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第1章 旅立ちの時は来た

「何か忘れ物はない?」


「必要なものは全部入れたよ。というか、二人とも心配しすぎじゃないか……?俺はもう十六歳なんだから、荷物くらい自分でまとめられるって」


俺たちが唯さんたちについてエスギルへ向かうと決めた翌朝、父さんと母さんはなぜか二人揃って俺の部屋に来て、荷造りを手伝おうとしていた。


もう十六歳なのに、二人はいまだに俺を子供扱いしている。


「別に、子供扱いしているわけじゃないよ。ただ……お前たちが出発する前に、少しでも長く一緒にいたかっただけだ。だってお前は、俺たちの大事な息子だからな」


「お、おお……?そういうこと……?」


父さんが急にそんなことを言うものだから、なんだか妙に照れくさくなってしまった……


「てっきり、二人は俺を止めると思ってた」


「止めてほしかったの?それに、たとえ私たちが止めたとして、あなたはそれで諦めた?」


「それはないかな……やっぱり俺は、みんなと一緒にエスギルへ行きたいと思う。リリスもここを離れるわけだし、彼女のことが心配だから」


「ほらね」


母さんは肩をすくめ、俺の行動なんて最初から分かっていたと言わんばかりの顔をした。


はいはい~


さすが俺の母さん、ってことでいいんだろ?


「できることなら、俺も母さんも、お前たちが唯さんたちと一緒に行くのを止めたいと思っている。第一に、俺たちはまだ彼らと出会って二日しか経っていない。彼らがお前たちを危険な目に遭わせないかどうかも分からない。第二に、エスギルはあの怪物たちの本拠地だ。危険なのは間違いない。この二つだけでも、以前の俺たちなら全力でお前を止めていたはずだ」


「でも、さっきあなたのお父さんが言ったように、あなたはもう子供じゃない。私たちは、あなたがちゃんと考えたうえで、この決断を下したんだと信じているの。だから昨夜、少し話し合ったあと、あなたを応援することに決めたわ」


父さん、母さん……


二人とも……


「はぁ……今の子供は、本当に成長が早いな。少し前、俺が堕ちた者の状態から戻った時には、もうお前は一人の男の顔をしていた。それからまた何日か経っただけで、お前はさらに前へ進んでいる……今のお前は、俺たちにとって誇らしくて仕方ない、立派な男だ」


「……」


「だから思いきりやってこい、息子よ。みんなで必ず無事に帰ってくるんだぞ!異世界から来た英雄たちを、近くでしっかり見てこい。お前たちならきっと、彼らから多くのことを学べるはずだ」


父さんは鞄のファスナーを閉めると、それを俺の胸元へ差し出した。


「ふふっ、ほら。そんな今にも泣き出しそうな顔をしないの。もう時間でしょう?早く出ないと間に合わなくなるわよ?私たちは少しだけ、この部屋にいさせてちょうだい。あとでちゃんと鍵はかけておくから」


母さんはにこっと笑いながら俺の背中を軽く叩き、そろそろ行きなさいと促した。


その時、俺は気づいてしまった。


彼女の目元が、少しだけ潤んでいることに。


「うん、行ってきます!」


「「いってらっしゃい~」」


数か月前、俺は父さんと母さんに見送られながら、学校へ向かって歩き出した。


そして今、俺はまた二人に見送られながら、異世界へ向かう旅に出る。


今まで、本当にありがとう……


行ってきます。


――――――


荷物を持ってアルカディア内の集合場所へ向かうと、華恋たち雪狐小隊にいる小夜啼鳥――日向さんが、ものすごい形相で誰かを睨みつけている姿が目に入った。


……ん?


どうしてカズがここにいるんだ?


