第7章 予想外の登場人物
「ふふん、俺が精英なんかじゃなくてよかったぜ。おかげで、こうして学校でのんびり過ごせるんだからな。ほら見ろよ、俺たちには到底手の届かない精英様たちが出発するぞ」
コリンは教室の窓の外にいる、校門前できれいに列を作り、自分の武器を携えた生徒たちを指差しながら、皮肉めいたことを言った。
彼らは皆、エリートクラスの編織者たちだ。
もちろん、セレイア、レイ、マリーもその中にいる。
けれど、腰に長剣を提げたセレイアは、何かを考え込んでいるかのように、俯いていた。
「俺は、できることなら彼らと一緒に【仙境】へ入りたいけどな……」
「なんだ?セレイアちゃんが心配だからか?あの子、剣術試験では一位だったんだぞ?」
「いや、心配ってわけじゃないけど……ただ、彼女と一緒に【仙境】を探索してみたいだけだ」
「出たよ、彼氏面。今の彼氏みたいな言い方、また出たよ」
ボコすぞ?
「はぁ……いったい、いつになったら俺は編織者になれるんだろうな?コリン、お前はいつ覚醒したんだ?」
「俺?たしか十二歳の時だったかな。その時、腹が痛くてトイレにこもってたんだけど、いきなり腰のあたりが光って紋章が浮かび上がったから、マジで死ぬほどビビったぜ」
うっ、そこまで詳しく説明しなくていいから。
匂いまで漂ってくる気がする……
「お前の編織者スキルは?たしか、編織者はそれぞれの物語から三つのスキルを得るんだよな。お前はどんなスキルを持ってるんだ?」
「俺?いやぁ、大したことのないゴミみたいなスキルばっかりだよ。この話題、いったんやめにしないか?口に出すのが恥ずかしいんだ」
「つまんねぇな〜」
「そういえば、明日から週末だけど、お前は何するつもりなんだ?へへへ、俺の推しの女優が新作を出してさ……」
「そういうことは俺に言わなくていいから!はぁ、たぶんいつも通り、剣の練習をした後は部屋にこもってゲームでもしてるかな……」
「お前の私生活って、本当に退屈すぎるよな」
余計なお世話だ!
俺は本当に、リヤたちが羨ましかった。
学生のうちに探索許可証を手に入れて、野外授業にまで参加できるなんて……
俺も【仙境】の中を探索してみたい。
待てよ、許可証……?
——————
「許可証をご提示ください」
「はい」
「会員であることを確認しました。どうぞお入りください。くれぐれも無理をして、【仙境】の奥深くまで進みすぎないようにしてください。命に関わる危険に遭遇した場合は、すぐに逃げることを最優先にしてください」
「わかりました。ありがとうございます」
翌朝、俺は物置から父さんの古びた片手剣を取り出し、黒いフード付きの上着を羽織ると、そのまま【仙境】の入口へ向かった。
普通、【仙境】の外で偽造された探索許可証を手に入れる方法は存在しない。探索許可証の製造方法は秘匿されているからだ。
それに、もし紛失した場合でも、人々はすぐに申告し、委員会もすぐに新しい探索許可証を再発行してくれる。
許可証には名前も装飾も何もなく、ただの長方形のカードでしかない。
だから俺の予想通り、さっき受付で父さんのカードを渡し、機械の上に置いてスキャンしてもらった後、ゲートはすぐに俺のために開いた。
そもそも、ここの警備って緩すぎないか!?
許可証を持った普通人がこっそり入り込む可能性とか、考えたことないのか?
たとえば……俺とか?
人と人との信頼関係が、もう何とも言えない域に達している気がするんだけど……
「まあいいか。入れたんだからそれでいい。まずは【仙境】の第一層がどんな場所なのか見に行ってみよう。って、ここエレベーターまであるのか!?」
編織者って、エレベーターに乗って【仙境】へ入るものなのか!?
