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第11章 相容れぬもの

「それで……?どうしてこの村に、次から次へと難民が連れてこられるのか、説明していただけますか?失礼ですが、私たちの村は、あの者たちが肩を寄せ合うための難民キャンプではありませんよ?」


「アクィーナ、よく考えてみてよ。文句も言わず働いてくれる労働力を手に入れる絶好の機会だよ!」


「ラミリス……そんな適当な口車で、私が納得すると本気で思っているのですか?」


「チッ」


アクィーナさん、目の前にいるんだから、本人の前で舌打ちするなよ……!


俺たちにまで、今ラミリスの口から漏れた音がしっかり聞こえたぞ。


「分かったよ。大義だとか、正義感だとか、そんな話をするつもりはない。私たちが今やっていることだって、実はすごく単純なんだ。助けられる命を、全部助けているだけ。だから、吸血鬼族をここに置くのも一時的なものだよ。その後は、彼ら()()()()()で、故郷へ帰るのか、それともここに残って暮らし続けるのか、未来を決めてもらう」


「ほう?彼ら()()()()()で、ですか?」


アクィーナさんの言いたいことは、そう複雑ではない。


彼女からすれば、ここはピクシー族の村だ。


吸血鬼族がここに残りたいと思ったところで、まずは彼女の許可を得なければならない。


「ふふ、そうだよ。だって、他人の決断にあれこれ口を出しすぎるのもよくないからね~」


空気は一気に険悪になり、食堂の女将さんまで何かを察したように、しばらく食堂から逃げ出してしまった。


この二人がこのまま殴り合いを始めたとしても、俺はそこまで不思議には思わない。


「ママ、どうして吸血鬼族の人たちはここに残っちゃいけないの?」


「オーロラ、吸血鬼族は血を好む悪い人たちなの。村に残しておくのは、とても危険なことなのよ」


「でもね、今朝外で遊んでた時に、転んで怪我しちゃったの。さっき吸血鬼族のおばさんが私の傷を見つけて、治してくれたんだよ。あの人も悪い人なの?」


「……!?あなた、大丈夫なの?何か変なことをされなかった?」


「ううん。吸血鬼族のおばさんは、私の足の傷に指を置いただけ。指を離した時には、もう傷がなくなってたの。それにそれに、治してもらってる間も全然痛くなかったんだよ!すっごいの!」


オーロラは自分の足をアクィーナさんに見せながら、向日葵のような笑顔を浮かべた。


それを見て、アクィーナさんはようやく眉間を押さえ、悩ましげな表情を浮かべた。


彼女は、自分の娘を吸血鬼族の者たちとあまり関わらせたくなかったのだ。


「アクィーナ、これから言うことは、あくまで私個人の考えだよ。こういう因縁を次の世代にまで引き継がせるなんて、本当に馬鹿げてると思わない?」


「ラミリス。あなたは、あの人でなしどもが過去にしてきたことを許せと言うのですか?この村には、それが原因で家族や友人、故郷を失った者がどれほどいると思っているのです。憎しみは、そう簡単に手放せるものではありません」


「でも、憎しみを和らげることはできるでしょ?まさか、オーロラが大人になった時、武器を手にして、人狼族や吸血鬼族を皆殺しにしたいって叫ぶような子になってほしいの?お願いだから、あなたたちの世代の憎しみを次の世代にまで渡さないで。そうしなければ、この世界から争いがなくなることなんて絶対にないよ」


「あなたは一体、何の立場でそんなことを言っているのですか?たとえ私が頷いたところで、他の者たちが彼らを許すことなどありえません」


「もちろん、【群星の守護者】の一員として。そして、争いを調停する者として言ってるんだよ」


ラミリスは目の前のティーカップを手に取り、一口お茶を飲むと、そのまま話を続けた。


「私、人間たちが戦争のせいで、まともに暮らすことすらできなくなってる姿を見たことがあるんだ。ご飯を食べる時も、眠る時も、ずっと怯えてなきゃいけない。あんな姿を見るのは、本当に辛かったよ。考えてみて。もし同じことがオーロラちゃんの身に起きても、あなたは平気でいられる?」