全身ずぶ濡れで、顔中に痣を作った彼は、シェラさんと魔王リリカのそばに立ち、日向さんのことなど知らないと言わんばかりに、彼女へ背を向けていた。


その結果、日向さんはさらに腹を立ててしまっている。


「シェラさん、どうしてカズがここにいるんですか?」


「ああ、こいつも私たちと一緒にエスギルへ行く。唯とナセフィンの決定だ。ただ、小夜啼鳥はあまり納得できていないようだがな」


「危なくないんですか?」


「私たちの目が届かないところに置いておくほうが危険だ。安心しろ。さっきこいつを聖水に浸けて、きっちり浄化しておいた。体内から瘴気が抜けていれば、以前のような戦闘力も攻撃性も出せない」


道理で全身びしょ濡れなわけだ。


「おい。ひと風呂浴びて、少しは頭が冷えたか?」


「……はい。だいぶ冷えました、姉御。今の俺には、もう誰かを殺したいなんて衝動はありません……」


「ほらな?瘴気を抜いたら、目つきまでずいぶん澄んだだろう」


けれどシェラさんは、そこで急に厳しい目つきに変わり、カズを一瞥してから、改めて日向さんのほうへ視線を向けた。


「ただし、今こいつが少しまともになったからといって、過去に犯した罪が帳消しになるわけじゃない。こいつが過去に下した命令も、他人に働いた暴虐も、私たちはあとで必ず清算させる。だから今は堪えてくれ、小夜啼鳥」


「ちっ……分かった……」


以前、俺は華恋から、日向さんが異世界人を強く憎んでいると聞いたことがある。


今も華恋に引き止められていなければ、とっくに武器を手に取り、カズへ突き立てていただろう。


それでも彼女はまだ理性を保っていたからこそ、シェラさんの説得に素直に耳を傾けた。


「あら、ここはずいぶん賑やかね?」


ラミリスも集合場所へやって来た。


その後ろには、リンたちの姿もある。


どうやら彼女たちは途中で合流し、そのまま一緒にここまで来たらしい。


「おはよう、みんな。昨夜はちゃんと眠れたか?」


「おはようございます、エミール!昨夜は興奮しすぎて、どうしても眠れなくて……結局、みんなでリリスの部屋に行って、おしゃべりしていたんです。今は……たぶん三、四時間くらいしか寝ていないと思います。あははは……」


そう言ってはいるものの、アイリーンはまだまだ元気いっぱいに見えた。


でも、本当に大丈夫なのか?


「心配しなくてもいいわ。疲れたら、いつでもナセフィンか唯に言いなさい。ちゃんと足を止めて、休ませてくれるから」


「すみません、気を遣わせてしまって」


「いいのよ。どうせこれからは、一緒に旅をする仲間なんだから。お互いに面倒を見るのは当然でしょ」


そう言ってから、ラミリスはカズへ視線を向け、思わず笑みをこぼした。


「というか、こいつ、まるでドブに落ちた哀れな犬みたいになってるじゃない。あはははは!」


「……」


ラミリスは先にシェラさんと魔王リリカのそばへ行き、見るも無惨な姿になったカズをからかい始めた。


カズは少し腹を立てているようだったが、自分が彼女たちには敵わないことをよく分かっているため、文句をぐっと飲み込むしかなかった。


「そういえば、唯さんやほかの皆さんは……?」


「あの人たちはもう少ししたら来るわ。唯が先にフローラへ今後の予定を伝えたいって言ってね。ほかのみんなも、彼について私たちの世界へ戻ったのよ。ふあああ……私は少しスマホで遊んでるから、あいつが来たら呼んで」


