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01-始まりの詩章 第6章 それでも俺は、君と肩を並べて

「エミール、本当に平気なのか?今日、本当に学校へ行くつもりか?もう少し休んでもいいんだぞ?」


リヤの家でもう一晩過ごした後、俺はエマおばさんに、自分の家へ戻りたいこと、そして翌日には学校へ行く準備をしたいことを伝えた。


その時、俺は偶然階段の前でリヤに会ったので、彼女たち一家が俺を受け入れてくれたことに礼を言った。


しかし、彼女は相変わらず、ただ冷たく「そう」と一言返しただけだった。


あはははは……


やっぱり彼女は彼女だな……


登校する一時間前、クレモンおじさんが車で俺を家まで送ってくれた。


彼は帰る前、やはり心配そうにもう一度俺へ問いかけてきた。まるで、俺がもう心の準備を済ませているのかを確かめるように。


「うん。俺がこれ以上泣いたところで、何かが変わるわけじゃないし、生活はこれからも続いていくんだ。俺は大丈夫だよ。ありがとう、クレモンおじさん。俺のために、いろいろしてくれて本当にありがとう」


「そうか……気づかないうちに、エミールももう大きくなっていたんだな。その目を見る限り、もしかしたら本当に、もう俺たちが心配しすぎる必要はないのかもしれない。これから、お前はただ今まで通りの日常を過ごせばいい。俺が【仙境】に入って、お前の両親を探してくる。何か情報があれば、真っ先にお前に伝える。それとこれだ。お守りだと思って、身につけておけ」


「これは……」


「お前の父さんの探索許可証だ。探索委員会の会長と相談した結果、この許可証はお前に渡すことにした」


……


「ありがとう、クレモンおじさん。本当に、いろいろありがとう」


「はっ、堅苦しい礼なんていらない。俺たちの仲だろ?さて、俺はそろそろ失礼する。弁護士事務所に行く用事があるからな。それじゃ、先に行くぞ。あとで登校する時は、ちゃんと気をつけろよ!」


「うん……またね」


ふぅ……


あと三十分で遅刻だ。そろそろ家を出ないとまずい。


パンパン!


「元気を出せ、エミール!」


——————


……?


え?


なんだか、学校の中が妙に静かだ。


今日は絶対、誰かが父さんと母さんのことを面白半分に聞きに来ると思っていた。


けれど意外なことに、俺が校門をくぐったその瞬間から、周囲でその話をしている人は誰もいなかった。


クラスメイトたちの俺に対する態度も、普段とほとんど変わらず、いつものように普通に挨拶してくるだけだった。


うーん……


でも、これはこれでかなり助かるな。


父さんと母さんのことを聞かれた時、冷静でいられる自信なんて、俺にはなかったから……


     ◇


「うわ……エミール兄弟」


「なんだよ?」


「校庭のほう見てみろよ。あそこでテニスしてる先輩。えへへへ、俺の目、どのボールを見ればいいのかわからなくなってきたぜ……」


一緒に屋上で昼食を食べていたコリンが、今にも目玉が飛び出しそうな顔で校庭の方を見つめ、しかも顔にはいやらしい笑みまで浮かべていた。


コリンも、相変わらずいつも通りだな……


「お前、そのままだと女の子に好かれないぞ?というか、何度言えばわかるんだよ。自分の同級生や先輩を、そんなエロい目で見るなって!」


「痛いいいいい!」


罪ある者には、手刀による裁きを下さねばならない。


「お前、本当に少しも手加減せずにそのまま叩き下ろしたな!?もし俺がバカになったらどうするんだよ?責任取ってくれるのか?」


「それでお前が、女の子を飢えた獣みたいな目で見るのをやめられるなら、バカになるのも悪くないかもしれないぞ」


「はぁ……どうやら本当にいつも通りみたいだな。これで安心したよ」


もしかして、こいつは俺を元気づけるために、わざとあんな下ネタを言ってくれたのか?


いや、待て。


相手はコリンだぞ!


もしかすると、ただ本能に従っただけかもしれない……


「失踪したとは言っても、二人がすでに不測の事態に遭ったと直接示す証拠はないんだろ?死亡が確認されていない以上、まだ見つけられる可能性はきっと残っているはずだ。【仙境】の中にも、地上と同じように木や川なんかがあるらしいしな。だから、たとえ十分な補給を持っていなかったとしても、きっと何とかなるはずだろ」


「この親不孝者め。お前、さっき絶対に【仙境】で両親がサバイバルしている光景を想像してただろ……?まったく呆れるぜ。まあ、お前がまだそうやってツッコめるなら、俺も安心だけどな。それと、今日の学校がこんなに平穏なのは、ちゃんと【荊棘の女王】に感謝しておけよ?」


「ん?それがリヤと何の関係があるんだ?」


「昨日、彼女がレイちゃんと話していた時、たぶん周りの生徒たちにもわざと聞こえるように言っていたんだろうな。簡単に言えば、お前の前でその話題を出すなって、遠回しに警告したんだよ。だから今日の学校は、お前が見た通りこんなに平穏だったってわけだ。きっと焼きそばパンの恩返しだな?」


こいつ、絶対に【鶴の恩返し】の名前ネタで遊んでいるだろ?