「それと、大勢の難民を村に連れ込むことは別問題です!私たちにはもう、あの者たちを養えるだけの余分な食料はありません」


「そのことなら、とっくにどうするか考えてあるよ」


「……?」


「ふふん。それはね、私たちが村の開発を手伝うこと!そうだ、いっそのこと村を小さな国にまで発展させちゃおうよ。そうすれば、食べ物も住む場所も、きっと十分に足りるようになるから!」


その言葉を聞いたアクィーナさんは、呆れ果てて白目を剥きそうになっていた。


一方、俺たちはというと……


誰一人として、動じていなかった。


みんな心の中で、


“どうせまた、何か常識外れなことをやろうとしてるんだろうな”


と思っていたからだ。


……


待て。


俺たち、いつの間にこいつらのやり方に慣れきってしまったんだ?


「ラミリス、小さな国に発展させると言っても……私たちには、そんなことができるほどの人手がありません。それに、小さな国にまで発展すれば、間違いなく目立ちます。言いたいことは分かりますね?」


「いやいや。別に、いきなり小さな国にするってわけじゃないよ。一歩ずつ進めていくの。まずはここをちゃんとした町に発展させて、それから将来のことを考える。というかさ……本当に、ここはもう少し整備した方がいいと思わない?この前、雨が降った朝なんて、道の泥水が私のお気に入りのスカートにまで跳ねたんだよ……」


「それは、まあ……」


アクィーナさんは、ラミリスが指差した先――食堂の外へ目を向けた。


実際、この村には最低限の歩道すら整備されておらず、村人たちは土の地面の上を行き来している。


やがて彼女は、真っ直ぐに自分を見つめるラミリスの視線から思わず目を逸らし、受け答えまでしどろもどろになっていった。


「でしょ?だ~か~ら~、この件は私たちに任せてよ。どうせこの先数日は暇なんだし、ちょうど拠点を発展させる作業でもしようと思ってたところだから」


そしてラミリスは、まるで自分には関係ないと言わんばかりに、隣でスマホをいじっていたリンへ目を向けた。


「君たちも手伝うんだよ♡」


「いやああああ!そういうのって疲れるじゃん!私は部屋でのんびり寝転がって、足を伸ばしてたいの!」


もう逃げられないと悟ったリンは、すぐさま悲鳴を上げた。


「リン、間違ってるぞ。()()()だ!俺も部屋で寝転がって、足を伸ばしてたい!」


「あっ……!ダーリンの言う通り、私たち二人とも足を伸ばしてたい!」


「みんなが働いてるのに、君たち二人だけ知らん顔して休んでたら……他のみんなから軽蔑されるよ?」


ラミリスに指差されたマリーたちは、揃って苦笑いを浮かべた。


華恋、リヤ、マリー、アイリーンは慌てて首を横に振り、そんなことで俺たちを軽蔑したりしないと訴えているようだった。


でも……リリス?


そんな恨めしそうな目で俺たちを見るなよ。


怖いって!


こんなことを盾に取って脅すなんて、卑怯すぎるだろ!?


「ラミリス、お前って悪魔だろ……?」


「残念でした。小隊の中で悪魔みたいな性格をしてるのは、リリカだけだよ?現地の人たちの故郷を復興する手伝いまでしようとしてる、こんな心優しい私が悪魔なわけないでしょ。どう考えても、善良な天使ちゃんだよ」