魔王リリカはあくびをしながら、ポケットからワイヤレスイヤホンを取り出した。


イヤホンを自分のスマホに接続すると、彼女はそのままスマホゲームに没頭し始めた。


どうやら、音ゲーをプレイしているらしい。


……


スマホゲームが好きな異世界の魔王なんて、俺は初めて見た。


「ラミリス、配信のほうは大丈夫なの?今回、どれくらい向こうにいるか分からないよ?」


「しばらく配信を休むってニャ民たちには伝えてあるから、そこは大丈夫でしょ。つらいのはむしろ私のほうよ!しばらくPCゲームで遊べないなんて、苦痛すぎる……」


「スマホゲームで遊べばいいだろ?リリカと一緒に遊ぶこともできるぞ」


「嫌よ。私、スマホゲームにはあまり興味が湧かないの。PCゲームで遊んだあとだと、もうそっちには手を出したくなくなるのよ」


「それは残念だな。私はよく、リリカが夜中まで唯と一緒にオンラインでゲームをしているのを見かけるが」


「……今すぐダウンロードするわ。あの二人、どのゲームをやってるの?」


待っている間、シェラさんとラミリスもそんなふうに雑談を始めた。


そうしているうちに、十五分ほどが過ぎた。


少し離れた場所に淡い青色の転移門が開いた。


「すまない、待たせたな。うちの奥さんの一人が、もう少し俺と一緒にいたがっていてな。それで少し遅れた」


「大丈夫です、唯さん。俺たちも今来たばかりです。それで、今から出発するんですか?」


「その前に、まずはこの指輪をつけてくれ」


唯さんは小さな転移門から、小ぶりな箱を取り出した。


その中には、同じ形をした銅色の指輪がいくつも収められていた。


「これは『収納空間』が付与された指輪だ。指にはめたら、リリスさんの指示に従って起動し、自分たちの荷物を入れておけ。そうすれば、この旅も少しは楽になるはずだ」


そんな便利な道具を、量産することまでできるのか!?


唯さん、またいきなりとんでもないものを出してきたな……


「もちろん、戻ってきたあとはその指輪を返してもらう。これは【群星の守護者】の臨時派遣要員が使う装備で、俺は組織で余っていた指輪をいくつか持ってきただけだからな」


そんな便利な道具をもらえるのかと思ったのに。


まあ、仕方ないか。


使えるうちに、異世界道具の便利さを思いきり体験しておこう。


その後、俺たちはリリスの指導を受けながら、荷物をシュッと『収納空間』の中へしまっていった。


本当に楽になった!


「準備はできたか?それじゃあ、俺たちは……」


唯さんが転移門を開こうとしたその時、ユリが数名の関係者を連れて、出発直前のところでこちらへ駆け込んできた。


「はぁ……はぁ……間に合った……!」


「ん?ユリさん、何か用ですか?」


「違うの。静が華恋に渡したいものがあるんだって」


ユリのそばにいた静さんは、鞄の中から小さなポーチを取り出し、華恋に差し出した。


「この中には、いろいろな応急医療用品が入っているわ。万が一に備えて、持っていきなさい」


「ママ……うん。ありがとう、ママ!」


華恋と静さんは、ちゃんと仲直りできていたんだな。


「私たちは、あなたたちに改めてお礼を言いたくて来ました。ありがとうございます、異世界の英雄の皆さん!」


ユリを先頭にした一行は、唯さんたちへ敬礼し、胸の内にある感謝を伝えた。


それを見た唯さんは照れくさそうに頭をかき、笑みを浮かべた。


「その気持ちは、ちゃんと受け取ったよ。これは俺たちの仕事だから、あまり気にしなくていい」


「はい。もし今後、私たちに手伝えることがあれば、遠慮なく言ってください。必ず何とかして、お力になります」


「あ……そういえば、一つだけあるな。すべてが終わったら、ユリさんと静さんは一度、俺たちの世界に来てもらえないか?うちの研究員の鈴奈が、あなたたちと科学や技術面で交流したいと言っているんだ。それをきっかけに、もっとすごい発明を生み出せたらいいなって」


「私も異世界に行けるんですか!?行きます、もちろん大丈夫です!」


もともと異世界に憧れていたユリは、今にも飛び上がりそうなほど喜んでいた。


「でも……私はただの一般市民ですよ?科学研究に関する知識なんてありませんし……」


「大丈夫だ。遊びに来るだけでも構わない。俺の家の近くには楽しい場所がたくさんあるし、すぐそばには綺麗な砂浜もある。俺の領地で一番有名な観光地なんだ」


「やった!」


唯さんがそう言ってくれたことで、少し落ち込んでいたユリは、ぱっと嬉しそうな顔になった。


「それじゃあ、俺たちはそろそろ行く。じゃあな。できるだけ早くこの厄介ごとを片づけて、この子たちを無事に連れて帰るよ。皆さんはひとまず、エスギルの兵士たちと一緒に都市の復興作業を進めておいてください。彼ら全員には、すでにこちらで保険をかけてあります。あなたたちを襲うようなことはできませんから、安心してください」