俺の幻想が壊れた……
ずっと、父さんと母さんは螺旋状の階段を歩いて、それから重厚な石の扉を押し開けて【仙境】へ入っているものだと思っていた。
「まずカードを一回スキャンして、それから選べる階層のボタンが光るのか……お?五十四層まで直接行けるじゃん?父さんと母さん、やっぱりすごいな……もしかしたら、もう最下層の攻略目前だったのかもしれない」
けれど安全を考えて、俺はやはり第一層から探索を始めることにした。
何しろ俺は結局のところ、少しばかり剣術ができて、あとは【仙境】の知識百科をそれなりに読んだことがあるだけの普通人でしかないのだから……
◇
チン〜♪
「はぁ……なんだか、自分が電子レンジで焼きたてになった肉みたいな気分だ」
冗談だ。
ただ、エレベーターが目的の階層に着いた時の音で、くだらないダジャレを思いついただけだ。
「うわ……」
エレベーターの扉が開くと、その向こうで俺を待っていたのは、どこまでも続く青々とした大草原だった。
ふと見上げると、空には太陽まで浮かんでいた。
【仙境】の生態は本当に奇妙だ。
「ひっ……!隠れないと!」
少し離れた場所に、見覚えのある編織者たちの一団がいて、彼らはキャンプの中で忙しそうに動き回っていた。
あの人たちは、エリートクラスを率いて野外授業に来ている先生たちだ。
この格好なら、たとえ彼らに見られてもすぐに俺だと気づかれることはないはずだけど、こっそり潜り込んだ罪悪感のせいで、俺は思わず身を隠してしまった。
「まずはあの人たちとは反対方向へ行こう……お?ウサ耳スライムを発見……!」
俺がキャンプとは反対方向へ少し歩いていくと、目の前に兎の耳を生やした透明なゼリーのようなものが現れ、目的もなくぴょんぴょん跳ねていた。
攻撃性を持たない中立型の破劇者だな。
しかも、見た目がすごく可愛い。
「でも、悪いな。俺が強くなるための踏み台になってくれ!」
「——!?」
俺が腰の古びた剣を抜いた瞬間、危険を察知したウサ耳スライムはぷるぷると身を震わせ、すぐに俺とは反対方向へ勢いよく逃げ出した。
「あっ……!逃げるなよ!」
「——————!」
「うわ……!」
こいつ、侮れないな……
こいつ、急に振り向いたかと思うと、俺に向かって触手を伸ばし、まっすぐ腹部へ振り払ってきた。
幸い、俺はとっさに身をずらして、その一撃をかわすことができた……
今だ!
ウサ耳スライムは攻撃後にわずかな隙ができる。そして弱点は、身体の中央にある核!
子供の頃に【仙境】破劇者百科で何度も読んだからな。こいつらの情報は、もうしっかり頭に叩き込まれている。
「はああああ!」
ピシッ……
え?
剣が核に命中したのに、砕けるどころか、ほんの少しひびが入っただけだった。
未覚醒の弊害が出た!
だから言っただろ!俺に主人公補正なんてないんだよおおおおお!
俺が戸惑ったその一瞬、ウサ耳スライムは勢いよく跳び上がり、俺の頭に飛びかかってきた。
次の瞬間、それは液体のような身体で俺の頭全体を包み込み、そのまま溺れ死にさせようとしてきた。
おいおいおい、こいつ殺意高すぎないか!?
チッ、しかも核が体内で動き回っているせいで、剣で狙いをつけるのが難しい。
死ぬ死ぬ死ぬ!
これはまずい。本当にここで終わるかもしれない!
まだ酸欠で意識が飛ぶ前に、早く何とかしないと……!
「……!」
焦り始めたせいで、俺は足元に太い木の根があることをすっかり忘れていた。
その結果、俺はそのまま木の根につまずいて転んでしまった。
パタッ。
木の根につまずいた時、俺が倒れ込む角度がちょうどよかったのか、ウサ耳スライムの核が石にぶつかり、その場で真っ二つに割れた。
核を失ったウサ耳スライムの身体はゆっくりと形を失い、最後には地面の上で粘り気のある液体の塊になった。
「はぁ……はぁ……マジで寿命が縮んだ。たまたまこいつの核に当たってくれなかったら、俺は本当にここで終わっていたかもしれない……」
死ぬほど怖かった。
やっぱり【仙境】は、俺みたいな普通人が来るべき場所じゃない……
「ねえ、そこのあなた、大丈夫?」
背後から突然、女性の声が聞こえた。
その声は、どこか俺を心配しているように聞こえた。
ひっ……!
落ち着け。今はとりあえず、新人の編織者のふりをするんだ……
今の俺はフードを被っている。普通人だってことまでは、さすがにバレないはずだ。
「すみません、俺は新人なんです。さっき、うっかりウサ耳スライムに頭へまとわりつかれて、それで……えっと……」
俺の背後に立っていたのは、ポニーテールにした金髪ギャルだった。
記憶が間違っていなければ、彼女はうちのクラス一の美少女、キャロリンのはずだ。
ん?
うちのクラスの?
「え?エミールさん?あなた、まだ覚醒していないんじゃなかったの!?」
「待て、なんでキャロリンがここにいるんだ!?うちのクラスから野外授業に参加しているやつはいなかったはずだろ」
「いやいや、それはこっちの台詞よ!なんであなたもここにいるの!?」
「「……」」
う、うーん……
もともとは、とぼけて誤魔化せないかと思っていた。
けれど予想外にも、うちのクラスメイトまでなぜかここに現れてしまった。
まあ、俺自身がここにいることも、それはそれで十分意味不明なんだけど……