「今自分で言ったことを、もう一度よく考え直してくれ……」


「却下で~す」


「――――――!」


突然、食堂の外から大勢の話し声が聞こえてきて、一気に騒がしくなった。


「どうやら、みんな戻ってきたみたいだね」


「はぁ……あなたたち、本当に第四軍団の指揮官が治める町を壊してきたのですか?」


「違うよ。壊したのは町じゃなくて、あいつの頭だけ」


「……」


どうやら、アクィーナさんにはラミリスの冗談が通じなかったらしい。


彼女はただ黙ってラミリスの後ろをついていき、その間も何度もため息をついていた。


そんなアクィーナさんを気にかけたオーロラは、彼女の傍まで飛んでいき、心配そうに声をかけた。


アクィーナさんは、ただ心が疲れただけだと答えたが、オーロラは意味が分からないように首を傾げていた。


その姿がとても可愛らしかった。


     ◇


「おかえり~」


「おう!ただいま!」


ラミリスは勢いよく唯さんの胸へ飛び込み、唯さんもその身体をしっかりと受け止めた。


唯さんたちが帰ってきた。


その後ろには、全身血まみれで、右肩に大きな穴まで開いたカズの姿もあった。


「唯さん、ミカエルは?」


「死んだ。命知らずの馬鹿が、あいつが口を開けた隙にその中へ飛び込んでな。それからミカエルの体内で暴れまくったんだが……まあ、結果は見ての通りだ。至近距離から撃たれた『血魔法』で、右肩に大穴を開けられた」


「悪い。あいつがずっとレイヴナの名前を呟いてるのを聞いて、ついカッとなって……」


「次からは本当にちゃんと指示を聞けよ。そんな無茶ばっかりしてたら、命がいくつあっても足りないぞ」


「はい……もう二度としません」


本当にミカエルをぶっ倒したんだ……


周囲の村人たちは、ミカエルが死んだと聞くなり、興奮した様子で次々と傍にいる者同士で抱き合い、その死を祝っていた。


彼らにとって、ミカエルも、エスギルで瘴気を纏っている連中も、すべて敵だからだ。


もちろん、今のカズもまだ敵の一人として、村人たちから警戒されている。


だが、今日に限っては、彼自身がミカエルを殺した張本人だったからだろう。


村人たちもひとまず彼を見逃すことにしたらしく、カズへ向けられる険しい視線も、少しだけ減っていた。


「それじゃあ、俺は一度家に戻る。何か緊急事態があったら、必ず指輪で知らせてくれよ。それと、もし暇だったら、お前たちは……」


「へへっ、暇にはならないよ。あなたがいないこの数日で、この小さな村を徹底的に作り変えるつもりだから。さっき、村を整備することについてはもうアクィーナに話しておいたよ」


「その先のことも……?」


「もちろん。全部ちゃんと話してあるよ。ただ、まずは村を小さな町に発展させるところから始めるけどね」


「さすが俺の嫁さん、頼りになるな。この数日は、みんなに苦労をかけるな」


どうやらこいつらは、最初からこの村を小さな国に発展させるつもりだったらしい……


そうだ……!


さっきは戦いの最中だったから、すっかり忘れていた。


「唯さん、もう行っちゃうんですか?」


「何日かしたら、また戻ってくるよ。鈴奈が言ってたんだが、フローラ……ほら、前にお前たちを治療してくれた妊婦さんが、もう数日のうちに出産するらしい。それで、俺は一度戻って出産に立ち会うつもりなんだ」


「あっ、そういうことだったんですね……!おめでとうございます、唯さん!フローラさんと鈴奈さんにも、俺たちからよろしく伝えてください」


「はは、分かった。ありがとうな。気遣ってくれて嬉しいよ」


唯さんはアクィーナさんとオーロラに軽く手を振ると、自ら開いた転移門へ入り、そのまま去っていった。


ここに残ったのは、俺たちと唯さんの妻たちだけだった。


「それじゃあ、第四軍団の指揮官を倒した記念に、今日は一日休みにしよう!どう?賛成?」


唯さんが去った途端、ラミリスが真っ先に言い出したのがこれだった。


「はいはいはい!私は両手両足を上げて大賛成!ここ数日、全然ソシャゲにログインできてなくて、もうすぐイベントが終わっちゃうの!今から周回しないと本当にヤバい……」


「アンナ、お腹空いた……」


リリカは真っ青な顔でスマホの画面を見つめながら、即座にラミリスの提案に賛成した。


一方、アンナも自分のお腹を指差し、空腹を訴えていた。


いや……


お前たち、もう完全にここへ遊びに来たみたいになってないか?


「あの……吸血鬼族の難民はどうするんですか?」


「あっ、危ない。すっかり忘れるところだった!ナセフィン、あの人たちのことは任せたよ。私、ちょっと疲れたから、先に戻って横になるね」


リリスに言われて、ラミリスはようやくそのことを思い出し、村の外に立ってこちらを見ている吸血鬼族たちへ目を向けた。


……人のことを綺麗さっぱり忘れた挙げ句、そんな軽い調子で他人に丸投げするなよ!