「分かりました。皆さんの旅路に幸運を。武運長久を祈っています!」


「ありがとう、静さん。行こう、みんな。転移門をくぐる時、多少のめまいやふらつきを感じるかもしれないが、それは正常な反応だ。力を抜いていれば大丈夫だ」


かつて地球を滅ぼそうとした異世界の兵士たちと協力して都市を再建しなければならないことに、多くの人が強い抵抗と嫌悪感を抱いていた。


それでも、ユリと静さんの説明を受け、人々はようやく胸の内にある憎しみと怒りを一時的に抑え、彼らと共に俺たちの(居場所)を再建することを決めた。


唯さんは照れくさそうに静さんへ礼を言うと、俺たち全員を連れて転移門の中へ入っていった。


ふぅ……


行ってくるよ、父さん、母さん。


俺たちが凱旋する日を、待っていてくれ。


——————


転移門をくぐった直後は、たしかに少し頭がくらくらしたけれど、それもすぐに落ち着いた。


そして再び目を開けた時、初めて異世界へ足を踏み入れた俺たちを待っていたのは、思わず息を呑むような景色だった。


見たこともない花や草木、さまざまな動物たち、そしてどこまでも広がる大草原が、目の前いっぱいに広がっていた。


少し先には、巨大な岩山が連なってそびえていて、その光景はまさに圧巻の一言だった。


「せっかく異世界へ来られる機会なんて、そう多くないからな。景色を撮りたいなら、スマホを出して写真を撮ってもいいぞ?」


唯さんは、すでに観光客モードに入っているクロエさん、イヴ、姫川さんを指差し、俺たちも彼女たちみたいに記念写真を撮っていいと教えてくれた。


本当にスマホを持って、あちこち撮りまくっている……


「華恋、千夏、陽葵。せっかくだから、こっちに来て一緒に写真を撮ろう!そうだ、あとでダーリンも一緒に入ってね!」


「私たち、観光に来たわけじゃないんだけど?」


口ではそう言いながらも、星野はリンの後ろへ回り、雪狐小隊のほかの二人と一緒に並んだ。


そして全員が「イエーイ」とピースサインを作ったところで……


カシャ――


「ここ、すごく壮大だね……」


「異世界はだいたいこんなものよ。まだ開発が進んでいない世界も多いから、私たちのよく知る地球みたいに、森林が少ないわけじゃないの」


「へえ……?そうなんだ。なるほど~」


その後、日向は興味津々といった様子でラミリスの説明に耳を傾け、その間もこの世界に関する質問をいくつも投げかけていた。


「……」


「どうしたんだ、リヤ?」


「おかしい。私の未来視が発動できなくなってる」


ん?


未来視が発動できない?


「え?未来視って言った!?あなたも未来が見えるの!?」


そばで記念写真を撮っていたイヴは、「未来視」という言葉を聞いた瞬間、写真を撮る手まで止めてしまった。


そしてすぐにこちらへ駆け寄り、リヤに未来視について尋ね始めた。


ん?


“も”?


「ええ、その通りです。地球にいた時、私は記憶の中から、剣で戦うための知識を学びました。それに、未来のさまざまな光景を見ることもできました」


「おおおおっ!!!それって、すごい偶然じゃない!?私もその能力を持っているのよ!その未来視の本当の名前は『世界(World)記憶(Memories)』。世界の過去、現在、未来を見ることができる特殊な能力なの。この能力は、一つの世界につき一人しか持てないのよ?あなたも私と同じ、選ばれた一人ってことね」


世界に一人しか持てない能力だったのか?


しかもイヴまで、リヤと同じ能力を持っているなんて!


そんな偶然あるのか?


「あなたが今『世界記憶』を使えないのは、ここがエスギルだからよ。外の世界から来たあなたには、この世界の過去や未来を見ることはできないの。それに、この世界にも『世界記憶』を持つ人がいるはずよ」


「なる……ほど……」


リヤはまだ驚きから抜け出せていなかった。


彼女は右手で口元を押さえたまま、まるで情報の処理が追いついていないかのように、その場に呆然と立ち尽くしていた。


「みんな、私とナセフィンから報告したいことがあるわ」


「いい知らせか?それとも悪い知らせか?」


「悪い知らせよ。しかも二つある」


ラミリスとナセフィンは少し心配そうな表情で唯さんのもとへ歩み寄り、ラミリスは彼に向かって二本の指を立てた。


「まず、この世界のシステム内に、私の『解析』でも読み取れない謎の【テーマ】が存在しているわ」


「瘴気か」


「そう。以前、アトラ大陸が破滅の神に滅ぼされかけた時も、瘴気が私の『解析』を妨げていた。だから今回も、瘴気が原因でこの世界のシステムを解析できないのだと考えているわ」


