言はさておき、アイリーンのその言葉も、何だか少し問題があるような気がするんだけど……
夫婦予定って何だ?
俺たち、まだ婚約もしてないからな!
ほら、みんなも慌ててアイリーンを囲み、今のはどういう意味なのかと問い詰め始めた。
「私はいいと思うよ?普段からみんなと一緒にいられるだけじゃなくて、いつかどこかの任務で、偶然ついでに一つの世界を救っちゃうかもしれないなんて……想像するだけでも、けっこうワクワクするし」
マリーナは小さい頃から冒険物語を読むのが好きだったから、俺と同じように、そういう生き方に憧れているのだろう。
「そうですね。この世には、きっと私たちと同じように危機に陥っている世界がほかにもあるはずです。そうやって誰かを助けられるなら、悪くないと思います。ただ……」
その時、華恋は自分の元隊員たちへ視線を向け、少し迷うような表情を浮かべた。
今回の異世界での旅において、彼女はあくまで日向と星野と一緒に、臨時で俺たちの小隊に加わっていただけなのだ。
「私たちのことは気にしないでください、姉御。あなたは今、ちょうど青春の真っただ中にいるんです。どうか安心して、恋人と一緒に過ごす時間を楽しんでください」
「コルベス……うん、ありがとうございます!白鳥の湖……南村華恋は、本日をもって雪狐小隊を離脱します。これまで、大変お世話になりました!」
「ふふ、行ってください。本来なら、あなたたち子どもを守ることこそ、私たち大人の責任なのですから。でも、あなたたちはもう、私たちでは到底追いつけない場所まで行ってしまったのですね……英雄様たちよ」
コルベスさんはどこか感慨深そうで、今にも泣き出しそうに見えた。
「でも、いつか華恋が雪狐小隊に戻って、私たちと一緒に行動したくなった時は、いつでも歓迎するよ?」
「そうそう〜。雪狐小隊はいつだって、私たちの恋ちゃんのために扉を開けて待ってるからね!」
星野と日向までそう言ってくれた。
その結果、華恋もまた、仲間たちが向けてくれた温かさに声を詰まらせていた。
本当に、すごくいい小隊だな……
たとえ華恋が離脱することを選んでも、雪狐小隊のみんなは今いる小隊メンバーのまま【群星の守護者】に加入し、誰かを守るオペレーターになるつもりらしい。
つまり、俺たちは未来でまた、彼らと肩を並べて戦う機会があるかもしれないということだ。
「俺は……」
「言いたいことがあるなら、はっきり言ってくれ、カズ。君が遠慮する必要はない」
「ああ、ありがとうございます、唯閣下。俺は……俺も、あなたたちに加わりたい。もちろん、英雄という肩書きで、自分が過去に犯した過ちを帳消しにしたいわけじゃない。ただ、自分が犯した罪を償いたいだけなんだ。これから先、誰かを守るために戦い続けたい。俺自身が、すべての過ちを償い終えたと思えるその日まで」
「それ自体は構わないが、誰かと小隊を組むつもりはあるのか?それとも、独立オペレーターとして俺たちに加わるつもりか?」
「それは……」
カズはそっと、隣にいるゼナへ視線を向けた。
ん?
この二人、いつの間にそんな仲になったんだ?