「休んでおいで。ここは私に任せればいい」


「ありがと。帰ったら、唯にナセフィンの大好きなマンゴーケーキを作ってもらうから」


せめてお礼のケーキくらい、自分で作れよ!?


ナセフィンが面倒事を全部引き受けてくれると、ラミリスは呆れた目を向ける俺を気にも留めず、あくびをしながらその場を離れていった。


ラミリスだけではなく、魔王リリカや他のオペレーターたちも一足先に戻っていった。


「ナセフィン、あんなに甘やかして本当に大丈夫なのか?」


「あはは……ああ見えて、のんびりしてばかりいるわけじゃないのよ。昨日の夜はリスク評価をするために、かなり遅くまで起きていたから。私と唯が眠った後もずっと頑張っていて、結局二時間も寝ていないの」


「えっ……?そう言われなかったら、本当に分からなかったな」


昨夜、三人がリスク評価をしていたことは知っていた。


けれど、まさかラミリスが二時間も寝ていなかったとは思わなかった。


「昔、ちょっとひどいことがあったの。だから彼女は、何か行動を起こす前に、少しでもリスクを減らそうといつも必死になる。でも、普段はそういうことを他の人の前では話さないから、内緒にしておいてね?」


昔、ちょっとひどいことがあった……?


まさか、前に唯さんが言っていた、数年前にあいつらが一度負けた時のことだろうか?


今の俺には、あれほど強いあいつらを脅かすようなものなんて、とても想像できない。


何だかんだ言っても、唯さんならどうにかできるんじゃないかと思ってしまう。


まあ、ナセフィンもそれ以上詳しく話すつもりはなさそうだし、俺も深く追及するのはやめておこう。


——————


「あっ……!さっきは、僕たちも一緒に連れてきてくれて、本当にありがとう。それと……すまなかった。最初は僕も妻も、ひどい態度を取ってしまったから、ちゃんと自分の口で謝りたくて……」


「君は……?」


「僕はヴィクトルだ。でも、まあ……そうだよな。君たちはあまりにも多くの人を助けてきたんだ。僕が誰なのか覚えていなくても当然だよな」


「ああ!思い出した!俺たちが最初に会った吸血鬼の家族だろ?俺はエミール。これからはそう呼んでくれればいい」


「うん、そうだよ」


先ほど、ナセフィンやミア、それに俺たちの手配で、ヴィクトルさん一家を含む吸血鬼族の難民たちは、ラミリスがあらかじめ造っておいた土の家にひとまず身を寄せることになった。


「今日はひとまず土の家で過ごしてくれ。あの人たちは、ちゃんとした家を建て始めるのは明日からにするらしい。その時には、普通の木造の家に住めるようになるかもしれない」


「雨風をしのげる場所があるだけでも、僕たちは十分感謝しているよ。ただ、その……一つ聞いてもいいかな?」


「何だ?」


「あの怪物のことを聞きたいんだ。あれは本当に……」


そのことか……


別に機密というわけでもないし、教えても問題ないだろう。


「そうだ。あれはミカエルが、第三軍団の指揮官から渡された薬を飲んだ後の姿だ」


「本当だったのか……やっぱり、第三軍団のあの女はろくなことを考えてなかったんだな。それじゃあ、ミカエル様はもう死んだんだよね?」


「ああ。でも、まさか君たち、復讐を……」


「いやいやいや!怒ってもいないし、あの方の仇を討とうとも思っていないよ。むしろ、君たちがあの方を止めてくれたことには感謝してる。ミカエル様は、僕たち吸血鬼族にはずっとよくしてくれていた。でも、第四軍団が普段何をしていたのかは……実は僕たちの耳にも入っていたんだ。だから吸血鬼族の中にも、あれは“間違っている”と思っていた者が、ほんの少しはいたんだよ」


そこまで言うと、ヴィクトルさんは自嘲するように笑った。


「実は、僕たち吸血鬼族は子孫を残すのが難しいうえに、陽の光という致命的な弱点まである。そのせいで、数は目に見えて減り続けていたんだ。種族全体が陽の光という弱点を克服できるようにするため、あの方は軍団に加わり、最高指揮官の一人としてトレイズのために働く道を選んだ」