「分かった。なら、これから敵と遭遇した時は、さらに慎重に動く必要があるな」


ラミリスと唯さんが視線を交わしたあと、今度はナセフィンが報告する番になった。


「私の『探知魔法』で、前方に小さな村を発見しました。その村が、敵性個体の襲撃を受けています」


「つまり、今から人助けに向かう必要があるってことだな?」


「ですが問題は……ここが敵の本拠地だということです。その村の住民たちも全員、私たちの敵である可能性があります。ですから……」


確かに。


ナセフィンの懸念は正しい……


ここはエスギルなのだ。


俺たちは、彼らを助けたあとで、すぐに襲われないという保証をどこにも持っていない。


「リリスさん、ここはあなたが一番詳しいはずです。あなたの考えを聞かせてもらえますか?」


「……はい。十数年前、私がまだここにいた頃の記憶では、この世界にまともな人間はほとんどいませんでした。誰もが好戦的でしたから、あの小さな村の住民たちも、おそらくそういう人たちである可能性が高いと思います」


平和を愛する人間が希少生物扱いなのか!?


この世界、いったいどうなってるんだ……


「……」


「何だ?お前も何か言いたいことがあるのか?」


「俺があんたたちに何かを頼める立場じゃねぇのは分かってる。けど……それでも、あの村の連中を助けてやってほしい……」


「理由を?」


シェラさんは、不安そうに落ち着かない様子を見せていたカズに声をかけた。


どうやら、彼が何か言いたげにしていることに気づいたらしい。


「俺は昔、あのピクシーたちの村に行ったことがある。あそこにいるのは、善良な連中ばかりだ。それは俺が保証する。本当に嘘はついてねぇ。だから頼む、あいつらを助けてやってくれ。あんたたちが動きたくないなら、俺一人でも助けに行く」


おや?


まさかカズの口から、“誰かを助けてほしい”なんて言葉が出てくるとは思わなかった。


てっきり、このまま見殺しにするつもりなのかと思っていた。


「ナセフィン、こいつは嘘をついているか?」


「『真偽判別』。いいえ、彼の言っていることはすべて本当です」


「覚えておけ、カズ。もしあそこにいる誰かが一人でも俺たちに攻撃を仕掛けてきたら、俺たちは一切手加減せず、即座に反撃する。分かったな?これは自衛だ。あとになって、その責任を俺たちに押しつけようなんて考えるなよ」


唯さんはカズをじっと見据えたまま手を上げ、指先を彼の鼻先へ突きつけた。


そして、背筋が冷たくなるほど低い声でそう警告した。


「あいつらはそんなことしねぇ……絶対にしねぇ……」


カズは小さく首を横に振りながら、唯さんに何度もそう訴えた。


……


信じられない。


エスギルにも、本当に善人なんているのか……?


どうして敵であるはずのカズが、こんなことを言うんだ?


「行こう。まずは距離を保ったまま、村の状況を確認する。敵性目標を確認次第、すぐに行動に移る」


簡潔に命令を下すと、唯さんは俺たちを連れ、炎ともうもうと立ち上る煙に包まれた村へ慎重に近づいていった。

【セレイア – プロフィール更新】


セレイア


紡がれた物語 - 長髪姫(Rapunzel)


編織者スキル

——————

『囚われの檻』

『荊棘魔法』

『体力剥奪』


追加スキル - 『世界記憶(World Memories)』*New!


【武装化】発動条件 - 自分の本心と向き合う


——————————


この巻から、物語は本格的に次の段階へと進んでいきます。


これからは、『原初編年史』シリーズの世界観に関わる重要な手がかりが、少しずつ明かされていきます。


そして物語も、外側から迫る災厄や戦いだけではなく、人間性、信念、選択、そして代償といったものへ、さらに深く踏み込んでいくことになります。


雰囲気はこれまでの巻よりも重くなり、より残酷な真実にも触れていきます。


けれど、だからこそ、絶望の中でもなお前へ進むことを選ぶ登場人物たちの姿が、より大きな意味を持ってくるはずです。


もちろん、見どころとなる展開もさらに増えていきます。


どうか引き続き、これからの物語にもご期待いただければ嬉しいです。


改めまして、ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。


YeetedSushiです。


これからも、この異世界の物語を真剣に書き続け、読者の皆さまの心に余韻を残せる作品にしていけるよう、精一杯頑張っていきます。


今後の物語も、どうぞよろしくお願いいたします。

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