「そういうことだったのか……」


ちゃんとリヤにお礼を言わないとな。


「わかった。放課後、彼女に礼を言いに行くよ。教えてくれてありがとう」


「ついでに仲良くなっておけよ。もしかしたら次に俺が彼女と会う時には、義姉さんって呼ぶことになるかもしれないしな?あの子、絶対お前のこと意識してるって」


コリンは肘で俺をつつくと、続けて親指を立て、勝ちを確信したような腹立つ顔でそう言った。


はぁ、こいつは本当に……


「考えすぎだ。たとえ相手が俺じゃなくても、こんなことがあれば、彼女はきっと相手に手を貸していたはずだ」


「チッ、物語の主人公ってのはいいよな。そんな腹立つことを言っても、余裕たっぷりって顔していられるんだから……」


誰が物語の主人公だよ?


もし主人公補正なんてものがあるなら、俺の人生はもっと順風満帆になっているはずだろ?


——————


結局、今日もコリンの言った通り、何事もなく静かに終わった。


結局、今日もコリンの言った通り、平穏に終わった。


「じゃあ俺はこっちの道から帰るわ。俺の義姉さんにちゃんと礼を言っとけよ。じゃーな」


「うるさいな。義姉さん義姉さんって呼ぶなよ。本人に聞かれたら気まずいだろ……じゃあな」


分かれ道で、コリンは俺に向かってあっかんべーをすると、そのまま別の路地へ入っていった。


この時間なら、リヤはたしかコンビニでお菓子を買っているはずだ……


先にそっちを見に行ってみよう。


     ◇


やっぱり俺の予想通り、この時間のリヤはコンビニにいた。


ただ、いつもと違って、今の彼女はコンビニの入口に立ったまま、わずかに俯き、手に持った何かをじっと見つめていた。


「よう、リヤ……」


「……?」


俺の声を聞いて、無表情のリヤはようやくゆっくりと顔を上げた。


俺を見た瞬間、彼女は不思議そうにわずかに目を見開いた。


けれど、その動揺はほんの一瞬だけだった。


すぐに、彼女はまたいつもの冷淡な表情を取り戻した。


「今日、学校で父さんと母さんのことを誰も話題にしなかったのは、お前のおかげなんだろ?本当にありがとう……ん?これは……?」


「私の探索許可証」


リヤの手のひらには、一枚のカードが乗っていた。


そのカードは、俺のポケットに入っている探索許可証とまったく同じものだった。


「え!?いつ手に入れたんだ?」


「さっき放課後、探索委員会まで行って許可証を申請してきた。この後、私たちのクラスは【仙境】へ探索に入る野外授業があるから」


リヤは、編織者を専門的に育成するエリートクラスの生徒だ。


最近は、そのエリートクラスの生徒たちが野外授業を行う時期でもあるらしい。


「……すごいな。これって、編織者の試験に合格しないと手に入らないものなんだろ?たしか、編織者の試験ってかなり面倒だったはずだけど……」


「ふん、試験なんてその程度の難易度だったわ……私にとっては、朝飯前よ」


「【仙境】に探索へ行くつもりなのか?危なくないのか……?なんなら、俺も一緒に行こうか……」


何しろ、あの件が起きたばかりだ。


リヤも探索許可証を手に入れたと聞いて、俺はどうしても彼女のことが心配になってしまった。


「私は普通の編織者みたいに弱くないわ。それに、あなたはそもそも編織者じゃないでしょう?どうやって私と一緒に【仙境】へ探索に入るつもりなの?」


「……」


「まだ、私と一緒にチームを組んで【仙境】を探索するなんて、くだらない夢を見ているの?もう一度言うわ。編織者になるのは諦めなさい。あなたは結局、私の隣に立つことも、私と肩を並べて戦うこともできないの。失礼するわ」


いったい、どの一言から彼女を怒らせてしまったんだろう?


俺にはまったくわからなかった……


彼女はそう言い終えると、振り返ることもなくそのまま立ち去り、俺だけが呆然とその場に取り残された。


……


きっと、こんなにも無能なくせに、それでも編織者になりたいなんて夢を見ている俺に、彼女は不快感を覚えたのだろう……

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