ヴィクトルさんは過去を思い返すように目を伏せ、そのまま話を続けた。


「でも、日が経つにつれて、あの方も、第四軍団に加わった者たちも、どんどん凶暴になっていった。それに、以前よりずっと傲慢にもなった。最初の頃のミカエル様は、本当は今みたいに血に飢えた戦好きじゃなかったんだ」


「瘴気は、触れた者の負の感情を増幅させるって聞いたことがある。さっきのミカエルは全身から瘴気を撒き散らしていて、魔王リリカですら危うく気絶しかけたくらいだ。たぶん、君たちの王に目をかけられた後、瘴気に触れるようになって、ああなったんじゃないか?」


「悪いけど、一つ訂正させてくれ。僕たちの王は、最初から最後までミカエル様ただ一人だ。あの人間は、()()()()()()()()()()()()


“君たちの王”という言葉を聞いた途端、ヴィクトルさんは眉間に皺を寄せ、すぐさま俺の言葉を否定した。


ん……?


どういうことだ?


普通に考えれば、トレイズこそが彼らが忠誠を捧げる王なんじゃないのか?


俺はその辺りのことにあまり関心がなかったから、この世界を支配しているのはトレイズなのだと、ずっと思っていた。


「教えてもらってもいいか?それはどういう意味なんだ?エスギルはこの世界を支配している国で、君たちはその国に属する種族の一つにすぎない。もしかして、俺たちの認識が間違っていたのか?」


「いや、そうじゃない。この世界には昔、いくつもの国が存在していたんだ。ある日までは……」


「ある日?」


「うん。これは、亡くなった父から聞いた話だ。ある日、人間の国で突然内乱が起きた。結果、当時の人間の王はわずか数日で簒奪者に処刑され、その簒奪者がすぐに王位に就いたんだ。それから人間の国は、周囲の国々への侵略を繰り返すようになった。そして、わずか数年のうちに、この大地に生きるすべての種族を武力で支配した」


魔王リリカは以前、自分の同胞たちが遥か昔、一人の裏切り者によって滅ぼされ、彼女の祖先だけが必死に異世界へ逃げ延びたことで、辛うじて生き残ったのだと話していた。


まさか、ヴィクトルさんの言う簒奪者というのは……


「もしかして、その簒奪者って……トレイズなのか?」


「その通りだ。でも、当時のあいつは吸血鬼族の国を武力で侵略しなかった。その頃、僕たち吸血鬼族はただでさえ繁殖力の低さと陽の光のせいで、少しずつ滅びへ向かっていたんだ。ミカエル様が種族を存続させるために奔走していた時、あいつは自ら“救いの手”を差し伸べてきた。ミカエル様を第四軍団の指揮官として迎え入れ、自分のために働かせる代わりに、他の世界を侵略する中で、僕たちが陽の光を克服する方法を探してやるとね。ふっ……あれこそ、いわゆる“悪魔の誘惑”だったんだろうな」


「……ヴィクトルさん。一度、魔王リリカとこの話をしてみてくれないか?」


「あの角が生えた()()か?ここへ来てから、僕もずっと彼女のことが気になっていたんだ。昔処刑された人間の王と、身体的な特徴があまりにもよく似ているからね。赤い髪、赤い瞳、漆黒の二本角、それに極めて強大な魔法の力とか……」


「詳しいことは俺もよく知らないから、軽々しく決めつけることはできない。だからこそ、君に彼女と話してみてほしいんだ。もしかしたら……ほら、思いがけないことが分かるかもしれないだろ?」


「そうだね。分かった。妻と娘を落ち着かせたら、一度彼女に会いに行ってみる。教えてくれてありがとう」


その後、俺たちはもう少しだけ雑談を交わした。


そしてヴィクトルさんは俺に手を振ると、妻と娘の世話をするため、自分たちの土の家へ戻っていった。


一方、俺はというと……


他の皆を手伝って、新たにやってきた吸血鬼族の難民たちを落ち着かせることにした。

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