「はぁ……私も構わないわ。主な理由は、この人を見張っていないと、自分の安全を無視して、別の世界で無茶をしそうで心配だからだけど」
「二人小隊か。いいぞ。コリンとレイも二人小隊だからな」
唯さんはうなずき、その申し出を受け入れた。
おそらく彼は、カズの後悔と、異世界での旅の中で見せた変化を見ていたからこそ、カズを認めたのだろう。
「私たち高等サキュバスも加入したいと思っています。ただ、私たちが一つの班として加入したい場合でも、問題はありませんか?」
「人数が増えれば、そのぶん分配後の報酬も自然と少なくなる。それを受け入れられるなら、問題ないよ」
「それは些細なことです。私はただ、部下たち……いえ、私の民たちと一緒に、ほかの世界を見に行きたいだけです。そのついでに、いくつかの世界でも救えたらいいかなって……」
「あら?その考え方、なかなか格好いいじゃない?放浪騎士みたいな感じがするよ」
「あははは……私たちの場合は、放浪魔法使いのほうが近いかもしれませんね?」
アイヴィさんの申し出に対して、ラミリスも親指を立てて問題ないと示した。
「父さん、母さんは?」
「俺たち二人はいいかな。エミール、みんなのことをちゃんと守ってやれよ?それから、たまには家に帰って飯を食べに来ること。時々でいいから、彼女たちも連れて顔を見せてくれれば、それで十分だ」
「父さん……分かった。ありがとう」
相変わらず、この夫婦は俺のことを応援してくれる。
あなたたちの子どもとして生まれて、本当に幸せだ。
「わあ……これで本部も、未来では少し賑やかになりそうですね。まさかあなたたちが今回の任務を終えたことで、支部を一つ作れるだけじゃなく、こんなに優秀な新しいオペレーターまでたくさん迎え入れられるなんて。あ、そうだ!本部ではハンドラーも募集しています。今は通常時でも、四人だけで現場を回している状態なんです。もし興味がある方がいれば、私たちは大歓迎ですよ!」
すべてが順調に進んでいるのを見て、鈴奈さんはずっとにこにこしていた。
その後、彼女はハンドラーの人手不足について思い出したらしく、この流れに乗って慌ててその話も切り出した。
「わ……私、ハンドラーをやってみたいです……」
リリスの後ろに立っていたリリスのお母様が、おずおずと手を挙げた。
「ママ……?」
「これからあなたが私のそばにいなくなって、長い間連絡が取れなくなったら、私はきっと心配しすぎてしまうと思うの。でも、私がハンドラーになれば、組織を通じてあなたの様子を知ることができるでしょう?それなら、私も後方支援に入りたいわ」
「ママ……ありがとう。本当にありがとう!」
ノクトゥナさんまで加入するつもりなのか……
うわ……
思っていた以上に、これから先が賑やかになりそうだ。
「ママも、ノクトゥナおばさんみたいに、ハンドラーに挑戦してみたら?なんだか面白そうだよ!」
「オーロラ、それは遊びではなく、本当の仕事なのよ?私は今、村のみんなを代表する立場だから、やっぱり……」
「でもでも、ママは言ってたでしょ?この人たちがどこまで進めるのか見てみたいって。代表としてのお仕事なら、鱗甲族のみんなに任せても大丈夫だと思うよ?みんな、ママが【群星の守護者】に入りたがっていること、もう知ってるんだから」
「うっ……」
どうやらアクィーナさんも、本当は参加するつもりがあったらしい。
ただ、自分の立場上、ほかにやるべきことがあるため、辞退しようとしていただけなのだろう。
けれど、オーロラにそう言われたことで、彼女は明らかに揺らいでいた。
「……ラミリス、村の者たちと相談してから、改めて返事をしてもいいですか?」
「もちろん問題ないよ。どうせここに支部を設立するつもりなんだから、いつでも私たちと連絡は取れるしね。ちなみに、支部の仕事は、エイデンさん、南村静、それからユリに共同で運営してもらう予定だよ。この件については、昨夜すでに三人と相談済み」
おおおお!
支部の管理層まで、俺たちがよく知っているあの人たちなのか……!
「それじゃあ、決まりだな?OK、転移装置の設定はあとでやっておく。君たちは明日、本部へ来てくれ。正式にオペレーターとして登録してもらってから、オペレーター識別カードや関連物品を配る必要がある」
明日か……
これで、俺もついにほかの異世界を見に行けるんだ。
「ふあぁ……それじゃあ、話はひとまずここまでだな。俺は一度家に帰って寝てから戻ってくる。この数日は、さすがにちょっときつかった……」
そう言い終えた直後、唯さんは大きくあくびをした。
「ん?連戦のせいですか?」
「いや。クロエたちのせいだ……君もそのうち分かる……」
うぐっ……
よく見ると、唯さんの頬は少しこけているように見えるし、目の下には薄いクマまで浮かんでいた。
その姿がもしかすると未来の自分なのかもしれないと思うと、俺は思わず苦笑してしまった。




